企業に求められるコンプライアンスと従業員研修
1 企業に求められるコンプライアンスとは
企業活動におけるコンプライアンスが重視されるようになり久しいですが、コンプライアンス=法令遵守ではありません。法律に違反していなくても社会的規範や企業倫理に反する行動を行った場合、現在では社会の風潮として許されず、いわゆる炎上を招き企業の社会的信用が失墜してしまいます。
すなわちコンプライアンスとは法律を含めた「社会的規範(社会的道義観念)」と考えるべきで、日々コンプライアンスの意識をアップデートする必要があります。昔ならば「みんなやっている」「この業界では当たり前に行われている」という理由で見過ごされてきたものや悪しき慣習にとらわれることも許されません。
企業は社会の一員であり、従業員・取引先・消費者、債権者、株主、関連会社、地域住民・行政など様々な人との関係で成り立っています。企業にはこれら企業を取り巻く主体の社会的な期待と信頼があり、その期待と信頼を裏切ることが社会的信用の失墜につながります。
コンプライアンスの遵守は会社ぐるみの不正が許されないことは当然のこと、一従業員や一部署の不正が会社に影響を及ぼすこともあり、経営者や管理者だけではなく社内全体でコンプライアンス遵守に取り組む必要があります。
2 コンプライアンス遵守における従業員研修の重要性
上述のとおり、コンプライアンス遵守は社内全体で取り組む必要があります。社内の大半がコンプライアンス遵守の意識が高い場合でも、一部の従業員や一部の部署がコンプライアンス遵守意識が低く、コンプライアンス違反を行った場合は、会社全体の信頼が失墜し、ひいては会社の存続自体が脅かされる場合もあります。
会社不祥事事件として有名なダスキン(ミスタードーナツ)の無許可添加物混入事件や雪印食品の産地偽装事件も、実際に不正を行ったのは一部の取締役や一部署でしたが、会社全体の信頼が失墜し、巨額な損失や会社の解散に追い込まれました。また、「バイトテロ」として社会問題にもなった複数の事案も現場の一従業員(アルバイト・パートを含む)の行動が企業全体の信用を失墜させます。
このようにコンプライアンスの遵守は全従業員に徹底させる必要があり、そのためにはコンプライアンスに関する定期的な従業員研修が効果的です。特に新入社員が入社した際にはコンプライアンス遵守の重要性を理解させるために必須の研修と言えます。コンプライアンス遵守については、OJTで学ぶものではなく、入社当初から正確に理解する必要があります。当該研修は決して経営層のみに必要なものではなく、従業員全体に行うことが必要です。
3 ハラスメント防止の必要性
また、コンプライアンス遵守は企業の対外的なものにとどまらず、従業員間など対内的にも実行されなければなりません。対内的なコンプライアンス遵守についても様々なものが挙げられますが、代表的には各種ハラスメント対策を講じる必要があります。
パワーハラスメント・セクシャルハラスメント・妊娠出産に関するハラスメント(マタニティハラスメント)に代表されるハラスメントについては、企業に雇用管理上講ずべき措置についての指針が定められており、企業は当該指針を遵守する必要があるとともに、ハラスメントの発生を予防するため、ハラスメントに関する従業員教育を行うことが効果的です。
また、このような従業員教育は一度きりで行うより、定期的に行うことにより予防効果を発揮することができます。
よって、コンプライアンス研修の一部としてハラスメントに関する従業員研修を定期的に行うことが必要です。
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