介護事業所の個人情報の取り扱いについて

介護事業所は利用者・入所者の個人情報を取り扱うことから個人情報保護法の規定による責務を遵守しなければなりません。特に、介護関係事業者は多数の利用者やその家族について他人が容易には知りえないような個人情報を詳細に知りうる立場にあり、特に個人情報の適正な取り扱いが求められる分野と考えられています。

そこで厚生労働省は「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取り扱いのためのガイドライン」及び「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取り扱いのためのガイダンス」を公表しており、介護関係事業者が個人情報保護において遵守すべき事項について具体的に示しています。本稿ではこのガイダンスで具体的に示されているものについていくつかご紹介いたします。

なお、ガイドライン及びガイダンスは厚生労働省のHPでも公開されていますのでぜひご確認ください。

 

個人情報の具体例

個人情報保護法における個人情報とは、「生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日、その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの」のことを指します。介護事業所における具体例としては以下のようなものが挙げられています。

ケアプラン、介護サービス提供にかかる計画、提供したサービス内容等の記録、事故の状況等の記録など。

よって、これらの情報を取得する際は個人情報保護法の規定に則る必要があります。

 

要配慮個人情報の具体例

個人情報保護法では、本人の人種・信条・社会的身分・病歴・犯罪の経歴・犯罪により害を被った事実など不当な差別や偏見その他の不利益が生じないように特に取扱に配慮を要する情報を「要配慮個人情報」と定めて厳格な取り扱いを求めています(第三者の提供には必ず本人の同意が必要など)。

介護事業所における具体例としては以下のようなものが挙げられています。

介護関係記録に記載された病歴、診療や調剤の過程で、患者の身体状況、病状、治療等について、介護従事者が知り得た診療情報や調剤情報、健康診断の結果及び保健指導の内容、障害(身体障害、知的障害、精神障害等)の事実、犯罪により害を被った事実等。

これらに記載された情報については、特に取り扱いに気を付けなければならないことは事業所内にて徹底しなければなりません。

 

利用目的の特定及び制限

個人情報取扱業者は個人情報利用の目的を特定し、原則としてあらかじめ本人の同意を得ない限り目的の範囲を超えて個人情報を取り扱ってはなりません(個人情報保護法15条・16条)。

そして利用目的はあらかじめ公表するか本人に通知する必要があります(個人情報保護法18条)。

介護事業所において通常想定される利用目的については、医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取り扱いのためのガイダンスにおいて以下のようにまとめられています。

 

【介護サービスの利用者への介護の提供に必要な利用目的】

〔介護関係事業者の内部での利用に係る事例〕

 ・当該事業者が介護サービスの利用者等に提供する介護サービス

 ・介護保険事務

 ・介護サービスの利用者に係る事業所等の管理運営業務のうち、

  入退所等の管理

  会計・経理

  事故等の報告

  当該利用者の介護サービスの向上

〔他の事業者等への情報提供を伴う事例〕

 ・当該事業者等が利用者等に提供する介護サービスのうち、

当該利用者に居宅サービスを提供する他の居宅サービス事業者や居宅介護支援事業所等の連携(サービス担当者会議等)、照会への回答

その他の業務委託

家族等への心身の状況説明

 ・介護保険事務のうち、

  保険事務の委託

  審査支払機関へのレセプトの提出

  審査支払機関又は保険者からの照会への回答

・損害賠償保険などに係る保険会社等への相談又は届出等

【上記以外の利用目的】

〔介護関係事業者の内部での利用に係る事例〕

 ・介護関係事業者の管理運営業務のうち、

   介護サービスや業務の維持・改善のための基礎資料

   介護保険施設等において行われる学生の実習への協力

 

以上の目的のうち、事業所の運営に必要なものを特定して掲示するなど公表しておくことが必要でしょう。

 

Q&A事例集の活用を

この他にも取得した情報の安全な管理や情報の適切な取得、第三者への情報の提供の制限などについて、ガイダンスでは介護事業所における具体例が示されています。また、平成29年5月30日には医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取り扱いのためのガイダンスに関するQ&A(事例集)が公表されており、個人情報利用に関する具体的事例も紹介されており、ガイダンスと併せて大変参考になります。

 

グロース法律事務所がお手伝いできること

個人情報保護法の遵守は事業所として当然求められるものであり、個人情報を不適切に取り扱った場合は罰則や行政処分が科せられる可能性があると共に、権利を侵害された者から民事上の賠償を求められる可能性もあります。また、事業所の社会的信頼も損なうことになります。

グロース法律事務所では、介護関係事業者における個人情報の取り扱いに関するアドバイスも行っておりますので、お気軽にご相談ください。

 

グロース法律事務所によくご相談をいただく内容

・利用者さんとのトラブル(クレーム・暴言・暴力・ハラスメント)についてどのように対処すればよいかアドバイスが欲しい

・介護事故が発生したことからその対応(初動対応・証拠の確保・本人家族対応)についてアドバイスが欲しい

・行政対応(実地検査・監査・聴聞)についてアドバイスが欲しい

介護分野に関するグロース法律事務所の提供サービスのご紹介と費用

〇利用者・家族対応

5万5000円~

利用者やご家族との紛争対応についてアドバイスいたします。

〇利用者・家族との交渉

11万円~

利用者やご家族との紛争について、弁護士が窓口となり交渉いたします。

〇介護事故対応に対するアドバイス

5万5000円~。代理人として実施する場合は11万円~

介護事故発生後、紛争に至った場合の賠償交渉については保険会社代理人の対応となることが多いですが、紛争に至る前の交渉・初動対応・証拠の確保などについてアドバイスいたします。代理人として交渉等を行うことも可能です。

〇介護事故予防体制の構築

22万円~

介護現場での事故例や対処例などを基に、各介護事業所に応じた事故予防体制の構築をアドバイス・実施いたします。

研修教育・介護事故マニュアルの作成、運用方法のアドバイスなどを実施いたします。

〇行政対応

11万円~。代理人として実施する場合は22万円~

行政への対応が必要となった場合にアドバイスを行います。代理人として立会いや交渉等を行うことも可能です。

グロース法律事務所への問い合わせ

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徳田 聖也

徳田 聖也

德田聖也 京都府出身・立命館大学法科大学院修了。弁護士登録以来、相続、労務、倒産処理、企業間交渉など個人・企業に関する幅広い案件を経験。「真の解決」のためには、困難な事案であっても「法的には無理です。」とあきらめてしまうのではなく、何か方法はないか最後まで尽力する姿勢を貫く。

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