労働審判申立書を受け取った方へ
※労働審判とは、労働審判法に基づき個々の労働者と事業主の間の個別の労働関係紛争を解決するために設けられた手続きです。労働審判官(裁判官)1名と労働関係に関する専門的な知識経験を有する労働審判員2名(労働者側・使用者側それぞれ1名)によって組織された労働審判委員会が審理し、事案の解決を図ります。
労働審判で出された結論(審判)は、適法な異議がなければ裁判上の和解と同一の効力を有し、審判に基づき差押等の強制執行が可能になります。
通常の裁判とは異なり、原則3回以内期日で審理され、期日において口頭での審理が予定されていることから、事前に詳細な準備が必要な手続きです。
Contents
1.まずは労働審判申立書の確認を
労働審判申立書が届いたということはあなたの会社を相手方として裁判所に労働審判が申し立てられたということです。労働審判申立書の内容を見て、間違いだらけのものだと判断しても、決して無視しないようにしてください。何らの反論をしないまま、これを放置してしまうと、あなたの会社がこれを争わないものとして、申立書どおりの審判が出てしまいます。従って、労働審判申立書が届いたら必ず反論しなければなりません。
2.労働審判期日の確認
労働審判申立書が届いた場合、必ず第1回期日が指定されたうえで、呼出状が同封されています。また、第1回期日の1週間から2週間前を期限として、申立書に対するあなたの会社の言い分を「答弁書」として提出することを求められます。
労働審判の場合、第1回期日までに詳細な反論を記載した答弁書やその答弁書の内容を基礎づける証拠を提出できるか否かが審判の結果を大きく左右します。従って、弁護士に依頼する場合も事前に詳細な打ち合わせや準備が必要になります。
労働審判申立書が届いた場合は、できるだけ早く内容を確認し、第1回期日を確認したうえで、速やかに弁護士にご相談ください。
3.弁護士に依頼する
労働審判は弁護士に依頼することなく、ご自身で対応されることも可能ですが、通常の訴訟と比べても、反論までの時間が限られており、かつ短期間で綿密な準備が必要になります。また、労働審判期日では労働審判官や審判員からの質問に口頭で答えなければならず、より専門性の高い手続きであるといえます。従って、内容次第ではありますが、弁護士に依頼されることをお勧めいたします。
弁護士に依頼される場合は、相談時に労働審判申立書や証拠書類をご持参いただくことはもちろんのこと、申立書に記載された内容に関する反論のメモや雇用契約書や賃金台帳、タイムカードなど関連する基本的な資料をご持参いただくとスムーズに打ち合わせが可能になります。もちろん事案によってご持参いただく資料は異なりますので、電話でのご相談の際に、どのような資料が必要かは弁護士にお尋ねください。
労働審判申立書に関するよくある質問
Q 弁護士に依頼したら、期日に会社関係者は出席しなくても良いですか?
A 労働審判期日では、事前に提出された申立書と答弁書に基づいて、期日において審判官や審判員から紛争を取り巻く状況などについて口頭で詳細に説明を求められます。従って、紛争内容をよく知る当事者については期日へのご同行をお願いすることが多くあります。また、労働審判期日において調停の席が設けられ和解の提案がなされることも多くありますので、可能な限り会社関係者のご出席をお願いしております。
Q いつまでに弁護士に相談に行く必要がありますか。
A 労働審判については、できるだけ早い段階でご相談いただくに越したことはありません。事案にもよりますが、最低でも答弁書提出期限の1週間前までにはご相談ください。
労働審判の準備期間が必要なことはもちろんですが、労働審判の第1回期日には弁護士が出席して、審判官及び審判員からの質問に回答する必要がありますので、当日に弁護士が出席できなければなりません。弁護士の予定確保のためにもできるだけ早い段階からご相談ください。
Q 弁護士以外に代理人になってもらうことはできないのですか。
A 労働審判は、法令で認められたものを除き原則として弁護士のみが代理人として労働審判に出席することができます。顧問の社会保険労務士の先生がおられる場合などは、打ち合わせなどで連携させていただきますのでご安心ください。
Q 弁護士費用を教えてください。
A ホームページに「弁護士費用」を掲載しております。個別の事案ごとに変動がありますので、ご参考いただいたうえ、遠慮なく直接ご相談ください。
Q 労働局からのあっせんの通知が届いたのですが違う制度なのでしょうか
A 労働局の個別労働紛争解決制度の一つである紛争調整委員会によるあっせんは、労働審判とは全く異なる制度であり、裁判所が関与することもなく、強制力もありません。従って無視したとしても不利な裁定がなされることはありません。但し、あっせんに応じることで労働者との紛争を最小限にとどめることも可能な場合もありますので、一度弁護士にご相談ください。
徳田 聖也
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