事業主が検討すべき広告表示に関連する法規制

事業主の営業活動には広告を行うことが切り離せませんが、広告表示については様々な法律により規制があり、自らが行う広告について、これらの規制対象ではないかを検討する必要があります。本稿では事業主が検討すべき広告表示に関連する法規制を概説いたします。

 

1 不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)

景品表示法は広く一般消費者の利益保護を目的として広告表示に関する規制を規定している法律です。規制対象となる商品・サービスに制限はなく、広く一般的に適用されます。

景品表示法における広告規制は、「商品またはサービスの品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示す表示または事実に相違して他の事業者にかかるものよりも著しく優良であることを示す」表示である「優良誤認表示」規制と、「商品またはサービスの価格その他取引条件について実際のものまたは他の事業者にかかるものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される」表示である「有利誤認表示」規制と、「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」を「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示であって、一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるもの(いわゆるステルスマーケティング規制)」が該当します。

 

なお、優良誤認表示においては、消費者庁から表示(広告)の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求められた場合には15日以内にこれを提出する必要があり、期間内に提出することができなければ、当該表示(広告)は優良誤認表示とみなされることに注意が必要です(不実証広告規制)。

 

また、下記の6種類の表示については、指定告示として商品または役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあるものとして、規制が行われているため、自社の扱う商品・サービスが下記の類型に該当する場合は検討が必要です。

 

  ・無果汁の清涼飲料水等についての表示

  ・商品の原産国に関する不当な表示

  ・消費者信用の融資費用に関する不当な表示

  ・不動産のおとり広告に関する表示

  ・おとり広告に関する表示

  ・有料老人ホームに関する不当な表示

 

2 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)

薬機法における広告規制は、薬機法66条から68条までに規定されています。

同法66条第1項は「誇大広告等」を規制するものとして、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならないと規定され、医師などが効能又は性能について保証したものと誤解されるおそれがある記事を広告・記述・流布することも規制に該当するとされています(同条2項)。

誇大広告等規制に関する実際の運用や基準については厚生労働省が「医薬品等適正広告基準」「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項について」にて示されています。また、医療用医薬品の販売については「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」に考え方が示されています。

 

同法68条は承認前の医薬品の名称・製造方法・効能・効果又は性能について広告することを禁止する規定です。海外で販売されている医薬品を輸入代行する場合に、輸入代行業者自身の広告を行うことは可能ですが、輸入する医薬品が日本国内で承認を受けていないものである場合は、当該医薬品自体の広告を行うことはできないことに注意が必要です。未承認薬に関する情報提供については「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」が示されており、未承認薬を取り扱う場合には確認が必須です。

 

3 医療法

医療機関が行う広告は、原則として医療法6条の5第3項において定められている事項以外の広告を行うことはできません。広告が可能とされている事項は原則として病院名や所在地連絡先・診療科名・診療時間・法令の規定に基づき指定を受けた病院である旨・入院設備の有無・医師看護師等の人数・予防接種健康診断の実施等に限られます。

ただし、以下の要件を満たす場合には上記以外の事項についても広告が可能となります。もちろんこの場合でも虚偽の広告や誇大広告を行ってはならないことは当然です。

 

①医療に関する適切な選択に資する情報であって患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告

②表示される情報の内容について、患者等が容易に問い合わせることができるよう問い合わせ先を記載することその他の方法により明示すること

③自由診療に係る通常必要とされる治療等の内容、費用等に関する事項についての情報提供

④自由診療にかかる治療等にかかる主なリスク、副作用等に関する事項

 

4 健康増進法

食品として販売するものに関する広告規制を定めています。食品として販売に供する物に関して、健康保持増進効果等について、著しく事実に相違する、又は著しく人を誤認させるような表示をしてはならないと規定されています(65条)。

「健康保持増進効果等」とは、健康の保持増進の効果のほか、含有する食品又は成分の量、特定の食品又は成分を含有する旨、熱量(カロリー)、人の身体を美化し魅力を増し容ぼうを変え又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つことに資する効果とされています。

 

5 特定商取引に関する法律(特定商取引法)

特定商取引法では、通信販売・連鎖販売取引・特定継続的役務提供・業務提携誘引販売の4つの取引類型にて虚偽誇大広告の禁止が規定されています。

ECサイトの運営については通信販売の規制対象となります。通信販売においては特定商取引法に基づき以下の事項について表示することが求められます。

 

 ①販売価格(送料が必要な場合は送料も含む)

  ②代金(対価)の支払時期及び支払方法

  ③商品の引渡時期、権利の移転時期、役務の提供時期

  ④契約に係る申込みの期間に関する定めがあるときはその旨及びその内容

  ⑤商品若しくは特定権利の売買契約又は役務提供契約の申込みの撤回又は解除に関する事項

  ⑥販売価格、送料等以外に購入者等が負担すべき金銭があるときには、その内容及びその額

  ⑦引き渡された商品が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合に、販売業者の責任についての定めがあるときには、その内容

  ⑧事業者の氏名(名称)、住所、電話番号

  ⑨事業者が法人であって、電子情報処理組織を使用する方法により広告をする場合には、当該販売業者等の代表者又は通信販売に関する業務の責任者の氏名

  ⑩ソフトウェアに係る取引である場合には、そのソフトウェアの動作環境

 

また、その他の規制として、承諾を得ない電子メールやファックスによる広告は禁止されています。

 

 

以上のとおり、事業として行う広告については景品表示法の他、様々な法規制が課されており、その違反には公表や課徴金命令などが課される場合もあります。広告に関する違反について消費者の拒否反応は高く、会社の信頼を大きく損ないます。

グロース法律事務所では、景品表示法を始めとした広告審査サービスを提供していますので、自社広告についてリーガルチェックが必要な場合はお問い合わせください。

The following two tabs change content below.
徳田 聖也

徳田 聖也

德田聖也 京都府出身・立命館大学法科大学院修了。弁護士登録以来、相続、労務、倒産処理、企業間交渉など個人・企業に関する幅広い案件を経験。「真の解決」のためには、困難な事案であっても「法的には無理です。」とあきらめてしまうのではなく、何か方法はないか最後まで尽力する姿勢を貫く。

「事業主が検討すべき広告表示に関連する法規制」の関連記事はこちら

現在、初回のご相談は、ご来所いただける方に限り無料とさせていただいております現在、初回のご相談は、ご来所いただける方に限り無料とさせていただいております
  • サービスのご紹介
  • 二つの理由
  • 顧問契約活用事例
  • 顧問先の声

グロース法律事務所が
取り扱っている業務

新着情報

 TOP