景品表示法の全体像

景品表示法とは何か?を理解するためには、個別の規制を眺める前に全体像を理解しておくことが有用です。

そこで、本稿では、

① 景品表示法の目的

② 不当な表示の禁止=表示規制の概要

③ 景品類に対する規制=景品規制の概要

④ 違反に対する措置

という視点で全体像を解説致します。

 

1 法律の目的

景品表示法は、もともと独占禁止法の特例法としての起源をもつ法律ですが、その後消費者庁の発足に伴い、所管が消費者庁に移管された経緯を持つ法律です。そのため、現在の法律の目的は、商品及び役務の取引に関連する不当な景品類及び表示による顧客の誘因を防止するため、「一般消費者により自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為の制限及び禁止について定めることにより、一般消費者の利益を保護すること」とされています。

 

2 不当な表示の禁止=表示規制の概要

表示とは、顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の供給する商品・役務の品質、企画、その他の内容や価格等取引条件について、消費者に知らせる広告や表示全般を指します。

およそ事業者が顧客を誘引する際に利用すると思われるものはすべて含まれるといえます。

商品・サービスの品質や価格についての情報は、消費者が商品・サービスを選択する際の重要な判断材料であり、消費者に正しく伝わる必要があります。ところが、商品・サービスの品質や価格について、実際よりも著しく優良又は有利であると見せかける表示が行われると、消費者の適正な商品選択を妨げられることになります。このため、景品表示法では、消費者に誤認される不当な表示を禁止しているのです。

不当表示には大きく分けて下記の3つの種類があります。

「優良誤認表示」

商品・役務の品質、規格、その他の内容についての不当表示。

例:ミンチ牛肉について、実際には近江牛20%であるにもかかわらず、近江牛90%と表示した場合等

「有利誤認表示」

商品・役務の価格、その他の取引条件についての不当表示。

例:消費者庁のHPの例では、

(1)取引条件について、実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示として、「当選者の100人だけが割安料金で契約できる旨表示していたが、実際には、募者全員を当選とし、全員に同じ料金で契約させていた場合」

 

(2)取引条件について、競争業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示として「『他社商品の2倍の内容量です』と表示していたが、実際には、他社と同程度の内容量にすぎなかった。」

という例が挙げられています。

「その他誤認されるおそれのある表示」

一般消費者に誤認されるおそれがあるとして内閣総理大臣が指定する不当表示。

原産国以外の国名や地名などを商品に表示するなどで、具体的には以下のような内容についての指定がされています。

・無果汁の清涼飲料水等についての表示

・商品の原産国に関する不当な表示

・消費者信用の融資費用に関する不当な表示

・不動産のおとり広告に関する表示

・おとり広告に関する表示

・有料老人ホームに関する不当な表示

 

3 景品類の制限及び禁止

事業者が過大景品を提供することにより消費者がそれに惑わされ、不良品質のものなどを買わされてしまうことは、消費者にとって不利益になるものです。また、過大景品による競争がエスカレートすると、事業者は商品・サービスそのものでの競争に力を入れなくなり、ひいては消費者の不利益につながる悪循環を生みだします。

古くの例でいえば、昭和35年頃にはチューイングガムで1000万円が当たる、ウイスキーでハワイ旅行(*現在は一部ウイスキーの方が高額化しているものもありますが)というような消費者の射幸心を過度に刺激するものなどが多くみられた時代がありました。

景品表示法では、景品類の最高額、総額等を規制することにより、一般消費者の利益を保護するとともに、過大景品による不健全な競争を防止しています。

(1) 景品類

景品類とは、顧客を誘引する手段として、取引に付随して提供する物品や金銭など経済上の利益を指します。提供する景品については、最高額、総額等の規制がかかります。

(2)景品類の提供例と規制

景品類には以下のような提供例と限度額等の規制がなされています。

一般懸賞・・・商品・役務の利用者に対し、くじ等の偶然性、特定行為の優劣等によって景品類を提供すること

限度額

懸賞による取引価額 景品類限度額
最高額 総額
5,000円未満 取引価額の20 懸賞に係る売上予定総額の2%
5,000円以上 10万円

 

 

共同懸賞・・・商品・役務の利用者に対し、一定の地域や業界の事業者が共同して景品類を提供すること

限度額

景品類限度額
最高額 総額
取引価額にかかわらず30万円 懸賞に係る売上予定総額の3%

 

 

総付景品・・・懸賞によらず、商品・役務を利用したり、来店したりした人におれなく景品類を提供すること

限度額

景品類限度額
最高額 総額
取引価額にかかわらず30万円 懸賞に係る売上予定総額の3%

 

