インスタグラム投稿を自社HPに転載したステルスマーケティング規制について弁護士が解説

 

2024年11月13日消費者庁は大正製薬(以下「事業主」といいます。)に対し、自社HPでの表示に対し「ステルスマーケティング行為」を認定して、景品表示法に基づく措置命令を出しました(以下「本件事案」といいます。)。

ステマ規制とは?

ステルスマーケティング規制とは、すなわち、事業者が消費者に広告・宣伝であることを隠して気づかれないように行われる広告宣伝行為のことを指しますが(ステルスマーケティング規制の詳細については別稿「景品表示法におけるステルスマーケティング規制について」をご覧ください。)、2023年10月より新たに景品表示法に基づく規制対象となったものです。

具体的にどのような行為が規制されるのか

事業主が広告表示に関与しておきながら、消費者から当該広告を見た際に、事業主が広告の内容にかかわっているように見えないようなものが規制されます。

例えば、自社の商品やサービスについて、インフルエンサーに報酬や自社商品を無償で提供し、当該商品等に関する良い評価を当該インフルエンサーのSNS等にて発信してもらうことはステルスマーケティング規制の対象となります。ただし、SNSでの発信が消費者にとって「広告」であることが明らかであれば問題ないことから、インフルエンサーへ広告依頼を行う場合は、投稿時に「♯広告」「♯PR」などの表示を行い、広告案件であることが明らかになっていれば問題ありません。

事案の解説

本件事案は、事業主が対象商品を無償でインフルエンサーに提供し、当該インフルエンサーのInstagramで自社商品のPRを依頼したものですが、Instagramの投稿には「♯PR」との表示が行われており、景表法上問題のない表記でした。

しかし、当該Instagramの投稿を自社HPにて転載し、「Instagramで注目上昇中」と記載するにあたり、当該自社HP上でInstagramの投稿について広告であること(「♯PR」など)の記載がなされておらず、当該自社HPのみを見た消費者からは当該Instagramの投稿が広告であることがわからない状況でした。消費者庁は当該HPの表示についてステルスマーケティングであると認定し、措置命令にいたったものです。

 

本件事案は、元のInstagramの投稿については広告である旨が表示されていたものの、HPへの転載時に広告であることが表記されていなかった事案です。このような事案は、事業者がステルスマーケティングを行うことを意図していなくとも、転載時に過失により広告である旨の表記を忘れることでも起こりえます。

従って、本件事案は、広告を行う事業者として、転載時においても「広告」であることを必ず記載することが求められるものとして、注意が必要であることが示された事案として参考になります。

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谷川安德

谷川安德

谷川安德 大阪府出身。立命館大学大学院法学研究科博士前期課程(民事法専攻)修了。契約審査、労務管理、各種取引の法的リスクの審査等予防法務としての企業法務を中心に業務を行う。分野としては、使用者側の労使案件や、ディベロッパー・工務店側の建築事件、下請取引、事業再生・M&A案件等を多く取り扱う。明確な理由をもって経営者の背中を押すアドバイスを行うことを心掛けるとともに、紛争解決にあたっては、感情的な面も含めた紛争の根源を共有すること、そこにたどり着く過程の努力を惜しまないことをモットーとする。
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