株主総会の招集手続について

1 招集通知の意義

株主総会は会社の所有者である株主で構成され、その総意により会社の基本的事項を決定するための最高の意思決定機関です。従って、会社は株主の株主総会への参加の機会を担保するために、原則として株主に招集通知を発出しなければなりません。

株主は、招集通知により株主総会の開催の日時・場所、議題・議案を知り、株主総会に出席するか否か(委任状を提出することも含む)、提案されている議案に賛成するか否かの判断を行います。

従って、株主総会の招集手続は株主総会開催にあたり重要な手続であり、招集権限のある者が会社法に定められた手続を遵守して行う必要があります。

株主総会の招集手続が法令もしくは定款に違反し、または著しく不公正なときは株主総会の決議取消の訴えの対象となります(会社法第831条第1項第1号)。

2 招集権者

(1) 取締役会設置会社の場合

取締役会設置会社における株主総会招集の決定は取締役会が行い、代表取締役が招集を行います(会社法第298条第4項)。

株主総会招集の決定においては

・株主総会の日時及び場所
・株主総会の議題
・株主総会に出席しない株主が書面により議決権を行使できることを認める場合にはその旨
・役員の選任や役員の報酬等の決定、定款の変更、合併など一定の事項が株主総会の目的である事項であるときは当該事項にかかる議案の概要

などを定めなければなりません(会社法第298条第1項、施行規則第63条)。

そして、招集通知に上記の事項を記載しなければなりません(会社法第299条第4項)。

なお、取締役会設置会社における株主総会では、招集通知に記載されていない議題について株主総会で決議することはできません。

 (2) 取締役会非設置会社の場合

取締役非設置会社では、招集の決定は取締役(原則取締役の過半数の決議)が行い、取締役が招集します。決定事項及び招集通知記載事項は取締役設置会社と同様です。

なお、取締役会非設置会社では、招集通知に記載されていない議題も株主総会において審議・決議することは可能です。

 (3) 少数株主による招集手続

総株主の議決権の100分の3以上の議決権を有する株主は(公開会社の場合はこれに加えて引き続き6ヶ月以上議決権を有していることが必要)、株主総会の目的である事項及び招集の理由を示して取締役(取締役設置では代表取締役)に対し株主総会の招集を請求することができます(会社法297条)。

少数株主の招集請求が行われたにもかかわらず、遅滞なく招集手続が行われない場合や請求があった日から8週間以内の日を株主総会の日とする株主総会招集通知が発せられない場合は、招集請求を行った株主は、裁判所の許可を得て株主総会を招集することが可能です(会社法第297条)。

3 招集通知の発送

招集通知は、公開会社においては株主総会の日の2週間前までに、非公開会社の場合は株主総会の日の1週間前までに発しなければなりません(会社法第299条)。

また、取締役会設置会社においては、通知の発送は書面または電磁的方法によることが必要です(会社法第299条第2項2号)。
ただし、株主総会に出席できない株主が書面により議決権を行使できる旨を定めた場合を除き、株主全員の同意がある場合は招集手続を省略することができます(会社法第300条)。

4 開催場所

株主総会の開催場所は定款にてあらかじめ定めることが可能です。株主総会の開催場所について定款で定められた場所でなく、または、株主全員の同意がない場合において、株主総会開催場所が過去に開催した株主総会のいずれの場所とも著しく離れた場所であるときは、その場所を決定した理由を決定しなければなりません(施行規則第63条第2項)。

株主が参加しにくい場所を意図的に選ぶなど、株主の参加を事実上困難とする場合には著しく不公正な招集手続となり株主総会決議の取消原因となります。

5 株主総会招集手続の重要性

上記のとおり、株主総会の開催にあたっては、当日の議事運営だけではなく、招集の決定及び招集通知の発送においても、会社法の定められた手続きに則る必要があります。

招集手続をおろそかにすると、後に株主総会決議の取消事由となり会社が機能不全に陥ることもありえます。

よって、株主総会の開催にあたっては、招集決定時から弁護士にご相談いただくことが重要です。

 

 

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徳田 聖也

徳田 聖也

德田聖也 京都府出身・立命館大学法科大学院修了。弁護士登録以来、相続、労務、倒産処理、企業間交渉など個人・企業に関する幅広い案件を経験。「真の解決」のためには、困難な事案であっても「法的には無理です。」とあきらめてしまうのではなく、何か方法はないか最後まで尽力する姿勢を貫く。

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