業務委託契約において注意すべき下請法 ~その1 下請法とは何か、下請法違反で契約はどうなる?

下請法とは

下請法は、正確には、「下請代金支払遅延等防止法」のことを言います。

この法律の趣旨は、親事業者から下請事業者への支払い遅延や買いたたきなど、優越的地位の濫用に該当する行為を規制することにあります。

もともと、このような優越的地位の濫用に該当する行為は、独占禁止法によって規制されていますが、各案件毎において取引上優越した地位を利用したものであるかどうかの認定とその解決には、相応の時間がかかるため、取引上の弱者ともいえる下請事業者の利益を迅速かつ確実に保護するため、独占禁止法の補完的な法律として制定されたものです。

 

下請法違反は取引を無効にする???

ここでよく誤解されることがあります。

ご相談事例で、例えば、下請業者の方から、親事業者が下請法に違反しているので、この契約は無効になるのですか、と言ったことを聞かれることがあります。

無効にした方が下請業者の有利になるのか不利になるのか、といった点は個別の取引によりますのでひとまず措きますが、結論としては、下請法違反は、直接的には対行政との関係の法律であり、親事業者・下請業者の契約の有効性に直接影響を与えるものではない、とご理解ください。

これはいわば下請法の親(一般法)である独占禁止法についても同じで、独占禁止法違反によっては、契約は直ちには無効とはならず,公序良俗違反、つまり直接的には民法90条の違反、とされるような例外的な場合にのみ無効となると判断されています(最判昭和52年6月20日民集31巻4号449頁参照)。

 

下請法の場合

下請法の場合でも,判例は独占禁止法と同じ結論を取る姿勢です(東京地裁判決 昭和63年7月6日 判例時報1309号109頁:なお,当該裁判例では,最終的に最高裁まで争われましたが,当該論点については第1審判決内容を維持しています)。したがって,下請事業者は,違法な単価改定合意であっても,これに独自に抵抗することは許されません。

下請法も同様に考えるのが、現在の判例の立場と言えます。

つまり、下請法は,行政による勧告その他罰則によって、違法状態の収捨などを図り、下請事業者を保護することを目的としています。

したがいまして、親事業者との当事者同士の交渉では、下請法違反だから単価は本来このはずだ、この下請法に違反して注文書を出してくれていないので受注書のとおり契約が成立しているはずだ等々主張しても、それは「直接」という意味では、親事業者を拘束することにはならないのです。

言い換えれば、下請事業者としては、監督官庁である中小企業庁や公正取引委員会に対して告発等するのが、下請法によって保護されたルートということになります。

とはいえ、念のため付言致しますが、あくまで直接的には、です。個別の交渉事例においては、下請法違反がある場合に、それを認識した親事業者が直ちに適切な取引内容に応じてくることはあります。

親事業者としても、違反行為に対する勧告や罰金といった事態を避けなければなりませんので、その点では、下請法については、対行政のみならず、企業同士の取引の基本として、しっかりとその規制内容を把握しておく必要があります。
  

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谷川安德

谷川安德

大阪府出身。立命館大学大学院法学研究科博士前期課程(民事法専攻)修了。契約審査、労務管理、各種取引の法的リスクの審査等予防法務としての企業法務を中心に業務を行う。分野としては、使用者側の労使案件や、ディベロッパー・工務店側の建築事件、下請取引、事業再生・M&A案件等を多く取り扱う。明確な理由をもって経営者の背中を押すアドバイスを行うことを心掛けるとともに、紛争解決にあたっては、感情的な面も含めた紛争の根源を共有すること、そこにたどり着く過程の努力を惜しまないことをモットーとする。
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