不公正な取引方法「再販売価格の拘束」について弁護士が解説

 

「カップヌードル」などを扱う小売業者に対し、店頭での販売価格を全国一律で同額に引き上げることを強要した疑いがあるとして、公正取引委員会が、食品大手「日清食品」に独占禁止法に基づき、警告の行政指導を行う方針を固めたとの報道がなされました。公正取引委員会は、同社の行為が独禁法(条94号)で禁じる「再販売価格の拘束」に当たるおそれがあると判断したものです。

 

1 「再販売価格の拘束」とは

メーカーが指定した価格で販売しない小売業者等に対して、卸価格を高くしたり、出荷を停止したりして、小売業者等に指定した価格を守らせることを「再販売価格の拘束」といいます

独占禁止法は、競争の機能を妨げる行為を禁止する法律です。事業者が市場の状況に応じて自己の販売価格を自主的に決定することは、事業者の事業活動において最も基本的な事項ですが、再販売価格の拘束が行われた場合、これによって事業者間の競争が停止され、ひいては消費者は、価格によって販売店を選べなくなるばかりか、本来ならば安く買えたはずの商品を高く買わなければならなくなり、消費者はメリットを奪われることになります。

そこで、このような行為は原則として不公正な取引方法として違法とされているのです。

 

もっとも「希望小売価格」を示すこと自体は、原則として問題ありません。但し、原則というのは、流通業者に対し単なる「参考」として示されているものである限りは、それ自体は問題となるものではないという意味です。

しかし、参考価格として単に通知するだけにとどまらず、その価格を守らせるなど、事業者が流通業者の販売価格を拘束する場合には、「再販売価格の拘束」として、違法となります。

 

2 排除措置命令等

公正取引委員会は、一般から提供された情報、自ら探知した事実等を検討し、独占禁止法の禁止規定に違反する事実があると考えるに至ったときは、独占禁止法違反被疑事件として必要な審査を行っています。

違反行為をした企業等に、速やかにその行為をやめ、市場における競争を回復させるのに必要な措置を命じる場合、この行政処分を「排除措置命令」と呼んでいます。

また、カルテル・入札談合、私的独占及び一定の不公正な取引方法を行った企業等に課徴金を国庫に納めるように命じることがあります。この行政処分を「課徴金納付命令」といいます。

以上のほか、法的措置を採るに足る証拠が得られなかった場合であっても、独占禁止法違反の疑いがあるときは、関係事業者等に対して警告を行い、是正措置を採るよう指導していますし、違反行為の存在を疑うに足る証拠は得られなかったが、独占禁止法違反につながるおそれのある行為がみられた場合には、未然防止を図る観点から注意を行っています。

このうち、法的措置又は警告をしたときは、その旨公表しています。

今般の報道は、「警告」の事案として報道がなされた案件でした。

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谷川安德

谷川安德

谷川安德 大阪府出身。立命館大学大学院法学研究科博士前期課程(民事法専攻)修了。契約審査、労務管理、各種取引の法的リスクの審査等予防法務としての企業法務を中心に業務を行う。分野としては、使用者側の労使案件や、ディベロッパー・工務店側の建築事件、下請取引、事業再生・M&A案件等を多く取り扱う。明確な理由をもって経営者の背中を押すアドバイスを行うことを心掛けるとともに、紛争解決にあたっては、感情的な面も含めた紛争の根源を共有すること、そこにたどり着く過程の努力を惜しまないことをモットーとする。
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