打消し表示について
Contents
1 打消し表示とは
商品やサービスの広告を行う場合に、断定的な表現や目立つ表現などを使って、品質等の内容や価格等の取引条件を強調して表示することがあります。これを「強調表示」といいますが、強調表示を行うこと自体は、それが事実に反する者でない限り問題となるものではありません。
しかし、強調表示だけでは事業者にとって有利な事項についてのみ強調され、また、対象商品・サービスの全てについて無条件・無制約に当てはまると捉えられる可能性が高いと考えられます。
そこで、一般消費者が商品やサービスを選択する際の重要な考慮要素に関するもののうち、強調表示から認識できない例外条件、制約条件がある場合はその旨の表示(打消し表示)を適切に行わなければ、強調表示は不当表示(有利誤認・優良誤認表示)となってしまいます。
打消し表示の具体例は、「店内商品全品半額セール」との強調表示がある場合における「※ただし、一部ブランド商品を除く」との表記やダイエット効果の強調表示がある場合の「※ただし効果には個人差があります。」などが挙げられます。
2 打消し表示を行うにあたっての留意点
(1) 打消し表示を行う際の3つの観点
特定の表示が有利誤認または優良誤認であるかは、その表示内容全体から一般消費者が通常受ける印象が「著しく有利」または「著しく優良」であるかを基礎にして判断されます。
従って、広告上に打消し表示が記載されていても、一般消費者が打消し表示を認識できなかったり、打消し表示の内容を理解できなかったり、そもそも強調表示と打消し表示が矛盾しているような場合は、一般消費者は強調表示が全体として与える印象どおりに取引条件や商品内容を認識し、有利誤認または優良誤認表示となる可能性があります。
よって、打消し表示を行う際には、
・強調表示と打消し表示が矛盾していないか
・打消し表示の表示方法に問題がないか(打消し表示を認識できるか)
・打消し表示の表示内容に問題がないか(打消し表示の内容を理解できるか)
の3つの観点から検討を行うことが必要です。
これらの観点を検討するにあたり、消費者庁は平成29年7月に「打消し表示に関する実態調査報告書」、平成30年6月に「打消し表示に関する表示方法及び表示内容に関する留意点(実態調査報告書のまとめ)」を公表しており参考になります。
(2)強調表示と打消し表示が矛盾していないか
強調表示と打消し表示が矛盾している場合、打消し表示の意味がなく一般消費者は何が示されているのかわからず、強調表示通りの印象を持つ可能性が高いといえます。
例えば、
セラミック製のフライパンの広告において「くっつかないから油が不要」との強調表示がある場合に、打消し表示として「使用する前に油慣らしをしてください」との表記がある場合。
車の傷の補修材の広告においてイメージ画像として複数の塗装に亘る深い傷について修補できるようなものを表示しておきながら、打消し表示として「※クリアコート上についた浅いキズを修復するための商品ですクリアコート下の塗装まで達しているキズや大きなキズ・面積の広いキズの修復には使用しないでください」との表記がある場合。
などが挙げられ、このような表示は打消し表示があったとしても強調表示を否定するものであり、意味をなさないものであると考えられます。
(3)打消し表示の表示方法に問題がないか
表示方法における問題点は打消し表示に関する実態調査報告書にて基本的な考え方や留意事項が記載されており、本稿でもその記載に沿って解説いたします。
表示方法に問題がある場合とは、一般消費者が打消し表示について正しく認識できない表示方法を言います。
表示方法に問題がある場合の考慮要素については、全ての媒体に共通する事項の他、動画広告特有の考慮要素、WEB広告特有の考慮要素が挙げられていますので以下にご紹介いたします。
【全ての媒体に共通の要素】
・打消し表示の文字の大きさ
文字の大きさが小さすぎる場合は消費者は打消し表示を正しく読むことができません。一律に文字の大きさが決まっているわけではありませんが、消費者が手にとって見るような表示物の場合は8ポイント以上でなければ醜い表示になることが指摘されています。
また、駅構内のポスターのように離れた場所から目にすることが想定されている表示物に関しては実際に目にする状況において適切な大きさで表示する必要があります。
・強調文字と打消し表示の文字の大きさのバランス
上記の文字の大きさだけでなく、強調文字が大きく、打消し表示の文字が極端に小さい場合など文字のバランスも問題になります。
・打消し表示の配置場所
強調表示とどの程度離れているのかということも文字の大きさやバランスと共に問題になります。ただし、※などの表記により多少離れた場所に記載することは一般消費者が認識できれば問題ありません。
配置場所については、少なくとも同一視野にあることは必要であり、広告の左下に強調表示があり、右上に打消し表示を行うことやチラシの表に強調表示があり裏に打消し表示がある場合なども問題になります。
・打消し表示と背景の区別
打消し表示の文字の色と背景の色が対照的でない場合など背景との区別がつきにくいような場合は打消し表示の存在に気付かないおそれがあります。
【動画広告の考慮要素】
・打消し表示が含まれる画面の表示時間
打消し表示の表示時間は消費者が正確に読める長さを確保する必要があります。
・強調表示と打消し表示が同じ画面に表示されるか
別の画面に表示されると消費者は打消し表示であると認識できない恐れがあります。
・音声による表示の方法
音声により強調表示が行われている場合に、打消し表示を文字のみで行うことは、音声により表示された強調表示のみに消費者の意識が向くため問題となると指摘されています。
・複数の場面で内容の異なる複数の強調表示と打消し表示が登場するか
