利用者からのハラスメント(暴言暴力)対処マニュアル

介護施設における利用者からの暴言・暴力のページでもご紹介したとおり、事業者は従業員に対する安全配慮義務として利用者からの暴言・暴力から従業員を守る対策を講じる必要があります。

調査によると、利用者やその家族からハラスメントを受けたことのある職員は利用者からでは7割、家族からは3割にのぼります。

その対策の一つとして、利用者からのハラスメントへの対処マニュアルを作成し、事業所内で共有することが有効です。

利用者からのハラスメントについては、社会問題化していることから、国に対策を求める要望が上がっていたところ、厚生労働省から、老人保健健康増進等事業として、株式会社三菱総合研究所が策定した「介護現場におけるハラスメント対策マニュアル」(以下「本マニュアル」といいます。)が発表されました。

本稿では、本マニュアルの概要をご紹介し、各事業所において取るべきハラスメント対策のポイントをお伝えいたします。

 

ハラスメントの定義付け

本マニュアルではハラスメントについて①身体的暴力②精神的暴力③セクシャルハラスメントとして、以下のように例示を挙げて具体的に明らかにしています。これらについてきちんと定義をしておくことで、これまで我慢の範囲内であると考えられてきた利用者からの行動についても、ハラスメントであると認識することができ、事業者として対策を取るべきであるということを再認識することが可能です。また、具体的なハラスメント例を示すことにより、職員からも利用者からハラスメントを受けた旨について申し出を行いやすくなる側面があると考えられます。

①身体的暴力(身体的な力を使って危害を及ぼす行為。)

・コップを投げつける

・叩かれる、蹴られる

・手を払いのけられる

・手をひっかかれる、つねる

・唾を吐く

・服を引きちぎられる

なお、これらについては職員が回避したため危害を免れたケースも含まれます

 

②精神的暴力(個人の尊厳や人格を言葉や態度によって傷つけたり、おとしめたりする行為)

・大声を発する、怒鳴る、威圧的な態度で文句を言い続ける

・「この程度できて当然」と理不尽なサービスを要求する

・利用者の夫が自分の食事も作れと強要する

・家族が利用者の発言をうのみにし、理不尽な要求をする

・特定の訪問介護員に嫌がらせをする

 

③セクシャルハラスメント(意に添わない性的誘いかけ、好意的態度の要求、性的な嫌がらせ行為)

・必要もなく身体を触る

・女性のヌード写真を見せる

・入浴介助中、あからさまに性的な話をする

・サービス提供に無関係に下半身を出して見せる

 

事業者自身として取り組むべきこと

(1) 基本方針の決定と周知

事業所としてハラスメントは許されないという方針を明確にし、職員に周知します。これにより事業所全体としての対策が可能となり、泣き寝入りや早期相談を促し、我慢の限界による突然の離職等を防ぎます。

(2) マニュアルの作成・共有

介護事故マニュアルを策定されている介護事業所も多いかと思いますが、同様に利用者からのハラスメント対処マニュアルを作成し、共有することで適切な対応が可能となります。

(3) 報告・相談しやすい窓口の設置

利用者からのハラスメントが減らない一因として、ハラスメントが発生した場合に職員が事業所に相談できない環境があるというものがあります。相談窓口を設置したうえで周知を行い、いつでも相談できる体制を整備しておくことが必要です。

(4) 利用者・家族に対する周知

ハラスメントを防止することが介護サービスを継続して円滑に利用できることに繋がることを伝えます。また、どのようなことがハラスメントに当たるのか具体例を書面等でお知らせし、ハラスメントが行われた際の対応方法、場合によっては契約解除になることを事前に、適切に伝えることが必要です。

場合によっては、医師や介護支援専門員など第三者の協力を得ながら繰り返し伝えることも必要になります。

(5) 利用者等に関する情報の収集とそれを踏まえた担当職員の配置・申送り

新規の利用者について、介護支援専門員などを通じて情報を収集し、ハラスメント発生の可能性が高いと認められる場合には情報に基づいた適切な担当職員の配置や申送りを行う必要があります。

