総会検査役の役割・機能について

先般(本稿執筆時点は2021.12.7)、神戸地裁において、関西スーパーマーケットとエイチ・ツー・オーリテイリング(H2O)傘下の食品スーパー2社との経営統合の手続きを差し止める仮処分決定が下されました。

関西スーパーマーケットの開催した株主総会で裁判所から選任されていた「総会検査役」の調査報告書が、裁判所の決定内容に大きく影響しています。

本稿では、「総会検査役」について、その役割・機能等を概説致します。

 

1 総会検査役とは

総会検査役は、公正な総会の運営を担保するために、裁判所によって選任される者で、会社法3061項は、次のように定めています。

306
株式会社又は総株主(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株主を除く。)の議決権の100分の1(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を有する株主は、株主総会に係る招集の手続及び決議の方法を調査させるため、当該株主総会に先立ち、裁判所に対し、検査役の選任の申立てをすることができる。

会社も選任の申し立てを行うことが出来ますが、少数株主権としても認められている制度です(なお、公開会社については6ヶ月前の保有要件があります)。

このような総会検査役の選任を申し立てる場面は、委任状の争奪戦が激しく、決議の結果が僅差になることが予想される総会などで、まさに、冒頭の件でも、結果が僅差の事例でした。

こうした場面において総会検査役を選任することで、違法または不当な手続が行われることを防ぎ、後日の紛争を未然に防止することが期待できます。

また、後日決議結果等につき紛争が生じた場合には、総会検査役による調査報告書によって、客観性ある判断が可能ともなります。

上記の件では、会社と株主双方から総会検査役の選任の申し立てが行われ、事件併合のうえ、総会検査役が選任されています。

 

2 総会検査役の主な役割

総会検査役は、「株主総会に係る招集の手続及び決議の方法を調査」することが役割とされています。より具体的には、「招集の手続」としては、招集決定にかかる取締役会決議の内容や状況、招集通知やその添付書類の記載内容等、「決議方法」については、委任状や議決権行使書の内容および対象株式数、議事運営の状況や行使された議決権の内容およびその計算などが調査事項となります。

また、総会検査役は、会社法3065項の規定により、必要な調査を終えた後、その結果を記載または記録した書面または電磁的記録を裁判所に提出して報告しなければならないとされています。この調査報告書は、会社にその写しが提供されるとともに、少数株主権の行使として選任がなされている場合には、その株主に対しても、写しが提供されなければならないとされています。

冒頭の案件では、仮処分決定の本文が本稿執筆時点で明らかではありませんが、議案に賛成とされていた株主たる会社の議決権行使書や、当日代理で出席した役員の投票行動ややりとりなどは、総会検査役の調査報告書によって明らかにされ、裁判所の判断において重要な証拠になったと考えられます。

 

3 最後に

総会検査役の選任自体は、従前よりこうした事例で行われ来ましたが、総会検査役の役割については、総会の現場における役割・機能も含めて、改めて認識されるようになったと言えます。

 

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谷川安德

谷川安德

大阪府出身。立命館大学大学院法学研究科博士前期課程(民事法専攻)修了。契約審査、労務管理、各種取引の法的リスクの審査等予防法務としての企業法務を中心に業務を行う。分野としては、使用者側の労使案件や、ディベロッパー・工務店側の建築事件、下請取引、事業再生・M&A案件等を多く取り扱う。明確な理由をもって経営者の背中を押すアドバイスを行うことを心掛けるとともに、紛争解決にあたっては、感情的な面も含めた紛争の根源を共有すること、そこにたどり着く過程の努力を惜しまないことをモットーとする。
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