株主総会について
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1 株主総会とは
株主総会とは企業の所有者である株主で構成され、その総意により会社の基本的意思を決定するための最高の意思決定機関です。
株主総会は全ての株式会社において必要な機関であり、総会を開いて決議を行うことで会社の意思を決定します。よって、議決権を持つ株主が株主総会に参加する権利を確保するために、法定の手続きに従った開催手続(株主総会への招集手続)を行うことが必要であり、手続の違法は株主総会決議の取消事由となり、株主総会取消訴訟により総会決議が取消となると遡って決議の効果が取り消されます。
また、その手続きに重大な違法があるときは、株主総会が開催されたとして一度は決議された事項について決議不存在(決議がなかったこととなる)となり、対外的に大きな影響を及ぼしますので、株主総会の開催について慎重に進めることが必要です。
2 株主総会の種類
株主総会は招集される時期によって、定時株主総会と臨時株主総会に分けられます。定時株主総会は毎事業年度の終了後一定の時期に招集する必要があり(会社法296条)、会社の計算書類の承認または報告が行われます(会社法438条2項・439条)。
多くの会社が決算期を3月末と定めていることが多く、基準日※との関係で決算日から3ヶ月以内である6月中に株主総会の開催が集中します。
その他、会社にとって必要な時に株主総会は招集権者が招集手続きを経ることによっていつでも開催することが可能であり、定時株主総会以外の株主総会を臨時株主総会と言います。
※基準日とは、株式会社は一定の日を基準日と定めて、その基準日に株主名簿に記載された株主を権利行使できる株主とすることができます(124条1項)。ただし議決権行使のために基準日を定める場合は、基準日株主が行使することができる権利は基準日から3ヶ月以内に行使するものに限られます(124条2項)。よって、3月末を基準日とする場合、当該基準日株主(3月末時点で株主名簿に記載されている株主)が株主総会で議決権を行使するためには3ヶ月以内の6月末日までに株主総会が開催される必要があります。
3 株主総会の権限
(1) 取締役会設置会社と非取締役会設置会社
株式会社は取締役会を設置することも(取締役会設置会社)、また設置しないことも(非取締役会設置会社)ことも可能です。ただし、公開会社(株式の一部でも譲渡制限が設けられていない会社)は必ず取締役会を設置しなければなりません。
取締役設置会社と非取締役会設置会社では株主総会の権限が異なります。取締役会設置会社では株主総会の権限が限定されています。
(2) 非取締役会設置会社における権限
非取締役会設置会社は、株主総会にて株式会社に関する一切の事項について決議することができ(会社法295条1項)、取締役が決定権を有する事項についても株主総会において決定することができます。
つまり、株主自らが業務執行の権限を有しているといえます。
(3) 取締役会設置会社における権限
一方、取締役設置会社では、株主総会は会社法に規定された事項及び定款で定められた事項についてのみ決議することが可能です(会社法295条2項)。取締役会設置会社では、会社の経営については取締役会が担い、業務執行の権限は取締役会に帰属するため、株主総会で決定できる事項にも制限がかけられるのです。
取締役会設置会社における株主総会で会社法上認められる決議事項は、取締役や監査役等の役員の選解任や報酬に関する事項などの「役員に関する事項」、定款の変更や計算書類の承認、資本金の減少、組織変更(合併等)・事業譲渡や解散など「会社の根幹や会社組織に関する事項」、剰余金の分配や自己株の取得など「株主の利益に関する事項」などが挙げられます。
なお、取締役会設置会社における株主総会の権限は会社法に規定されていない事項についても、定款に定めることにより株主総会に帰属させることが可能です。
4 決議の種類
株主総会における決議は、内容に応じて普通決議、特別決議、特殊決議、特別特殊決議に分類できます。その他株主全員の同意が必要な決議もあります。
それぞれの定足数(決議にあたり株主総会に出席しなければならない最低数)及び決議要件は以下のとおりです。
(1)普通決議(会社法309条1項)
最も一般的な決議方法です。定足数として議決権を行使することのできる株主の過半数が出席することが必要であり(定款で定足数の排除・引下げが可能)、決議要件として出席株主の過半数の賛成が必要です。
役員の報酬に関する事項(369条)や剰余金の配当(454条)、取締役の競業取引の承認(356条1項)、取締役の選解任・監査役の選任(329条・339条)などが該当します。ただし、取締役の選解任・監査役の選任については定款で定足数について3分の1までの引下げしか認められません。
(2)特別決議(会社法309条2項)
特に重要な議案について求められる決議であり、定足数として議決権を行使することができる株主の過半数が出席することが必要であり(定款で3分の1まで引下げが可能)、決議要件として出席株主の3分の2以上の賛成が必要です(定款で引上げが可能)。
定款の変更(466条)、合併・会社分割・株式交換・株式移転、事業の全部・重要な一部の譲渡、解散(471条3項)、監査役の解任(339条1項)、資本金の減少(447条1項)、特定株主からの自己株式取得(156条1項、160条1項)などが該当します。
(3)特殊決議(会社法309条3項)・特別特殊決議(同4項)
これらが求められる決議事項は多くありませんが、特別決議とは異なる要件が必要となります。特殊決議は定足数として議決権を行使することができる株主の半数(過半数ではない。定款で引上げ可能)の出席が必要であり、決議要件として出席株主の3分の2以上(定款で引上げ可能)の賛成が必要です。
また、特別特殊決議では、定足数として総株主の半数以上(定款で引上げ可能)の出席が必要とされ、決議要件として総株主の4分の3以上(定款で引上げ可能)の賛成が必要とされます。
5 株主総会の重要性
上述のとおり、株式会社における株主総会は会社の意思決定における必要的な最高の機関であり、会社にとって重要な意思決定がなされる場です。会社の所有者である株主にとっても株主総会への参加や決議行使は重要な権利です。そのため招集手続に始まる各種手続の遵守、議決権行使の要件、株主総会の議事運営、議事録の作成など行わなければならないことは多岐に亘ります。株主総会について会社法にて定められた事項を遵守しない場合、株主総会の決議が取消されたり、無効や不存在となる可能性があり事業に大きな悪影響を及ぼしますので、弁護士などの専門家が関わることは極めて重要であるといえます。
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徳田 聖也
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