業務上必要かつ相当な範囲の指導につき、元従業員からパワーハラスメントであるとして慰謝料を請求された事案

(相談)

パート従業員が業務上のミスを繰り返したため、店長が注意・叱責をしたところ、次の出勤日から無断欠勤し、後日パワーハラスメントであるとして慰謝料請求及び退職理由を会社都合退職にせよと会社に対し請求が行われた事案です。

 

当該パート従業員のミスはお客様からの注文を間違え他の商品を提供したり、釣銭の計算ミスをしたりするなど店舗の信頼を損なうものを繰り返していたため、段階的に注意指導の度合いが増したものであり、パワーハラスメントに該当しないと会社は考えている。そのような注意指導も、注意指導を受けた者が「パワーハラスメントである」と訴えればパワーハラスメントに該当してしまうのかというご相談でした。

(対応)

業務中の指導・叱責について、慰謝料が発生するパワーハラスメントに該当するものは、当該指導・叱責が、社会通念に照らし、業務上の必要性がないことか又はその態様が目的を大きく逸脱していたり、業務を遂行するための手段として不適当であったりするなどして、相当性の範囲を超える場合であることを説明いたしました。

 

そして、上記ミスの内容・頻度を詳細にヒアリングすると共に、店長が実際に行った叱責の内容を店長本人及び同店舗従業員にヒアリングを行いました。その結果、パート従業員のミスの頻度が相当程度高く、実際に当該ミスに基づく顧客からのクレームが多発していることが確認でき、また、店長が行った注意指導についても徐々に厳しいものになっていったものの、繰り返しミスを行う従業員に対する注意指導の範囲を超えるものではないことが確認できました。

 

そこで、当該元パート従業員と上記ヒアリング内容をまとめた資料を渡したうえで面談し、店長の行った注意指導はミスの頻度や内容からすると社会通念上相当程度の範囲内であり、慰謝料の支払いを行うことや、退職理由をパワーハラスメントに基づく会社都合とすることはできない旨を説明いたしました。

 

当該元パート従業員は資料を基に弁護士に相談するとのことでしたが、後日慰謝料も退職理由の変更も求めないことの連絡がありました。説明時に渡した資料を基に慰謝料請求等が不可であると判断されたものと思われます。

 

パワーハラスメントはパワーハラスメントを受けたと感じる側が「パワーハラスメントである」と言ったことを理由としてパワーハラスメントになるものではなく、各注意指導の場面において社会通念上業務指導に必要かつ相当の範囲か否かで決まります。従って、日ごろから従業員に必要な範囲内での業務指導を心がける(必要な業務指導は行って良いことを含む)ことを周知しておく必要があります。

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徳田 聖也

徳田 聖也

德田聖也 京都府出身・立命館大学法科大学院修了。弁護士登録以来、相続、労務、倒産処理、企業間交渉など個人・企業に関する幅広い案件を経験。「真の解決」のためには、困難な事案であっても「法的には無理です。」とあきらめてしまうのではなく、何か方法はないか最後まで尽力する姿勢を貫く。
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