また、訪問系のサービスにおいては利用者宅等において問題発生時に速やかに外に出ることができる経路等を確認し、共有することも重要です。

(6) ハラスメントが発生した場合の対応

ハラスメントが発生した場合は、初期対応として職員の安全を第一に即座に対応を行うことが必要です。早期に行うことが重要です。被害職員はもとより利用者や家族等に対しても速やかに対応します。

必要に応じて、介護支援専門員や地域包括支援センター、医師、行政、警察などに連絡・通報します。

また、ヒアリングにおいて、職員を責めるような言動を行わないように注意します。

職員の心のケアやその後の従業上の配慮等(担当変更など)も行います。

(7) 再発防止策の検討

実際にハラスメント事案が発生した場合は、同様の被害が生じないよう事案を分析し、マニュアル等に反映させることが必要です。

(8) 組織として対応

ハラスメントへの対応については、担当職員にのみ対応を任せると過度な負担が生じてしまうことがあります。代表者を含めた組織前提で対応を行う姿勢が重要です。

(9) サービスの種別や介護現場の状況を踏まえた対策の実施

訪問系サービスでハラスメントが発生する懸念がある場合は、担当シフト作成時の配慮、管理者の同行、複数人の派遣などを検討することも必要です。また、担当者を固定しないようにするなどの対策も考えられます。

 

職員に対して取り組むべきこと

(1) 必要な情報の周知徹底

前述の基本方針・対応時マニュアル・相談窓口の設置などを内容も併せて十分に周知することが重要です。資料を配布するだけでなく、対面説明を行うことが重要になります。

() 介護保険サービスの業務範囲の適切な理解の促進

職員が介護保険サービスにおいて提供できるサービスの内容や範囲を適切に理解し、どの職員でも利用者・家族等への対応や説明が同様にできるようにすることは利用者・家族とのトラブルを回避することができ、ハラスメントの未然防止に役立ちます。従って、サービスの範囲や内容、利用者への説明の仕方について学ぶ機会を提供することも必要です。

(3) 職員への研修の実施、充実

ハラスメントに関する研修を定期的に実施することが効果的です。未然防止策や対応策について共有しましょう。

また、職員へ指導する立場である管理者向けの研修も行います(外部研修への参加も含みます)。

【研修の内容例】

・契約書や重要事項説明書の利用者への説明のための研修

・職員個人の情報提供に関して注意すべきこと

・介護保険制度や契約の内容を超えたサービスは提供できないことを説明するための研修

・報告・相談のための記録化の研修

() 職場でのハラスメントに関する話し合いの場の設置、定期的な開催

定期的に話し合いの場を設けることで報告・相談のしやすい雰囲気を作ります。

(5) ハラスメント未然防止への点検等の機会の提供

ハラスメント未然防止の為のチェック項目資料を職員に配布し、職員が自らの行動を点検あるいは振り返るようにします。チェック項目については本マニュアルに参考資料として記載されていますので、参考にしてください。

 

関係者との連携に向けて取り組むこと

行政や他職種・関係機関との連携

ハラスメントを繰り返す利用者・家族に特定の事業者のみが対応するのは限界があるため、日ごろから行政(保健所含む)、地域包括支援センター、医師、介護支援専門員、他のサービス事業者などと連携を築いておくことが重要です。但し個人情報の取扱いには十分に留意してください。

 

まとめ

以上が本マニュアルの紹介及びポイントです。利用者・家族からのハラスメントは事業主にとって避けては通れない問題であり、従業員を守りより良いサービスの提供のためにも対策は必須となります。

グロース法律事務所では、介護事業所様向けにハラスメント対応のご相談をお受けしております。お気軽にご相談ください。

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