迷惑行為や賃料滞納等問題ある賃借人に対するオーナー対応の諸問題

迷惑行為を繰り返す賃借人への対応

□同じマンションに居住する賃借人から、隣室の音楽がうるさい、そのために夜眠れない・・・

□ゴミの分別を無視して、ゴミを出している賃借人がいる。カラスがゴミをまき散らしている・・・

□ペットの飼育が禁止されている賃貸借契約のはずなのに、犬の鳴き声がする・・・

 

賃貸オーナーや管理会社を悩ませる賃借人の迷惑行為の例です。

このような行為に対して、オーナー側としてはどのような対応を取る必要があり、また取ることが出来るでしょうか。

 

これらの問題を考える上では、二つの留意すべきポイントがあります。

それは、

① 迷惑行為を繰り返す賃借人に対するオーナー側の対応

② 同じ物件に居住する他の賃借人との関係でとるべきオーナー側の対応

という二つのポイントです。

 

① 迷惑行為を繰り返す賃借人に対するオーナー側の対応

オーナー側を悩ませる迷惑行為は様々です。

迷惑行為の例としては、

□騒音問題(大音量の音楽、足音等々)

□隣人等へのいやがらせ

□他の賃借人の使用を妨げる通行妨害等

□ゴミの不始末

□風紀を乱す不良行動

等々を例として挙げることができます。

 

このような賃借人の行為が、賃貸借契約違反となるかどうか、がここでの問題です。

近時は、賃貸借契約上に賃借人が、これら行為を行わないこと、迷惑行為を行った場合には、賃貸借契約を解除することができる、というような条文を設けることが多いです。

こういった契約書上の特約がある場合には、これら迷惑行為が契約違反に当たることは明白です(解除できるかどうかは、後に述べますように別の検討も必要です)。

では、このような特約がない場合には契約違反を主張することが出来ないのでしょうか。

結論としては、賃借人は、契約書に記載がなくとも、民法上

「契約又はその目的物の性質によって定まった用法に従い、その物の使用及び収益をしなければならない」

という義務を賃貸人に対して負っていますので、物件の用法に従った利用を行わない場合には、契約違反と認定できる場合があります。

 

次に、問題となるのは、これら違反があれば、直ちに解除出来るかどうか、です。

賃貸借契約の賃貸人からの解除については、判例上、賃貸人と賃借人の信頼関係が破壊された、という程度まで関係がこじれなければ契約解除が認められていません。したがって、結論は、迷惑行為の内容や程度等によるのですが、違反=契約解除、とまで即認められる例は少ないと言えます。

 

解除まで認められるためには、

・迷惑行為の内容、程度、状況

・賃貸人による是正の請求に対する態度、対応

・他の賃借人との賃貸借契約関係に及ぼした影響の程度

等が認定されていくこととなりますが、賃貸人が解除の主張までにどのような対応を行ったかという経緯は信頼関係の破壊の有無を判断するうえでも重要な事実経過ですので、まずは、直ちに迷惑行為を是正するよう、請求すべきです。

 

具体的な対応としては、個々の迷惑行為の内容毎に様々ですので、個別にはご相談ください。

 

② 同じ物件に居住する他の賃借人との関係でとるべきオーナー側の対応

賃貸人は、迷惑行為を行う賃借人に対しては、迷惑行為を行わないよう請求すべきです。実は、これは、他の賃借人との関係でも必要な対応です。

賃貸人は賃借人に対し、賃貸物件を使用収益させる義務を負っていますが、単に部屋などを貸すというだけではなく、物件を静穏に使用収益できる状態にして提供する義務まで含んでいます。

従いまして、オーナーとしては、迷惑行為を認識しながら、あるいは他の賃借人から対応を求められながら、放置を続けた場合、他の賃借人との関係で毛約違反(債務不履行)となる可能性があります。

債務不履行となった場合には、賃借人から契約の解除を主張されることもありますし、損害賠償請求をされることもあるので、注意が必要です。

実際の判例上も、近隣居住者に怒鳴り込んだり、暴力を振うなどの生活妨害行為を繰り返している者がいるのに、賃貸人がその者に明渡しを求めるような行為に出なかったことが債務不履行に当るとして、損害賠償請求が認められた例もあります。

 

グロース法律事務所では、賃貸物件のオーナー、管理会社向けに賃料回収も含めた契約プランを用意していますので、お気軽にお尋ね下さい。

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谷川安德

谷川安德

谷川安德 大阪府出身。立命館大学大学院法学研究科博士前期課程(民事法専攻)修了。契約審査、労務管理、各種取引の法的リスクの審査等予防法務としての企業法務を中心に業務を行う。分野としては、使用者側の労使案件や、ディベロッパー・工務店側の建築事件、下請取引、事業再生・M&A案件等を多く取り扱う。明確な理由をもって経営者の背中を押すアドバイスを行うことを心掛けるとともに、紛争解決にあたっては、感情的な面も含めた紛争の根源を共有すること、そこにたどり着く過程の努力を惜しまないことをモットーとする。
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