withコロナafterコロナを見据えた取締役会運営と遵守すべきルール

 

取締役会の招集のルール

(1) 招集権者

取締役会は、原則として各取締役が招集権を持ちますが、例外として、定款の定めや取締役会の決議をもって、代表取締役等特定の者のみに招集権を認めることも法律上可能です。

もっとも、この場合でも、取締役の職務執行の監視等は、取締役・監査役等に求められるものですから、仮に、定められた招集権者以外の取締役であっても、会議の目的事項を示して、取締役会の招集を請求することが認められています。

(2) 時期・方法等

また、取締役会は、必要に応じて開かれる機関であるため、原則として招集権者が各取締役(監査役がいる場合には監査役にも)に通知をして招集することとなります。しかし、例えば、取締役全員の同意により、定例日を定めるなどした場合には、個別の招集通知を省略して取締役会を開催することも出来ます。これは、取締役会の招集手続が、取締役会に出席する者の出席の確保の機会を担保する趣旨のものであることから、全員が同意すればその機会が確保されていると言えるためです。

この招集通知は、原則として、開催日の1週間前までに、各取締役等に発する必要があります。

もっとも、招集機関は定款で短縮可能で、また、先ほどのとおり、全員の同意があれば、招集手続の省略も可能です。

(3) 株主総会との違い

ここで、株主総会との違いについて少し触れさせていただきますと、取締役会の招集通知は、書面に限らず、メール・口頭・電話などでも可能です。また、議題の記載も不要です。取締役会では、会社経営に拘わることについては、全般にわたり、適時機動的に審議判断することが求められているからです。

 

インターネット回線等を利用した取締役会開催についての留意点

(1) 取締役会の開催場所

会社法施行規則において、取締役会議事録には「取締役会が開催された日時及び場所」を記載する必要があるとされています。この点では、解釈上、「議長の所在する場所」を取締役会開催場所とし、他の取締役等とはインターネット回線等を用いて取締役会を開催することは出来ると解されています。

一方、ネット空間上の完全なバーチャル空間においては、物理的な場所を観念出来ないため、会社法施行規則における「場所」の要件を満たしません。

(2) インターネット回線等を利用した出席方法について

近時、ZOOM等に代表されるWEB会議システムが浸透してきましたが、これらを用いた取締役会の開催は、次のような要件を満たす限りにおいて可能です。

ア 映像と音声を用いる場合

まず、これは1996年段階における法務省の見解において、テレビ会議システムについて、「取締役間の協議と意見の交換が自由にでき、相手方の反応がよく分かるようになっている場合、すなわち、各取締役の音声と画像が即時に他の取締役に伝わり、適時的確な意見表明が互いにできる仕組み」であれば、開催が可能とされています。

イ 音声通話のみの場合

次に、映像のない電話会議システムについても、上記のように適時的確な意見表面が互いにできる仕組みがあれば、開催可能と解されます。この点で、例えば、特定の取締役とのみ電話が通じているという状態では、適時的確な意見表明が互いにできる仕組みとはなっていないと考えられます。

ウ 文字のみの場合(チャット等)

映像と音声以外では、チャット機能も、上記アで示した即時性、双方向性、適時的確性という点について、一応担保されていると言えます。

映像と音声が用いられる場合と異なる点があるとすれば、本人確認の問題が挙げられます。また、常時その場に参加しているかどうかという担保も違う点と言えます。

これらの問題に対する懸念は、特に、法務局に登記申請する際に取締役会の議事録を添付することが求められる場合で顕在化します。

少なくとも、本人確認性や常時その場に参加していたことをどのような手段で確認したのかについては、記録にとどめたうえ、登記申請にあたっては、取締役会開催前に、所轄法務局に事前相談されることをお勧め致します。

 

最後に

近時、株主総会に関しても、コロナ対策として、バーチャル併用型の導入が進みつつあります。株主総会、取締役会ともに、withコロナafterコロナを見据えて、従来そこまで緊急性をもっては考えられていなかった方式が模索されています。決議の瑕疵や、登記申請に問題が生じることのないよう、安易にリモート開催するのではなく、十分な確認のうえで、行っていただきますようご留意ください。

 

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谷川安德

谷川安德

谷川安德 大阪府出身。立命館大学大学院法学研究科博士前期課程(民事法専攻)修了。契約審査、労務管理、各種取引の法的リスクの審査等予防法務としての企業法務を中心に業務を行う。分野としては、使用者側の労使案件や、ディベロッパー・工務店側の建築事件、下請取引、事業再生・M&A案件等を多く取り扱う。明確な理由をもって経営者の背中を押すアドバイスを行うことを心掛けるとともに、紛争解決にあたっては、感情的な面も含めた紛争の根源を共有すること、そこにたどり着く過程の努力を惜しまないことをモットーとする。

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