運送業の経営者の皆様へ
Contents
1 運送業の特徴について
近年ではEC・ネット通販の需要が増え、物流量は増加傾向にあります。
最近では、どのような業種でも人手不足が叫ばれておりますが、運送業もまさに人手不足の代表例の業界です。このような業界では、従業員の立場が強くなりやすく、事業者の指示・指導に従わずに問題となることも多くあります。また、長距離運送による、長時間労働が起こりやすい業種であることから、労務管理が特に重要な業界であると言えます。
運送業における最近の重要判例として、平成30年6月1日に各種手当等の差異につき、労働契約法20条違反等が争われた事件の二つの著名な最高裁判決が下されました(ハマキョウレックス事件・長澤運輸事件)。
これら二つの裁判は、ドライバーにおける正社員と有期雇用社員(契約社員・定年後再雇用嘱託社員)との間の待遇差の合理性が争われたものであり、様々な雇用形態のドライバーを抱える運送業の皆様にとって重要なものです。
これらの判例と、待遇に関しての確認点については、下記の記事についてもぜひ御確認下さい。
これらの裁判例を踏まえたうえで、運送業界においても、コンプライアンスを重視し、働き方改革を徹底していくことは最重要事項です。
2 運送業において発生しやすい紛争
①ドライバーから、未払い残業代の請求をされてしまった
②ドライバーを解雇したところ、不当解雇といわれてしまった
③正社員と有期雇用契約社員の待遇の格差が不合理であるといわれてしまった
④運送事業の委託先が約束通りの運賃をなかなか支払ってくれない
3 運送業特有の法的問題に関して、弁護士ができること
残業代請求
長距離輸送に伴う長時間労働等、運送業は労働時間が長くなりやすい業種であるため、労働時間の管理が非常に重要となります。下記の記事を是非ご参考にしてください。
特に運送業においては「手待ち時間」や「待機時間」が労働時間に含まれるか否かについて多くの裁判例があります。これらの裁判例を踏まえてどのように労務管理を行うかを決めておくことが必要であり是非弁護士にご相談ください。
解雇問題
使用者は簡単には労働者を解雇できないようになっています。一般的に企業経営者に比べ、弱い立場にある労働者を保護するために、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は、解雇は無効とするとされています(解雇権濫用法理)。これは運送業のように、人手不足で労働者に立場が強くなっている場合でも変わりません。
そのため、安易に解雇をするのは避けなければならず、自主的な退職を促す退職勧奨という方法を採ることも検討しなければなりません(退職勧奨については下記記事をご参考ください)。
また、同じ解雇でも解雇される社員側に原因がある解雇(懲戒解雇など)と業績悪化など会社側に原因がある解雇(整理解雇)では、解雇が認められる要件が全く異なります。
従って、解雇を行う場合には、事前に弁護士に相談することが重要かつ必要です。
正社員と有期雇用社員の待遇差の問題
いわゆる同一労働同一賃金の問題です。今後は、正社員と有期雇用労働者との間で各種手当等に違いを設ける場合は、各種手当の 性質や目的に応じて合理的なものにする必要があり、また、これらの違いについて労働者から説明を求められた場合には、事業者はその説明を行う義務があります。
現に各種手当等に違いを設けている場合やこれから違いを設けようとする場合は、弁護士にご相談いただき、同一労働同一賃金において許容されないものであれば、直ちに是正しなければなりません。また、労働者から待遇の差異の説明を求められた場合に備えて、自社の待遇差を弁護士と共に再確認することも重要です。
運送事業の委託先や受託先との問題
独占禁止法や下請代金支払遅延等防止法(下請法)、貨物自動車運送事業法に関する検討も必要になります。委託側ではこれらの法律に違反する発注や値段交渉等にあたらないようにしなければならず、受託側では委託先からの代金が不当に減額された場合などは、これらの法律に違反することを指摘し、正当な代金を請求することが可能になる場合もあります。
顧問契約の案内や、初回の来所法律相談は無料で対応をさせていただきます。是非、運送業の皆様は、弊所の顧問契約をご検討ください。
徳田 聖也
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