新型コロナウイルス感染症対策として企業に求められる安全配慮義務

新型コロナウイルス感染症対策として企業は様々な対応に迫られていますが、使用者は労働者に対し労働契約上の安全配慮義務を負っており、従業員の健康に対する安全に配慮する義務があります。

本稿では、新型コロナウイルス感染症対策として企業が取るべき安全配慮義務の具体的な内容について紹介いたします。

1 安全配慮義務

「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をする」べき義務を負っており(労契法第5条)、使用者がこれを怠り労働者の健康が損なわれた場合は損害賠償義務を負うことがあります。

従って、新型コロナウイルス感染症が蔓延する中で、企業が営業を続ける際には、使用者として労働者が新型コロナウイルス感染症に罹患しないための必要な配慮(合理的な対策)を実施することが求められます。

労働者の健康に対し使用者が負うべき安全配慮義務の具体的な履行については、「その当時認識し得る科学的・医学的な知見が基準となる」とされており、新型コロナウイルス感染症に関し、現時点で認識し得る科学的・医学的な知見を基準として対策を講じる必要があります。

2 新型コロナウイルス感染症に対応する安全配慮義務

記事執筆時点(5月6日)における厚生労働省の発表によると、新型コロナウイルス感染症は以下のような特徴があるとされています。

主な感染経路は飛沫感染及び接触感染であり、閉鎖空間において近距離で多くの人と会話するなどの環境下であれば咳やくしゃみ等の症状がなくても感染を拡大させるリスクがある一方、人と人との距離をとることで大幅に感染リスクが下がる

・密閉空間(換気が悪い)・密集場所(人が密集している)・密接場面(手の届く距離での会話や発声が行われる)のいわゆる「3密」のある場では感染拡大リスクが高い

・潜伏期間は1から14日であり濃厚接触者については14日にわたり健康状態を観察することとされている

・感染すると発熱や呼吸器症状が1週間前後持続することが多く、強いだるさや強い味覚・嗅覚障害を訴える人が多いこと

従って、新型コロナウイルス感染症に対応し、使用者が労働者に対して取るべき安全配慮義務を果たすためには、上記のような知見を基にした対策を講じる必要があります。

3 具体例

① 「3密」状況の解消・軽減

いわゆる3密状態であれば感染リスクが高いとされていることから、使用者としては、職種や業務内容に応じて3密を解消・軽減するなどの対策を講じる必要があります。これらの対策例としては

・会社の室内換気をこまめに行う、消毒液の設置を行い、マスクの着用を義務付ける
非対面オンライン会議の実施
・不要不急の出張の禁止
・人が集まる会議の削減、時間短縮、参加者の距離を空ける
テレワークやローテーション勤務、一時的な配置転換、時差出勤・時短勤務などの導入により従業員同士の対面や通勤による感染リスクを減少させる
社外との打ち合わせ、面談等についてもオンラインを原則とする
対面接客が必要な職種においても、消毒液やビニールカーテンの設置・入場制限等により感染リスクを減少させる

② 感染者等との接触の解消

感染者及び感染を疑われる者との接触を避け、感染が拡大することを防止する措置を講じる必要があります。これらの対策例としては

・発熱や咳、倦怠感、味覚嗅覚障害など新型コロナウイルスに関連する健康状態について労働者に報告を促し、症状が疑われる場合は報告を義務付ける
具体的に新型コロナウイルスに関連する症状が見られる場合には、休業(出勤停止)させる
感染者が発生した場合の濃厚接触者について待機期間として14日間休業(出勤停止)させる

新型コロナウイルス感染症については、現時点では不明な点が多い感染症であり、使用者としては労働者への安全配慮義務を果たすため、随時新型コロナウイルス感染症に関する情報を入手し、その時点の知見に従った対応を行わなければなりません。すなわち、一度対策を行ったら終わりではなく随時情報をアップデートし、対応する必要があります。

また、上記の具体例を実施するためには、会社の様々な制度について検討し、新たに労働契約の内容を変更したり、就業規則を見直したりすることも必要な場合があります。会社の業種によって取るべき対策は異なり、また同じ事業所内でも労働者それぞれの職種や環境により取るべき対策は異なります。これらを考慮せず一方的な対策を講じると労働者に不満が溜まり、業務に多大な悪影響を及ぼすとともに却って感染拡大のリスクを高めることになりかねません。

よって、新型コロナウイルス感染症の対策を講じるにあたって、労使間の話し合いを怠らないことが重要です。

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徳田 聖也

徳田 聖也

京都府出身・立命館大学法科大学院修了。弁護士登録以来、相続、労務、倒産処理、企業間交渉など個人・企業に関する幅広い案件を経験。「真の解決」のためには、困難な事案であっても「法的には無理です。」とあきらめてしまうのではなく、何か方法はないか最後まで尽力する姿勢を貫く。

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