WEBサイト製作業務委託契約書について

1 WEBサイト製作業務委託契約書とは~注意すべき全体像~

 

 (1) 契約の性質を理解する

WEBサイト製作業務委託契約書は、民法上は、「委任」と「請負」が合わさった内容の契約が多く見られる例です。

例えば、契約書のうち、WEBサイトの構築、という部分については「請負」であり、一定の仕事の完成に対して、代金が支払われる内容になります。

一方、例えば、SEO対策や、保守業務が入っていたり、サーバーレンタル契約についての代行業務が入っている場合には、その部分については、仕事の完成、ではなく、その仕事をしたこと、に対して、代金が支払われる内容となります。

まずは、こういった契約の性質も理解したうえで、契約の全体像を捉える必要があります。

(2) 何を書いておくべきか

発注する側と、受注する側、では判断のポイント自体は異なりますが、先ほどの契約の性質を踏まえて、次のような内容は必須です。

① 受発注業務は特定されているか?

② 請負部分については、その完成形が仕様書などで特定されているか?

③ 代金はどの仕事に対する対価として定められているか?

④ その支払い時期は?

⑤ 仕事の完成、仕事をしたことを何で確定させる?

⑥ 不具合の対応は?

という内容です。

また、新たに知的財産権が発生し、あるいは既存の知的財産権が利用されることがほとんどであるため、一般的な秘密保持契約のほか、著作権等が誰に帰属するのか、ということにも気をつけなければなりません。

 

このような、全体像を理解したうえで、契約書をチェックしていくことが必要です。

 

2 実際には、どのような条文とすべきか

ホームページの製作部分に限っての契約を前提に、いくつかの重要な規定内容をご説明致します。

 

(本件受託業務の内容)

甲(委託者)は、乙(受託者)に対し、甲乙間で、別途確定する仕様書(以下「確定仕様書」という。)の内容したがい、甲のホームページの製作を委託し、乙はこれを受託した(以下「本件受託業務」という。)。

 

受託業務の内容を定めることは、契約書の要となるものです。

シンプルな規定例ですが、「仕様書」(タイトルは特に決められたものがあるわけではありません。要件定義書などの例もあります)の確定を前提として、HPの製 作を委託することを明らかにした規定例です。

「仕様書」においては、デザインや、レイアウト、ページ数等々を確定させ、それらを契約の内容にするということになります。契約締結後に仕様を確定させることはトラブルの元となりますので、契約時には、仕様を明確に確定しておくことが必要です。

また、HPの製作にあたっては、HTML言語等を用いた構築ではなく、代表的にはワードプレスなどのコンテンツ管理システム(CMS=Content Management System)を利用した製作の例も増えてきています。特に、CMSの場合、HTML言語等を知らなくても、原稿等の更新が用意ですので、委託者がこれを望む場合もあります。

上記条文は、シンプルな規定例ですが、受託業務の内容の特定にあたっては、どういったツールを用いてHPを製作するのか、ということについても特定をしておくことが望ましいと言えます。

 

(委託料)

1 本件受託業務の対価は、●●円とし、委託者は、受託者に対し、以下のとおり支払うものとする。

① 本契約締結時        ●●円

② 検収完了時検収完了後5営業日以内に    ●●円

2 次の各号の一に当たるときは、相当額の追加費用が発生することを原則とし、受託者は再見積を行って委託者に対し委託料の変更を請求することができる。

(1) 委託者の都合により本件受託業務の仕様等が変更されるとき。

(2) 成果物の納入期限が委託者の都合により変更されるとき。

 

委託料の定めにおいて、重要なことは、どの業務(仕事の完成)に対し、どの対価が定められているかということです。今回の紹介例は、HPの製作部分のみですので、着手時、完了時の支払い時期を2つに分けただけの内容ですが、例えば、保守業務やサーバーレンタル契約を代行する場合などは、HPの製作部分とは別に、別途委託料を明確に定めておく必要があります。

また、法的紛争の多くのパターンは、追加修正作業に費用が発生するのか、という内容です。受託側としては、上記の例によって、追加費用が原則発生するということを明記しておくことが必要です。

 

(検収)

1 受託者は、別途定める納入期日までに、成果物(以下、「本件成果物」という。)を納入するものとする。

2 前項の納入は、非公開のインターネット上で本件成果物を確認出来る状態をもって行うものとする。

3 委託者は、受託者の支援を得て、納入後5日以内に、本件成果物に対する検査を実施し、確定システム仕様書に適合する場合には、受託者に対して、書面によりその旨を通知することにより、検収を完了する。

4 前項の検収により、確定システム仕様書に適合しない場合には、委託者は受託者に対し、具体的な不具合を指摘してこれを通知し、受託者は当該不適合部分につき無償修補を行うものとする。但し、当該修補作業を行うにつき、受託者において、主要なプログラム等の修正が必要になる等本件システムの主要部分の修正が必要と判断した場合には、委託者と受託者は、追加費用、その額及び修正期間等を別途協議する。

5 当該テスト期間内に、前3項の通知がない場合及び不具合の指摘がない部分については、当該テスト期間満了をもって、検収を完了したものとみなす。

 

検収についての規定例です。検収を行うにあたっては、何をもって成果物が完成しているといえるのか、といった基準が必要ですので、先ほど述べましたとおり、「仕様書」を前提として確定しておく必要があります。

この検収によって、それが完了すれば費用の請求をすることが出来ますし、また検収時に不具合が見つかれば、それを手直しするという問題も生じます。多くあるトラブルの一つに、いつまでも無償で修正作業を余儀なくされる、という例があります。これは「仕様書」を確定していなかったり、検収方法について明確に規定がなかったり、といったことに起因するトラブルです。こういったトラブルがないように、という視点から契約内容を確定していく必要があります。

また、納入の方法としても、ホームページ特有の納入形態となりますので、その点を明記したものとしています。

 

(著作権)

本件受託業務により受託者から委託者に納入された本件成果物に関する一切の著作権は、受託者に帰属するものとし、受託者は委託者に対し、委託者が自ら本件システムを使用するために必要な範囲で、著作権法に基づく利用を無償で許諾するものとする。

著作権についての例だけを紹介致しますが、上記は、受託者側に権利が帰属することを明らかにする例です。ケースによっては、代金支払いとともに、一切の著作権が、委託者から受託者に移転するという例もあるかと思います。

ホームページの場合には、今後原稿の修正や、画像の修正等々改変や複製などが続いていきますので、権利関係は明確に取り決めておく必要があります。

 

WEBサイト製作業務委託契約書に関しても、委託者側、受託者側、どちらの立場にたって契約をするのかによって、検討ポイントは大きく異なります。以上の全体像をベースとして、貴社の取引形態に合わせた契約書作成を行うことをおすすめ致します。

 

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谷川安德

谷川安德

谷川安德 大阪府出身。立命館大学大学院法学研究科博士前期課程(民事法専攻)修了。契約審査、労務管理、各種取引の法的リスクの審査等予防法務としての企業法務を中心に業務を行う。分野としては、使用者側の労使案件や、ディベロッパー・工務店側の建築事件、下請取引、事業再生・M&A案件等を多く取り扱う。明確な理由をもって経営者の背中を押すアドバイスを行うことを心掛けるとともに、紛争解決にあたっては、感情的な面も含めた紛争の根源を共有すること、そこにたどり着く過程の努力を惜しまないことをモットーとする。
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