ハラスメントにおける使用者の責任

パワーハラスメントやセクシャルハラスメント、マタニティハラスメントについて事業主はその防止の為の措置を取ることが義務付けられており、使用者は具体的な防止策を講じなければなりません。ハラスメントの発生については社会的にも厳しい目が向けられています。

それでは、実際に各種ハラスメントが発生した場合に、使用者にはどのような責任が生じるのでしょうか。

 

安全配慮義務違反

労働契約法5条は、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と定め、使用者は労働契約の内容として労働者を危険から保護するよう配慮すべき義務(安全配慮義務)を負っていることを明らかにしています。

従って、使用者は労働者が各種ハラスメントの被害を受けることが無いように労働環境を整える義務があり、これを怠りハラスメントが発生した場合には、安全配慮義務違反として使用者が当該ハラスメントの損害を賠償する責任が生じます。従って、使用者は各種ハラスメントを防止するための措置を講じることはもちろんのこと、各種ハラスメントが発生しないように個別具体的な対応を取ることが求められます。

 

使用者責任(民法715条)

使用者責任とは、事業のために他人を使用する者は被用者が事業の執行について第三者に加えた損害を賠償しなければならないというものです。事業者は他人(従業員)を使用して利益を得ていることから、その従業員の不法行為については同様の責任を負うべきという考えから定められています。

従って、事業の執行についてハラスメントが発生した場合は、ハラスメントを行った者について不法行為責任が生じる(民法709条)はもとより、使用者は使用者責任により、ハラスメントによる損害について賠償する責任が生じます。

但し、使用者責任は使用者が被用者の選任及び事業の監督について相当の注意をしたとき又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、責任を負わないと規定されていますので、使用者は従業員の選任や損害発生防止の為の事前・事後の対策が十分になされていたことが立証できれば、使用者責任を免れることが可能です。

しかし、現に社内でハラスメントが発生した場合に事業の監督について相当の注意をしていたことを立証することはハードルが高いといえます。従って、ハラスメント防止の為の措置について漏れなく整備し、ハラスメントが発生しないような環境を整えることが極めて重要になります。

 

以上、各種ハラスメントが発生した場合には、使用者の安全配慮義務違反や使用者責任により使用者が損害賠償責任を負う可能性があります。ハラスメントにより心身に支障をきたし、労働者に障害が生じた場合は、その損害額が数百万円から数千万円になる可能性もあり、また、業務上の疾病による休業期間については解雇が制限されるなど、使用者にとって大きな影響が生じます。

 

グロース法律事務所では、労働問題における使用者専門の法律事務所として各種ハラスメントが発生した場合の対応はもちろんのこと、ハラスメントを防止するための措置に関するアドバイスも積極的に行っております。ハラスメント問題でお悩みの企業様はお気軽にお問合せ下さい。

 

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徳田 聖也

徳田 聖也

德田聖也 京都府出身・立命館大学法科大学院修了。弁護士登録以来、相続、労務、倒産処理、企業間交渉など個人・企業に関する幅広い案件を経験。「真の解決」のためには、困難な事案であっても「法的には無理です。」とあきらめてしまうのではなく、何か方法はないか最後まで尽力する姿勢を貫く。
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