資金繰り対策として当面可能と考えられる支出抑制策
新型コロナウイルスの感染拡大、緊急事態宣言の発令等に伴い、事業活動が大幅に制限され、前年比売上90%以上減という事態にまで多く直面する状況となりました。
このような状況下における資金繰り対策としては、支出を抑制し、現実的な収入を見通し、必要な融資を受けるほかありません。
現在、資金繰り支援については、情報が更新されており、税制とも関係するため、本稿に関しても情報更新が随時必要となりますが、概要以下のとおりの資金繰り対策が考えられますので、ご説明させていただきます。
事業活動に伴う支出のうち多くのもとしては、公租公課、公共料金、金融負債、テナント賃料、買掛金、賃金をあげることができます。
このうち、賃金については、民法、労働基準法において、従業員を休業させる場合においても、必要な支払いが定められており、また事業活動再開にあたっても、従業員の支えがなければ、活動を再開することができませんので、その支出をゼロとすることは、目下の支出抑制策としては適切ではありません。むしろ、休業手当を支給のうえ、雇用調整助成金の活用によって、雇用を維持しつつ、キャッシュを確保する途を求めるべきといえます。
また、仕入先等買掛金の支払いについても、これを先延ばしにすることは信用不安にもつながり、今後の事業継続に大きな影響を与えかねません。
現時点では、以上を除き、以下のような現実的な支出抑制策が考えられます。
なお、いずれについても、債権者への何の連絡もなく、一方的に、ということは想定していません。必ず事前相談を行ってください。
① 公租公課については、一定の要件の下に、最大1年間の支払いの猶予が認められています。所轄税務署等に、事実上の猶予も含め、早急に連絡をとり、ご相談ください。また、銀行口座からの自動引落しについても、この際、解除のうえ、当面のキャッシュの確保を優先することも必要です。
② 電気・ガス・水道・電話料金等についても支払猶予が認められる場合があります。公租公課と同様、自動引き落としの場合は解除のうえ、以前に支払猶予の申し出、相談を行ってください。
② 金融負債については、金融庁は各金融機関に対し、新型コロナウイルス感染の影響拡大を踏まえて、「元本・金利を含めた返済猶予などの条件変更について、迅速かつ柔軟に対応すること」を求めています。元本・金利の返済について、金融機関に事前相談のうえ、支払猶予を求めるなどしてください。また、中小企業再生支援協議会を利用した資金繰り支援を求めることが可能な事例もあります。
④ 賃料については、なお賃料支援策について流動的な情勢ですが、賃貸人が賃料の減免をした場合、賃貸人には税務上損金計上が認められるなどしています。
賃借人の賃料負担も相当な窮状ですが、賃貸人にとっても固定資産税の支払い等キャッシュフローに大きな支障が生じている状況が散見されます。
賃貸人・賃借人間において、各種施策も踏まえながら、一方的ではなく、この事態を乗り切るための協力的な姿勢で、話し合いを行うことが必要です。

Contents
谷川安德

最新記事 by 谷川安德 (全て見る)
「資金繰り対策として当面可能と考えられる支出抑制策」の関連記事はこちら
- 「事業場外みなし労働時間制」による反論
- いよいよ義務化されるパワーハラスメント防止措置~今から求められる事業主の対応
- テレワーク導入と就業規則の関係
- 事業場みなし労働時間制と裁量労働制
- 使用者の安全配慮義務違反による責任の範囲
- 働き方改革で変わる割増賃金請求への対応策
- 内定をめぐるトラブルを避けるために
- 労働時間の管理
- 労働条件の通知をめぐるトラブル対策
- 労働者の安全衛生
- 労働関係法令上の帳簿等の種類と、その保存期間について
- 労働関係訴訟
- 労基署対応のポイント
- 同一労働同一賃金~不合理な待遇差の診断、対応プラン
- 同一労働同一賃金とは?制度の趣旨・概要や2021年度法改正に向けた対応内容について解説
- 同一労働同一賃金における賞与と退職金の取扱いの注意点
- 団体交渉・労働組合対策(法人側)
- 固定残業代
- 変形労働時間制
- 就業規則のリーガルチェック
- 年次有給休暇
- 従業員のSNS対策
- 新型コロナウイルス感染予防を原因とする休業・時短勤務命令と賃金について
- 新型コロナウイルス感染拡大と賃貸借契約に関する諸問題について
- 新型コロナウイルス感染症と企業に求められる個人情報保護
- 新型コロナウイルス感染症に関して企業がとるべき対応 ~労働者を休ませる場合の措置に関する留意点~
- 新型コロナウィルス感染症の影響による解雇について
- 新型コロナウイルス感染症対策としての時差出勤の実施について
- 新型コロナウイルス感染症対策として企業に求められる安全配慮義務
- 新型コロナウィルス感染症対策にかかる雇用調整助成金について
- 新型コロナウイルス感染症影響下における年次有給休暇の取得について
- 新型コロナウイルス感染症拡大時における『下請法』
- 新型コロナウイルス感染症拡大時における『個人情報保護法』
- 新型コロナウイルス感染症拡大時における『労務問題・労務管理』
- 新型コロナウイルス感染症拡大時における『契約』
- 新型コロナウイルス感染症拡大時における『株主総会』
- 新型コロナウイルス感染症拡大時における『資金繰り・倒産・事業再生』
- 新型コロナウイルス感染症拡大時に中小企業が利用可能な資金支援について
- 新最高裁判例紹介~同一労働同一賃金
- 残業代問題
- 残業代請求とは
- 残業代請求に対する使用者側の反論(各論)
- 残業代請求事件における使用者側の反論
- 異動(出向・転籍・配置転換)
- 経歴詐称が判明した社員を懲戒解雇することができるか
- 育児・介護休暇、休業
- 裁量労働制を採用する使用者の反論
- 解雇
- 試用期間とは何か?
- 試用期間と解雇・本採用拒否のご相談
- 賃金の支払いについて
- 資金繰り対策として当面可能と考えられる支出抑制策
- 退職勧奨
- 退職後の競業避止義務について
- 過重労働撲滅特別対策班(かとく)の監督指導・捜査
- 労働審判の申立にどのように対応すべきか?
グロース法律事務所が
取り扱っている業務
新着情報
- 2021.01.14お知らせ
- 緊急事態宣言発令に伴う電話受付時間等変更のお知らせ
- 2020.12.30お知らせ
- 事業承継勉強会 第1回 2020.12.22
- 2020.12.30お知らせ
- 年末年始の休業期間お知らせと緊急のご相談について
- 2020.11.18お知らせ
- 【ご報告】同一労働同一賃金10月最高裁判決解説セミナーの講演動画を公開します
- 2020.10.19お知らせ
- 【実施済み】パワハラ防止法対策セミナーを医療法人朋友会様・社会保険労務士法人IMI様と開催しました