プライバシーポリシーはなぜ必要?契約書に詳しい弁護士が解説

1 そもそも「プライバシーポリシー」とは?

プライバシーポリシーとは、個人情報やプライバシー情報の取得や利用、管理等の自社の取扱い方針について定めた文書のことです。但し、企業ごとにどの様な目的の下に定めているかによって内容は異なりますので、一口にプライバシーポリシーといっても、その定義は様々あり得ます。

もっとも、個人情報保護法では、例えば、事業者が個人情報を取得した場合は、あらかじめその利用目的を公表している場合を除き、速やかに、その利用目的を本人に通知し、又は公表しなければならないと定められています(個人情報保護法211項)。

 

そのため、個人情報を取り扱う事業者は、個人情報の利用目的等を定めたプライバシーポリシーを作成し、自社のホームページ等で広く公表することが一般的となっているのです。

プライバシーマークを取得している事業者に対しては、個人情報保護法よりもさらに厳しいルールが適用されるので、その点でも用いられ方は企業ごとに異なりますが、本稿では、個人情報保護法上の義務規定を主に念頭において、プライバシーポリシーで定めるべき内容について解説致します。

 

2 「個人情報」とは

まず、個人情報保護法において、「個人情報」とは、次のように定められています。

この法律において「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、次の各号のいずれかに該当するものをいう。

一 当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等(文書、図画若しくは電磁的記録(電磁的方式(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式をいう。次項第二号において同じ。)で作られる記録をいう。以下同じ。)に記載され、若しくは記録され、又は音声、動作その他の方法を用いて表された一切の事項(個人識別符号を除く。)をいう。以下同じ。)により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)

二 個人識別符号

自社のプライバシーポリシーにおいて、どのような情報について取扱いを定めるのかを明らかにするために、「個人情報」の定義規定を設けるのが通常です。その場合、個人情報保護法と同じ規定を設けることが多いと思いますが、より広く(自社に厳しく)、個人情報の定義を設ける例もあります。この点はプライバシーポリシーを定める目的によって判断する必要があります。

 

 利用目的

次に、個人情報保護法では、事業者が個人情報を取り扱う場合には、利用目的をできる限り特定し、あらかじめその利用目的を公表している場合を除き、速やかに、その利用目的を、本人に通知し、又は公表しなければならない、と定められています(個人情報保護法171項、同法211項)。

プライバシーポリシーにおいては、この法律の規定を遵守することを目的として、利用目的を具体的に特定し、規定を設けています。極めて重要な条項となりますので、具体的に特定し、かつ漏れの無いように十分な検討を重ねて下さい。

 

4 第三者提供について

(1) 個人情報保護法では、以下に掲げる場合を除き、予め本人の同意を得ないで個人データを「第三者」に提供してはならない、と定められています(個人情報保護法271項)

なお、新型コロナに関連して、本人の同意を得ずに提供できる場合があることについては、この条文が関連しています。

① 法令に基づく場合

② 人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき

③ 公衆衛生の向上又は児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。

④ 国の機関若しくは地方公共団体又はその委託を受けた者が法令の定める事務を遂行することに対して協力する必要がある場合であって、本人の同意を得ることにより当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき。

⑤ 当該個人情報取扱事業者が学術研究機関等である場合であって、当該個人データの提供が学術研究の成果の公表又は教授のためやむを得ないとき(個人の権利利益を不当に侵害するおそれがある場合を除く。)。

⑥ 当該個人情報取扱事業者が学術研究機関等である場合であって、当該個人データを学術研究目的で提供する必要があるとき(当該個人データを提供する目的の一部が学術研究目的である場合を含み、個人の権利利益を不当に侵害するおそれがある場合を除く。)(当該個人情報取扱事業者と当該第三者が共同して学術研究を行う場合に限る。)。

⑦ 当該第三者が学術研究機関等である場合であって、当該第三者が当該個人データを学術研究目的で取り扱う必要があるとき(当該個人データを取り扱う目的の一部が学術研究目的である場合を含み、個人の権利利益を不当に侵害するおそれがある場合を除く。)。

 

(2) 「第三者」に該当しない例

一方、個人情報保護法では、以下のような場合には個人データの提供を受ける者は「第三者」には該当しないとされているため、、事業者は本人の同意を得ないで個人データを提供することができます(個人情報保護法275項)。

 

① 個人情報取扱事業者が、利用目的の達成に必要な範囲内において、個人データの取扱いの全部又は一部を委託することに伴って、当該個人データが提供される場合

② 合併その他の事由による事業の承継に伴って、個人データが提供される場合

③ 特定の者との間で共同して利用される個人データが、当該特定の者に提供される場合であって、その旨並びに共同して利用される個人データの項目、共同して利用する者の範囲、利用する者の利用目的及び当該個人データの管理について責任を有する者の氏名又は名称について、あらかじめ、本人に通知し、又は本人が容易に知り得る状態に置いているとき

