利用者の残置物の処分について
居宅型福祉サービスを提供している場合、利用者は生活の拠点として福祉サービスを利用することから事業者は利用者の私物を多く預かることになります。そして、利用者が亡くなられた場合、残された私物についてどのように取り扱う必要があるのでしょうか。
Contents
1 相続人への引渡し
利用者が亡くなられると相続が発生し、私物の所有権は相続人に帰属します。従って、当該利用者の相続人に引き取って頂くことが原則です。また、入所契約時にご家族などに身元引受人に就任してもらう場合は、同時に下記の「残置物引取人」に就任してもらうことにより、引渡しがスムーズに行われることが多いでしょう。
2 残置物引取人への引渡し
利用者が亡くなられた場合の残置物について、上述のとおり相続人に引き取って頂くことが原則ですが、相続人が判明しない場合や連絡が取れない場合があります。また、利用者との入所契約が解消された場合の退去において残置物が残されていることもあります。
そのような場合に対処するため、入所契約時に「残置物引取人」を定めておき、事業所としてはその残置物引取人の連絡先を把握しておく必要があります。
残置物が残されている場合に、残置物引取人に連絡を取り引き取りを依頼したにもかかわらず残置物の引取りがなされない場合は、事業所としては行うべき手は尽くしたとして後記の残置物の処分を行いやすくなります。
3 相続人の存在が判明しない場合
相続人がいない場合や相続人がいるか否か判明しない場合は事業所としては残置物を保管しておくことになります。しかし、いつまでも残置物を保管しなければならないとすれば、保管場所の確保や保管費用が発生し事業所にとって負担となります。
そのような場合、事業所としては可能な限りの相続人の探索を行ったうえで、客観的な価値の低いものについては、一定期間保管したうえで処分することも考えられるでしょう。
また、客観的に価値の高いものであっても保管コストが高いものであればいつまでも保管するわけにはいきません。そのような場合は相続人のための事務管理として処分することが考えられます。保管費用は後に相続人が判明した場合は相続人に請求できるものですが、保管費用が物の価値を超えてしまう場合は相続人のためにも処分することが許されるでしょう。
いずれにしても後の紛争をさけるため、残置物の保管コストがそれほど高くない場合は可能な限りの期間保管し、保管コストが高い場合は事務管理として処分することで対処する必要があります。
4 グロース法律事務所がお手伝いできること
グロース法律事務所は介護事業所向けプランもご用意しており、介護事故対応・紛争解決から利用者とのトラブル予防まで幅広いアドバイスを行っております。利用者とのトラブルでお悩みの事業所様はぜひ一度お問い合わせください。

徳田 聖也

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