複数の強調表示と打消し表示が登場する場合は情報量が多く、消費者が全ての打消し表示を正しく認識することが難しいと指摘されています。
【WEB広告の考慮要素】
・打消し表示が1スクロール以上離れているか
1スクロール以上離れている場合、消費者は打消し表示に気付かなかったり、どの強調表示に対する打消し表示なのかの対応が分からなかったりすることから問題となります。
(4)打消し表示の内容に問題がないか
打消し表示の内容に問題がないかとは、打消し表示を認識した際に、消費者が内容を理解できるものであるかということに尽きます。
実態調査報告書では、例示として、「全て込み」と追加料金が発生しないかのように強調している場合に、別に追加料金が発生する旨が打消し表示に記載されていたり、割引期間や割引料金が強調されている場合にそれらが適用される条件について打消し表示に記載されている場合は、追加料金が発生する条件や割引が適用される条件について消費者が理解できるような表示でなければならない旨が説明されています。
また、試験に基づいた効果・性能を強調表示として用いた場合の、打消し表示についても外来語や業界独自の用語、専門用語などの使用によって一般消費者が理解できない場合は問題となる旨が説明されています。
(5)体験談を用いる場合の打消し表示について
特に打消し表示として問題となりうる類型として体験談があります。「ただし個人の感想であり効果を保証するものではありません。」「全員に同じような効用が感じられるものではありません。」などの表記です。
これらについて、体験談の捏造が許されないことは当然ですが(実際の体験談とは異なる記載を行うことは当然、はじめから企業の求める体験談を明らかにしてそのような効果を誘導させた体験談なども許されません)、体験談を不適切な形で利用することも問題となります。
体験談が記載されている場合に、例え打消し表示にて「個人の感想です。」との記載があったとしても通常消費者は「大体の人が効果、性能を得られる」と考えてしまいます。
また、商品の効果を標ぼうし体験談を乗せた際に、打消し表示として「効果効能を表すものではありません。」との表示を行う場合(例えば、飲むだけで痩せるという効果を標ぼうした商品を飲んで、実際に痩せたという体験談を載せておきながら、当該体験談は「個人の感想であり、効果効能を表すものではありません。」と表記する場合)は、商品の効果を標ぼうしていることと矛盾しているため意味をなしていないと考えられます。
このため、実際には商品を使用しても効果、性能等を全く得られないものが相当数存在するにもかかわらず、商品の効果等があったという体験談を表示した場合は、打消し表示が明瞭に記載されていたとしても一般消費者は大体の人が何らかの効果を得られるという認識を抱くことから、優良誤認表示となるおそれがあります。
これらを踏まえ、体験談を用いる際の留意点としては、実際には商品の使用にあたり併用が必要な事項(例:ダイエット食品における食事療法や運動療法)がある場合や特定の条件の者しか効果が得られない場合はその旨を明記した体験談が必要となります。
また、体験談を用いる場合に求められる表示方法としては、商品の効果性能等に関して事業者が行った調査における➀被験者の数及びその属性②そのうち体験談と同じような効果性能が得られた者が占める割合③体験談と同じような効果性能が得られなかった者が占める割合を明瞭に表示すべきとしています。
3 グロース法律事務所の広告審査
グロース法律事務所では、企業広告における審査のご相談もお受けしております。企業広告に関連したご相談がある場合は一度お問い合わせください。
グロース法律事務によくご相談いただく内容
・自社商品の広告が景品表示法に違反していないかチェックをしたい
・自社商品の効果効能を示す広告を行う際に、どのような根拠資料を集めたらよいのかわからない
・自社製品の販売におまけをつけて販売したいが景品表示法上可能か知りたい
・ソーシャルゲームの開発にあたりポイントの付与が景品にあたるか知りたい
・自社の広告制作チームに景品表示法の知識を教えて欲しい
景表法分野に関するグロース法律事務所の提供サービスのご紹介と費用
広告は継続的に更新して行うものであるものであり、企業の事業戦略とも密接に関わることから、継続的な審査が可能となる顧問契約を推奨しております。
顧問契約プランについてはこちらをご参考ください。
顧問先様以外の広告審査のスポット受任における費用は以下のとおりです。
①広告審査について
〇広告審査(不当表示該当性)アドバイス
顧問先様以外は1時間あたり4万1800円
実際の広告(または広告案)を拝見し、文言の内容・大きさ・位置、写真やイラスト等の文言以外の表現の内容・位置について審査し、アドバイスいたします。
〇広告審査(不実証広告規制対応)アドバイス
顧問先様以外は1時間あたり4万1800円
実際の広告(または広告案)を拝見し、表示する効能・効果などについて、合理的な根拠を示す資料と足りうるか審査し、アドバイスいたします。
〇景品類の制限に関する調査
顧問先様以外は1時間あたり4万1800円
実際の景品類の提供案について、景品類の提供に関する事項の制限・禁止に該当するか否か、該当する場合にはいかなる方法によるべきかなどを審査し、アドバイスいたします。
②広告審査社内体制の構築
〇従業員教育(出張セミナー・勉強会)
7万7000円~/1回
ご要望に合わせ、出張セミナー・勉強会を開催し、各社に合った景品表示法に関する教育を実施いたします。
〇社内広告審査体制の構築(問題事例の提供・マニュアルの作成)
22万円~
社内で広告審査体制(部門)を設置する場合の組織体制アドバイス・審査マニュアルの作成・問題事例の提供等を行います。
グロース法律事務所への問い合わせ
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