4 景品表示法を違反した場合

景品表示法に違反すると、措置命令などの措置が採られます。

景品表示法に違反する表示等がある場合には、「措置命令」という行政処分がなされ、また優良誤認表示又は有利誤認表示をした事業者に対しては、課徴金を国庫に納めることを命じる行政処分(課徴金納付命令)がなされます。

「措置命令」とは、一般にはあまり聞き慣れず、処分の内容も推測しにくい文言と思いますが、概要、

 

□不当表示を禁止させること

□既に表示が取り止められている場合には、消費者に対して違反事実を公示して周知すること

□再発防止策を講じること

などを命じる行政処分です。

 

一方、「課徴金納付命令」は、事業者に金銭的負担を課すもので、実は比較的新しく、2016年4月から運用が開始されたものです。それまでの措置命令だけの行政処分では、不当表示によって一般消費者を誤認させ、不当な利益を上げていた事業者も、いわば不当表示を止めるという制裁だけで済まされていたという状況がありましたが、課徴金納付命令によって、不当表示に対する抑制が極めて強くなったということが言えます。

 

景品表示法は、法律の規定は比較的シンプルである一方、ガイドラインなどが多数存するうえ、「表示」をどのような表示と理解するかの判断などが事例によっては難しく、また基本的には消費者保護法としての法律の性格から、消費者保護を重視とした解釈がなされる傾向にあります。

事業者としては、景品表示法に違反する表示とならないよう十分な理解と表示の根拠を整理しておくことが重要といえます。

弊所でも、景品表示法に関する継続的サポートを行っています。業種によって規制内容が異なることもありますので、自事業の業態に即したご相談をいただければと思います。

 

グロース法律事務によくご相談いただく内容

・自社商品の広告が景品表示法に違反していないかチェックをしたい

・自社商品の効果効能を示す広告を行う際に、どのような根拠資料を集めたらよいのかわからない

・自社製品の販売におまけをつけて販売したいが景品表示法上可能か知りたい

・ソーシャルゲームの開発にあたりポイントの付与が景品にあたるか知りたい

・自社の広告制作チームに景品表示法の知識を教えて欲しい

景表法分野に関するグロース法律事務所の提供サービスのご紹介と費用

広告は継続的に更新して行うものであるものであり、企業の事業戦略とも密接に関わることから、継続的な審査が可能となる顧問契約を推奨しております。
顧問契約プランについてはこちらをご参考ください。

顧問契約内容のご案内

顧問先様以外の広告審査のスポット受任における費用は以下のとおりです。

①広告審査について

〇広告審査(不当表示該当性)アドバイス

顧問先様以外は1時間あたり4万1800円

実際の広告(または広告案)を拝見し、文言の内容・大きさ・位置、写真やイラスト等の文言以外の表現の内容・位置について審査し、アドバイスいたします。

〇広告審査(不実証広告規制対応)アドバイス

顧問先様以外は1時間あたり4万1800円

実際の広告(または広告案)を拝見し、表示する効能・効果などについて、合理的な根拠を示す資料と足りうるか審査し、アドバイスいたします。

〇景品類の制限に関する調査

顧問先様以外は1時間あたり4万1800円

実際の景品類の提供案について、景品類の提供に関する事項の制限・禁止に該当するか否か、該当する場合にはいかなる方法によるべきかなどを審査し、アドバイスいたします。

②広告審査社内体制の構築

〇従業員教育(出張セミナー・勉強会)

7万7000円~/1回

ご要望に合わせ、出張セミナー・勉強会を開催し、各社に合った景品表示法に関する教育を実施いたします。

〇社内広告審査体制の構築(問題事例の提供・マニュアルの作成)

22万円~

社内で広告審査体制(部門)を設置する場合の組織体制アドバイス・審査マニュアルの作成・問題事例の提供等を行います。

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※遠方の方はオンライン会議での初回面談も承りますので、お申し付けください。また、新型コロナウイルス感染症の影響でどうしても来所ができないという方につきましても、オンライン会議で初回無料で面談を承りますので、お申し付けください。

 

 

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谷川安德

谷川安德

谷川安德 大阪府出身。立命館大学大学院法学研究科博士前期課程(民事法専攻)修了。契約審査、労務管理、各種取引の法的リスクの審査等予防法務としての企業法務を中心に業務を行う。分野としては、使用者側の労使案件や、ディベロッパー・工務店側の建築事件、下請取引、事業再生・M&A案件等を多く取り扱う。明確な理由をもって経営者の背中を押すアドバイスを行うことを心掛けるとともに、紛争解決にあたっては、感情的な面も含めた紛争の根源を共有すること、そこにたどり着く過程の努力を惜しまないことをモットーとする。
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