介護施設における労務トラブル(訪問介護労働者について)  

介護事業所で働く従業員の方々に関する労働基準関係法令や雇用管理に関する規定の適用について、厚生労働省は介護事業所における雇用環境に合わせた「介護労働者の労働条件の確保・改善のポイント」を発表しています。

その中で、訪問介護労働者について特に言及されている部分があります。これは、訪問介護に従事される方は、比較的短時間労働・非定型的なシフト・臨時的な雇用形態も多く、かつ就業場所が事業所外であることも多いため、適切な労務管理がなされていないことも多いことから、特に「介護労働者の労働条件の確保・改善のポイント」にて言及されていると考えられます。本稿では「介護労働者の労働条件の確保・改善のポイント」に基づく訪問介護労働者に関する事項について解説いたします。

なお、訪問介護の業務に従事する訪問介護員については、一般的には使用者の指揮監督の下にあると考えられており、委託・委任・登録などの呼称にかかわらず、労働基準法上の労働者に該当すると考えられています。

 

1 就業規則の周知

訪問介護員は労働基準法上の労働者である場合、就業規則は当該訪問介護員にも周知させなければなりません。訪問介護員は事業場に赴く機会が少ないことから、事業場に設置するだけでは就業規則を周知していると言い難く、就業規則を交付するなどすることが望ましいとされています。

 

2 休業手当の支払い

使用者の責めに帰すべき事由により労働者を休業させた場合は、休業手当として平均賃金の60%以上の手当てを支払わなくてはなりません(労働基準法第26条)。

利用者からのキャンセルや時間変更を理由として労働者を休業させる場合に、事業者は当該労働者について、他の利用者宅での勤務などの代替業務を行わせる可能性等を含めて検討する必要があり、これらを検討せず直ちに休業を命じた場合には、使用者の責めに帰すべき事由による休業となり休業手当の支払が必要になります。

従って、担当利用者がキャンセルになった場合に、自動的に休業となるような取り扱いは避け、事業所としては代替案を検討したうえで、休業か否かの判断を行わなければなりません。

 

3 移動時間について

賃金の発生する労働時間とは、使用者の指揮監督の下にある時間を指し、実際に介護サービスを提供している時間に限るものではありません。複数の利用者宅を移動する移動時間や急な需要に備えるための事業所での待機時間も労働時間に含まれます。但し、通勤時間は労働時間に含まれません。

従って、利用者Aと利用者Bを一日で担当する訪問介護労働者が、自宅からAさん宅へ直接向かう場合、この自宅からAさん宅までの移動時間は通勤時間として労働時間に含まれません。

しかし、Aさん宅での介護サービス終了後、直接Bさん宅へ向かう場合、Aさん宅からBさん宅への移動時間は労働時間に含まれます。また、Bさん宅から事業所へ移動しなければならない場合のBさん宅から事業所への移動も労働時間に含まれます。

また、特定の業務は定まっていないものの、急な利用等に備えて事業所で待機する場合は待機時間として労働時間に含まれます。

これら労働時間に含まれる場合は当然該当時間分の賃金は発生し、また残業代算定の基礎になる労働時間にも当然含まれます。

よって、事業所としては訪問介護労働者の移動時間、待機時間についても把握しておく必要があります。

 

4 グロース法律事務所がお手伝いできること

以上のとおり、訪問介護労働者については、柔軟な稼働形態であることが多いものの、事業所としては各労働者の正確に把握したうえで事業所運営を行わなければなりません。

グロース法律事務所では使用者専門の法律事務所として介護事業所における労務問題を取扱っております。労務問題でお悩みの介護事業所様はお気軽にご連絡ください。

 

グロース法律事務所によくご相談をいただく内容

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徳田 聖也

徳田 聖也

德田聖也 京都府出身・立命館大学法科大学院修了。弁護士登録以来、相続、労務、倒産処理、企業間交渉など個人・企業に関する幅広い案件を経験。「真の解決」のためには、困難な事案であっても「法的には無理です。」とあきらめてしまうのではなく、何か方法はないか最後まで尽力する姿勢を貫く。
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