介護施設における労務トラブル(有期労働契約締結の無期転換権)

介護事業所における労務管理について、労働法規を遵守しなければならないことは法律上の義務ですが、介護業界でより良い人材を確保し、介護サービスの質を上昇させるためにも、これらの労働法の規定を遵守し、より働きやすい職場環境を醸成することは必須となります。有期労働契約が多い介護の現場では有期労働契約における労働法規を把握しておくことが重要です。特に平成2541日以降に開始した有期労働契約については労働契約法18条に定められているいわゆる「無期転換ルール」が適用されますので、各有期労働契約者との契約更新等において、このルールをきちんと把握しておく必要があります。

以下に労働契約法18条いわゆる無期転換ルールについて解説いたします。

 

 

無期転換ルール

無期転換ルールとは労働契約法18条に定められた有期労働契約期間が通算で5年を超える場合に、労働者の申し込みにより契約期間を有期から無期に転換できる(無期転換権)というものです。

条件を満たした労働者の無期転換への申し込みについて、使用者は拒否することはできず、自動的に契約期間について定めのない(無期)労働契約となります。

そして、無期転換となった場合、労働期間を除く労働条件は有期契約時と同様の労働条件となります。

 

無期転換権の発生

有期労働契約者の無期転換権発生の要件は以下の①から③です。

  •  同一の使用者との有期労働契約期間が通算で5年を超えていること

「同一の使用者」とは、事業主単位で判断されます。したがって、継続した別の有期労働契約において、別の事業所で働いている場合も雇用主である事業主が同一の場合は、労働契約期間は通算されます。

つまり、異動等により所属する介護事業所が異なった場合も雇用先である法人が同様であれば労働期間は通算されます。

また、継続して労働契約を更新するのではなく、有期労働契約と有期労働契約の間に空白期間が存在する場合、その空白期間が6ヶ月を超える場合は、空白期間以前の労働期間については5年の通算期間に含まれません(労働契約法182項)。なお、育児休業や介護休業は労働契約は締結された状態の休業期間ですので、当該休業期間は空白期間に含まれません。

この場合、空白期間以後の労働契約について通算で5年を超えた場合に無期転換権が発生します。

  •  有期労働契約が1回以上更新されていること(初回の更新ではないこと)

有期労働契約は原則として3年が上限となりますので、ほとんどの場合問題になりませんが、例外的に「一定に事業の完了に必要な期間を定めるもの」については3年の上限を超えることができます。

この場合は、通算で5年を超えることがありますが、1回も更新されていないこともあり、そのような契約の場合は、5年を超えたとしてもそれだけでは無期転換権は発生しません。

  •  申し込み時点で同一の使用者との間で労働契約が締結されていること

無期転換権は退職するまでに行使する必要があり、退職後(労働契約終了後)は無期転換権を行使することはできません。

 

無期転換権の行使

無期転換権は、上記の2の要件を満たしている場合に、権利が発生している間はいつでも行使することができます。つまり、一度以上契約が更新され、通算期間が5年を超えた時点から契約が継続している間はいつでも行使できます。

5年を超えた時点以降で、契約期間が満了した場合無期転換権は消滅しますが、継続して同一の使用者と契約が更新されれば、新たに無期転換権が発生します。

無期転換権の行使の方法や無期転換行使時期について、使用者の管理の必要性から、一定の範囲内で就業規則等により制限することは可能と考えられますが(書面による申し込みに限る、契約期間終了前1ヶ月前までに転換の申し込みを行うなど)、有期労働者にとって重大な権利の行使を制限するものであることから、制限が許されるのは合理的な範囲の制限にとどまるでしょう。

 

グロース法律事務所がお手伝いできること

以上が無期転換権ルールの概要です。無期転換権を発生させないため、現在通算期間が5年未満の有期労働契約者について、次回の契約を更新しないと考える場合(雇い止め)であっても、無条件に雇い止めが可能ではなく、契約を更新しないことについて客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められなければいけません(労働契約法19条)。

これらの検討には法的な検討が不可欠であり、安易な雇い止めは紛争を生じさせます。

グロース法律事務所では使用者専門の法律事務所として介護事業所における労務問題を取扱っております。労務問題でお悩みの介護事業所様はお気軽にご連絡ください。

 

グロース法律事務所によくご相談をいただく内容

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徳田 聖也

徳田 聖也

德田聖也 京都府出身・立命館大学法科大学院修了。弁護士登録以来、相続、労務、倒産処理、企業間交渉など個人・企業に関する幅広い案件を経験。「真の解決」のためには、困難な事案であっても「法的には無理です。」とあきらめてしまうのではなく、何か方法はないか最後まで尽力する姿勢を貫く。
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