景表法における優良誤認事案において「違反」とされた表示について

 

1 はじめに

事業者が景品表示法第5条に定める優良誤認表示または有利誤認表示を行っていた場合の処分である、「措置命令」と不当表示を行っていたものの売上等に応じて課徴金の納付を命じる「課徴金納付命令」について、その制度についての説明は「不当表示等が認定された場合の措置と手続ページにて解説しております。

本稿では、多額の課徴金命令が命じられた2つの実際の事案において、どのような表示が景品表示法違反(優良誤認)と判断されたのかをご紹介し、広告表示において気を付けるべき点を解説いたします。

 

2 大幸薬品株式会社「クレベリン」に対する課徴金命令の事例

本事例は、大幸薬品株式会社が販売していた「クレベリン」との商品について、商品パッケージに、「空間に浮遊するウイルス・菌・ニオイを除去」、「用途 空間のウイルス除去・除菌・消臭にご使用いただけます。」と記載されていた事例において、当該効果につき、消費者庁から景品表示法第7条第2項に基づき当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求められたところ、同社から資料が提出されましたが、当該資料はいずれも、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものであるとは認められないとして課徴金命令が発せられたものです。

 

 

課徴金額は約6億円というものでした。

 

 

本件では、大幸薬品株式会社は空間のウイルス・菌・ニオイの除去について実験を行っていないわけではありませんでした。密閉された実験室において、クレベリンがこれらについて効果があることは示されていました。

しかし、商品パッケージの表示は、一般消費者からすると、クレベリンは実生活上の空間においてこれらの効果があると感じさせるようなものでした。実生活上の空間は、室内に人間がいることやまた当該空間も密閉ではないことを前提としなければなりません。

 

 

会社が行った実験は、これらの実生活上の空間で行ったものではなかったことから、表示の効果を示す資料の提出がないと判断されてしまったものです。これによって表示の訂正が求められた(措置命令)うえに、6億円もの課徴金が課されてしまったというものです。

この事案からは、広告等により商品の効果等を示す表示を行う場合は、当該表示内容に応じた具体的条件下における実験や実証が必要であるということです。表示と異なった条件下における実験等の資料では、根拠が否定されるため、表示を行う前に、本当に当該表示の状況下における根拠があるかについて、慎重に検討する必要があります。

 

3 メルセデスベンツに対する課徴金命令について

メルセデスベンツは車両販売における「データインフォメーション」との冊子等において(車両の性能や装備について説明がなされているもの)、優良誤認表示があったとして、12億3000万円もの課徴金命令が発せられました。

 

 

当該事案にて問題となった表示はいくつかあります。そのうちの一つは、車両の「標準装備」との欄に「ダイレクトステアリング」と表示されており、この標記に基づけば当該車両にダイレクトステアリングが標準装備されていると認識されますが、実際はダイレクトステアリングは標準装備されていなかったというものです。この表示に関しては、実際の内容と表示が明らかに異なっており、優良誤認表示であることに異論はないと思われます。

 

 

上記表示とは異なり一応冊子上では実際の内容と合致しているにもかかわらず、違反とされた表示があります。それは、「標準装備」欄に「アクティブ ディスタンスアシスト・ディストロニック(自動再発進機能付*1)」と表示されていたものの、カッコ内で記載されている自動再発進機能は、オプションである「ナビゲーシ ョンパッケージ」 と称するパッケージオプションを別途装備しなければ、機能しないものであったものです。有料であるパッケージオプションを別途装備しなければ機能しないとすれば、そのような機能は標準装備とはいえませんので明らかに優良誤認表示とも思えます。

しかし、上記表示については、自動再発進機能付との表示に「*1」が小さなポイントで付されており、「標準装備」が記載されているページとは異なる冊子の最終ページに「ナビゲーションパッケージ(パッケージオプション)を同時装着した場合は、アクティブディスタンスアシスト・ディストロニックに「自動再発進機能」が追加装備されます。」との表示がなされていました。よって、冊子全体を読めば自動再発進機能が追加装備であり標準装備でないことは示されているといえるものでした。

 

 

しかし、それであれば標準装備欄に「自動再発進機能」を表示せず、追加装備として別の欄に表示すべきでした。標準装備欄に「自動再発進機能」と明記されている以上、一般消費者としては「自動再発進機能」は標準装備であると認識するため、同じ冊子の末尾に打消しの表示(自動再発進機能が標準装備ではなく追加装備であること)が示されていても、意味をなさないと判断されたと思われます。

 

 

このように、優良誤認表示であるか否かは、実質的に一般消費者が当該表示からどのような認識を持つのかということが一つの判断基準となります。よって、センセーショナルな表示を掲載したうえで、※等による注意標記を行った場合において、※に実際の内容と合致することが記載されていても、当該表示が一般人に実際のものよりも著しく優良であることを示す表示であれば、課徴金の対象となる場合があることに注意が必要です。

 

グロース法律事務によくご相談いただく内容

・自社商品の広告が景品表示法に違反していないかチェックをしたい

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〇広告審査(不実証広告規制対応)アドバイス

顧問先様以外は1時間あたり4万1800円

実際の広告(または広告案)を拝見し、表示する効能・効果などについて、合理的な根拠を示す資料と足りうるか審査し、アドバイスいたします。

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顧問先様以外は1時間あたり4万1800円

実際の景品類の提供案について、景品類の提供に関する事項の制限・禁止に該当するか否か、該当する場合にはいかなる方法によるべきかなどを審査し、アドバイスいたします。

②広告審査社内体制の構築

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7万7000円~/1回

ご要望に合わせ、出張セミナー・勉強会を開催し、各社に合った景品表示法に関する教育を実施いたします。

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