株主総会決議の取消し、無効・不存在について

1 株主総会決議の瑕疵

株主総会の決議の内容が法令や定款に違反する場合、株主総会の手続きや決議の方法が法令や定款に違反したり著しく不公正である場合、そもそも株主総会が開催されていないにもかかわらず株主総会が開催された外観のみがある場合など、株主総会の決議に瑕疵があるときについて、会社法は当該決議の取扱いについて3種類の制度が設けています。
  
株式会社の最高意思決定機関である株主総会の決議に瑕疵がある場合は、基本的に当該決議は無効となりますが、株式会社の活動には多くの利害関係者が関わっており、一度行われた株主総会決議について軽微な瑕疵までいつまでも無効を主張できるとなると、安心して取引や企業活動等を行うことができません。
  
そこで、手続きや決議方法の瑕疵など比較的瑕疵が軽微と考えられる類型については、無効を主張できる期間を限定し、また、訴訟で無効と確定されるまでは当該決議について有効に存在するとされているものがあります(株主総会等の決議取消しの訴え)。一方で瑕疵が軽微でないものについてはいつでも誰でも(利害関係の持つ者であれば)無効を主張することができます。
本稿では株主総会決議に瑕疵がある場合の3種類の制度について解説いたします。

2 株主総会等の決議取消しの訴え(会社法第831条)

株主総会の決議に以下①から③に定める取消事由がある場合、株主、取締役、執行役、監査役、清算人などは当該決議の日から3ヶ月以内に株主総会等の決議取消しの訴えを起こすことができます。

  ①招集手続又は決議の方法が法令もしくは定款に違反し、又は著しく不公正なとき(会社法831条1項1号)

例:
・株主の一部に招集通知が送付されなかったとき
・招集通知の発出と総会開催日の間の日数が不足するとき
・定款記載の開催地以外で総会を開催した場合
・定足数を満たさない総会決議
・総会における取締役の説明義務違反
・不公正な議事運営など

  ②決議の内容が定款に違反するとき(同条1項2号)

  

  ③特別利害関係を有する者が議決権を行使したことにより著しく不当な決議がなされたとき(同条1項3号)

例:
・株主兼取締役の議決権行使により当該取締役の報酬や退職慰労金などが著しく不当に高額に決議されたとき

  
当該決議取消しの訴えにより、決議無効が確定されるまでは当該決議は一応有効なものとされます。また、提訴期間である3ヶ月を経過すると決議取消しの訴えを提起できなくなり、これは当該取消事由について二度と争えなくなるということを意味します。これにより、当該決議に関する法的安定性を確保するという趣旨です。
  
株主総会等の決議取消しの訴えの判決の効力は、訴訟当事者以外の第三者にも及び(「対世効」といいます。)、また、決議が取消された場合は、当該決議は遡って無効となります。
  
なお、株主総会等の招集の手続き又は決議の方法が法令又は定款に違反するときに、違反事実が重大でなくかつ決議に影響を及ぼさない場合、裁判所は決議取消しの訴えを棄却することが認められています(同条2項)。

3 株主総会等の決議無効確認の訴え(会社法第830条2項)

決議の内容が法令に違反する場合には、当該決議は無効です。この場合、当該決議は初めから無効であり(上記取消事由と異なります。)、訴訟によらなくても無効であることを主張することができます。
  
この場合の訴訟の類型として決議無効確認の訴えが定められており、決議無効を確認する訴えの利益が認められる者であれば、誰でもいつでも訴えを提起することができます。
  
例えば、欠格事由に該当する取締役について選任を行った場合や、株主平等原則に反する配当決議、剰余金の違法配当などが無効確認の訴えの対象となります。

4 株主総会等の決議不存在の訴え(会社法第830条第1項)

株主総会等の決議が不存在とされるのは、議事録上は株主総会開催の記録があっても実際は総会が開催されていない場合や、株主総会の手続きの瑕疵が著しくもはや株主総会が開催されたとはいえない場合です。
  
実際に開催されていない場合の他、一部の株主が勝手に集合して株主総会と称している場合や大量の招集通知漏れがあった場合などが典型例とされています。
  
この場合も決議無効確認の訴えと同様に、当該決議は初めから無効であり、訴訟によることなく無効であることを主張することができますが、決議不存在の訴えの利益が認められる者であれば、いつでも誰でも訴えを提起することができます。

5 株主総会を適法に実施する重要性

上記のように決議取消しの訴えが認められることにより、遡って決議が無効になったり、決議無効確認の訴えや決議不存在の訴えにより決議が無効であることが確認されると会社を継続して運営するにあたり大きな影響を及ぼします。
  
特に中小企業においては、株主総会が形骸化し、知らぬうちに株主総会について不存在な状態であったり、取消し事由や無効の訴えの対象となる状態を作りだしていることもあります。
  
会社の規模にかかわらず、株主総会を適法に実施することは会社を将来にわたり継続するにあたり重要ですので、株主総会の開催にあたってはぜひ当事務所にご相談ください。

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徳田 聖也

徳田 聖也

京都府出身・立命館大学法科大学院修了。弁護士登録以来、相続、労務、倒産処理、企業間交渉など個人・企業に関する幅広い案件を経験。「真の解決」のためには、困難な事案であっても「法的には無理です。」とあきらめてしまうのではなく、何か方法はないか最後まで尽力する姿勢を貫く。

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