 

(3) オプトアウトによる第三者提供

「オプトアウト」という言葉を聞かれたことがある方もいらっしゃると思いますが、個人情報保護法では、事業者が、第三者に提供される個人データ(要配慮個人情報を除く)について、本人の求めに応じて当該本人が識別される個人データの第三者への提供を停止することとしている場合であって、以下に掲げる事項について、予め、本人に通知又は公表するともに、個人情報保護委員会に届け出たときは、本人からの同意を得なくても当該個人データを第三者に提供することができる手続きも定めています(個人情報保護法272項)。これが、「オプトアウト」による第三者提供です。

 

① 第三者への提供を行う個人情報取扱事業者の氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名

② 第三者への提供を利用目的とすること。

③ 第三者に提供される個人データの項目

④ 第三者に提供される個人データの取得の方法

⑤ 第三者への提供の方法

⑥ 本人の求めに応じて当該本人が識別される個人データの第三者への提供を停止すること。

⑦ 本人の求めを受け付ける方法

⑧ その他個人の権利利益を保護するために必要なものとして個人情報保護委員会規則で定める事項

 

 共同利用

個人情報を共同利用するときには、その者が「第三者」に当たらない結果、本人の同意を得ないで個人データを提供することができる場合があります。

グループ企業間で共同利用するケースも多いかと思いますが、個人情報を共同利用する場合には、以下の情報について、プライバシーポリシーに記載して公表していない場合には、必ず予め本人に通知する必要があります(個人情報保護法2753号)。

① 特定の者との間で個人データを共同利用する旨

② 共同して利用される個人データの項目

③ 共同して利用する者の範囲

④ 利用する者の利用目的及び当該個人データの管理について責任を有する者の氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名

 

 個人情報の開示

個人情報保護法では、事業者は、本人から本人が識別される保有個人データの開示の請求を受けた場合には、本人に対し、遅滞なく、当該保有個人データを開示しなければならない、と定められています(個人情報保護法331項、2項)。

また、個人情報保護法では、事業者が本人からの保有個人データの開示の請求に応じる手続きを公表しなければならない、と定められています(個人情報保護法3213号、331項)。

そのため、プライバシーポリシーにおいて、本人からの個人データの開示請求に応じる場合の手続きを定めておく必要があります。

 

 保有個人データの訂正等

個人情報保護法では、事業者は、本人から本人が識別される保有個人データの内容が事実でないため、当該保有個人データの内容の訂正等の請求を受けた場合には、利用目的の達成に必要な範囲において、遅滞なく必要な調査を行い、その結果に基づき、当該保有個人データの内容の訂正等を行わなければならない、と定められています(個人情報保護法341項、2項)。

この場合、事業者は、本人からの請求に応じて、保有個人データの内容の全部若しくは一部について訂正等を行ったときは、本人に対し、遅滞なく、その旨及びその内容を通知しなければなりません(個人情報保護法343項)。

加えて、訂正等の請求に応じる手続きについても公表しなければならないと定められています(個人情報保護法3213号)。

プライバシーポリシーにおいて、本人からの個人データの訂正等の請求に応じる手続きが定められているのはこの理由によります。

 

 個人情報の利用停止等

個人情報保護法では、事業者は、本人から、当該本人が識別される保有個人データが、利用目的の範囲を超えて取り扱われているという理由、又は不正の手段により取得されたという理由に基づいて、当該保有個人データの利用の停止又は消去(以下「利用停止等」といいます。)を求められた場合において、その請求に理由があることが判明したときは、遅滞なく、当該保有個人データの利用停止等を行わなければならない、と定められています(個人情報保護法351項・2項、18条、19条)。

また、本人からの保有個人データの利用停止等の請求に応じる手続きを公表しなければならないことも定められています(個人情報保護法32条、351項)。

 

 苦情・お問い合わせ窓口

個人情報保護法では、個人情報取扱事業者が行う保有個人データの取扱いに関する苦情の申出先を公表しなければならないと定められています(個人情報保護法3214号、同法施行令10条)。

そのため、事業者としては、個人情報の取扱いに関するお問い合わせ先をプライバシーポリシーにおいて明記しておいてください。

 

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谷川安德 大阪府出身。立命館大学大学院法学研究科博士前期課程(民事法専攻)修了。契約審査、労務管理、各種取引の法的リスクの審査等予防法務としての企業法務を中心に業務を行う。分野としては、使用者側の労使案件や、ディベロッパー・工務店側の建築事件、下請取引、事業再生・M&A案件等を多く取り扱う。明確な理由をもって経営者の背中を押すアドバイスを行うことを心掛けるとともに、紛争解決にあたっては、感情的な面も含めた紛争の根源を共有すること、そこにたどり着く過程の努力を惜しまないことをモットーとする。
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