なぜ契約書や誓約書等において反社会的勢力を排除するための条項が必要か?

 

取引の後では間に合わない

(1) 暴力団排除条例等

別稿では、政府の取り組みとして、平成19年6月19日に公表された「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」に触れました。

これを受けるような形で、各地方公共団体において暴力団排除条例の制定・施行が進み、現在、47都道府県すべてにおいて施行されている状況です。

大阪府においても、「暴力団の排除は、暴力団を恐れないこと、暴力団に対して資金を提供しないこと及び暴力団を利用しないことを基本にするとともに、暴力団事務所の存在を許さないこととして、府、市町村、府民及び事業者が相互に連携を図りながら協力して、社会全体として推進されなければならないこと」を基本理念とし、平成23年4月1日に施行がされています。

大阪府暴力団排除条例では、例えば、利益供与の禁止(第14条)として、

事業者は、その事業に関し、暴力団の威力を利用する目的で、又は暴力団の威力を利用したことに関し、暴力団員等又は暴力団員等が指定した者に対し、金品その他の財産上の利益又は役務の供与(以下「利益の供与」という。)をしてはならない。

2 事業者は、前項に定めるもののほか、その事業に関し、暴力団員等又は暴力 団員等が指定した者に対し、暴力団の活動を助長し、又は暴力団の運営に資することとなる相当の対償のない利益の供与をしてはならない

といった規定が設けられ、違反事由がある場合に、説明又は資料の提出、勧告、公表といった措置がとられることがあります。

その他、条例上禁止された行為等がありますが、このような禁止規定に違反した場合に、企業として、最悪の場合、企業名が公表されるといったことにより社会的信用を失うことも考えられますし、取締役については、取締役の善管注意義務違反等の責任に問われる可能性もあり得ます。

 

(2) なぜ、「取引の後では間に合わない」のか

では、契約をした後、相手方が暴力団等であることが判明した場合、契約は解除出来るのでしょうか。あるいは一方的に契約を解消しようとした場合、相手方から損害賠償請求等をされるリスクはないのでしょうか。

この点については、一般論としては、相手方が契約の際、暴力団等であることを秘し、契約に至ったには、こちら側の契約交渉過程での説明、契約の目的や内容によっては、錯誤無効、あるいは契約書の「解除」の条項に一般的に規定されている条項などを根拠として、契約解除ができる場合もあります。

しかし、暴力団をはじめとする反社会的勢力は、必ずしも暴力団を名乗るわけではもなく、政治活動等を標榜しながら、あるいは、取引自体についても債務不履行をすることなく、巧みに社会に紛れ込んでいるというのが実態です。

したがいまして、反社会的勢力との関与は強く疑われるが暴力団ではない場合、取引自体には特に不履行はなく、約束どおりお金を支払ってもらっているような場合、など契約を無効、あるいは解除するには、根拠が不十分なケースがあり得ます。そして、このような場合に、一方的に解除してしまうと、相手方から損害賠償請求をされるといったリスクも生じてきます。

そうならないためには、反社会的勢力の定義を明確に掲げ、相手方に暴力団等の反社会的勢力でないことや、反社会的勢力と関与しないこと等を表明、確約させ、それに違反した場合には無催告で解除できることや、その場合に損害賠償義務を負わないこと等、法律の一般論を超えた特別の規定を設けておくことが必要となるのです。

「取引の後では間に合わない」とはまさにこのことです。

 

上場企業、上場を目指す企業の場合

また、上場審査では、反社会的勢力と関係がないこと、継続的な関係を持たないための組織的な仕組みが 構築されているか、が確認されています。

契約書や取引約款に反社会的勢力排除条項を導入することもその取り組みの一つです。

上場申請時、「反社会的勢力との関係がないことを示す確認書」の提出が求められますが、主な仕入先及び販売先についての記載も求められますので、この点でも、現時点からの取り組みが必要です。

これも「取引の後では間に合わない」場合の一つと言えます。

 

反社会的勢力を排除するための適切な契約条項の入れ方については、直接ご相談下さい。

 

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反社会的勢力排除に関する誓約書

 

 

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谷川安德

谷川安德

谷川安德 大阪府出身。立命館大学大学院法学研究科博士前期課程(民事法専攻)修了。契約審査、労務管理、各種取引の法的リスクの審査等予防法務としての企業法務を中心に業務を行う。分野としては、使用者側の労使案件や、ディベロッパー・工務店側の建築事件、下請取引、事業再生・M&A案件等を多く取り扱う。明確な理由をもって経営者の背中を押すアドバイスを行うことを心掛けるとともに、紛争解決にあたっては、感情的な面も含めた紛争の根源を共有すること、そこにたどり着く過程の努力を惜しまないことをモットーとする。
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