不当表示等が認定された場合の措置と手続
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1 はじめに
事業者が景品表示法第5条に定める優良誤認表示または有利誤認表示を行っていた場合の処分として、当該広告の表示の差止等を命じて公表する「措置命令」と不当表示を行っていたものの売上等に応じて課徴金の納付を命じる「課徴金納付命令」があります。
これらの処分がなされることは、事業者や当該商品の信用を著しく低下させ、また金銭面でも大きな損失となります。本稿では、これらの処分について具体的に解説いたします。
2 措置命令(景表法第7条)
(1) 措置命令とは
優良誤認または有利誤認表示における措置命令とは、事業者が優良誤認または有利誤認表示を行っている場合に、①当該表示の差止、②当該表示が再び行われることを防止するために必要な措置、③これらの実施に関連する公示、④その他必要な事項を命じることができるものです。
②については、「今後同種の取引に関し本件の表示と同様の表示が行われることを防止するために必要な措置を講じ、これを自社の役員および従業員に周知徹底しなければならない。」というような内容のものが命じられ、実際にどのような措置を講じたのかを消費者長官に報告しなければなりません。
③については、優良誤認または有利誤認表示を行っていたことについて、一般消費者に公示し、誤認の解消に努めなければならないという趣旨であり、通常は公示方法として日刊全国紙2紙での社告が命じられることが多くあります。たとえ、広告等が新聞等による他社媒体で行われておらず、自社ホームページ上のみでのものであったとしても、③については全国紙広告が求められます。一般消費者への広く知らせて誤認を解消する必要があるからです。そして、当然当該広告費用は自社で負担する必要があります。
なお、措置命令は優良誤認または有利誤認表示を事業者がすでに取りやめている場合(①を実施している場合)でも行うことができます。その理由は、すでにそのような広告等が取りやめられていても、一度当該広告等で消費者に認識が広まった誤認状況が解消されているとは限らないからです。
従って、優良誤認または有利誤認表示を行っている場合において、消費者庁からの指摘を受ける前に当該広告等を取りやめればよいとの認識は誤ったものであり、そのような場合でも必要に応じて措置命令(公表など)は実施されることに注意が必要です。
(2) 措置命令に対する不服申立て
措置命令に対する不服申立ては、行政不服審査法に基づく消費者長官への審査請求または行政事件訴訟法第3条2項に基づく処分取消請求訴訟による必要があります。
しかし、現時点で措置命令について不服申立てがなされた事例で事業者側の申立が認められた事例は公表されていません。
(3) 措置命令に従わなかった場合の罰則
刑事罰の対象となり、措置命令に従わない者には、2年以下の懲役または300万円以下の罰金が科され、法人の事業者には3億円以下の罰金が科されます(景表法36条及び38条)。
3 課徴金命令(景表法8条)
(1) 対象行為
課徴金命令の対象となる行為は優良誤認または有利誤認表示に限定されています。従って、事業者が公正競争規約違反の事実があったとしても、当該表記に基づいて課徴金の納付が命じられることはありません。
(2) 課徴金額
課徴金額は、課徴金対象期間における対象商品・役務の売上額の3%として算定されます。
課徴金対象期間とは、原則は不当表示開始日から不当表示終了日ですが、
不当表示終了日に商品・役務の販売をやめていない場合は、不当表示終了日から
・6ヶ月経過日
・一般消費者の誤認のおそれの解消措置をとった日(公示日など)
のいずれか早い日において最終の取引を行った日までが対象期間となります。
ただし、最長でも3年間となります。
(3) 相当の注意を怠った者でないと認められる場合
事業者が課徴金対象行為をした期間を通じて、自ら行った表示が優良誤認または有利誤認表示であることを知らず、かつ、知らないことについて「相当の注意を怠った者ではない」と認められる場合は課徴金の納付は命じられません。
ただし、相当の注意を怠った者ではないといえるためには、信頼できる調査機関に広告の基となる調査を依頼したが、その調査結果に誤りがあった場合など限定された場合に限られており、この要件はハードルが高いと考えるべきです。
(4) 規模基準
(2)により算定された課徴金額が150万円未満である場合(売上金額が5000万円未満の場合)は課徴金の納付は命じられません。
(5) 除斥期間
違反行為をやめてから5年を経過した場合は課徴金は賦課されません。
(6) 自主申告による課徴金の減額
事業者が、消費者庁等の調査開始前に優良誤認または有利誤認表示を行っていることを消費者庁長官に報告したときは、課徴金額が50%減額されます(景表法9条)。
あくまでも調査開始前に報告することがあることに注意が必要です。
(7) 返金措置による課徴金額の減額
事業者は、優良誤認または有利誤認表示を行っていた場合に、購入者に対し返金が行われた場合(購入額の3%以上の返金に限る)は、その返金額を課徴金額から減額することができます(景表法10条)。
ただし、当該返金は消費者庁の認定に基づく計画による必要があり、当該返金について消費者庁に報告することが必要です。この認定外にて返金が行われても課徴金からの減額はされませんので注意が必要です。
4 グロース法律の広告審査
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