取締役の解任~相談・検討上の留意点
取締役の解任という場合でも、代表取締役たる取締役を解任しようとするのか、平取締役を解任しようとするのか、また、株式保有比率は取締役支持層との関係でどのような状況あるのか、によって対応すべき内容は様々です。プロセスは一様でも容易でもありませんし、多数派になれなかった場合には、逆に退任に追い込まれるといった事案もありますので、解任理由やプロセス等については、事前にしっかりと検討が必要です。
本稿では主な検討課題について、よくある質問に対応する形で回答致します。
Contents
- Q 代表取締役が他の取締役の意見を聞き入れようとせず、取締役間の経営方針の不一致が長らく続いています。代表取締役の解任の相談については、会社の顧問弁護士に相談して良いのでしょうか?
- Q 代表取締役が他の取締役の意見を聞き入れようとせず、取締役間の経営方針の不一致が長らく続いています。解職・解任のためには手続としてはどのような手続が必要でしょうか?
- Q 株主総会では解任決議が否決されてしまいました。株主総会の開催以外には解任の手段はないのでしょうか?
- Q 任期途中の解任には成功しましたが、任期満了までに得られる報酬が得られなかったとして解任した元取締役から損害賠償請求を主張されています。応じる義務はあるのでしょうか。
- グロース法律事務所によくご相談をいただく内容
- 会社法分野に関するグロース法律事務所の提供サービスのご紹介と費用
- グロース法律事務所への問い合わせ
Q 代表取締役が他の取締役の意見を聞き入れようとせず、取締役間の経営方針の不一致が長らく続いています。代表取締役の解任の相談については、会社の顧問弁護士に相談して良いのでしょうか?
A 会社の顧問弁護士の依頼者は、現代表取締役が代表を務める会社であり、会社の顧問弁護士については、利益相反、守秘義務に関する弁護士職務基本規程上、相談に応じることが出来ない場合がほとんどと考えられます。セカンドオピニオンで相談できる弁護士がいる場合には、その弁護士か、いずれにしても顧問弁護士以外の弁護士に相談することが最終的には必要になるケースが多いと考えられます。
Q 代表取締役が他の取締役の意見を聞き入れようとせず、取締役間の経営方針の不一致が長らく続いています。解職・解任のためには手続としてはどのような手続が必要でしょうか?
A まず、「代表」取締役たる地位を解職することも必要です。解職は取締役会の決議事項(会社法362条2項3号)であり、取締役会の招集が必要ですが、定例の取締役会以外では、代表取締役にみずからの解任の件を議案とする招集を求めることは現実的には不可と考えられます。定例の取締役会において多数派形成のうえで、解職の決議を行う検討が必要と考えられます。
また、職を解かれた代表「取締役」の解任については、当該元代表取締役と合意のうえで取締役を退任してもらうことを模索すべきですが、そのような交渉ができる状況にない場合も多いと思われます。任期満了を待たずに職を解こうとする場合には、株主総会を開催して,解任の決議を行う必要があります。決議は普通決議(会社法309条1項)による解任(但し、定款によって加重されている場合がありますので確認が必要です)が可能で、臨時株主総会の開催による解任も可能です。もっとも、株主の過半数の支持を集めなければ解任決議にまで至らないため、多数派形成も同時に必要です。
Q 株主総会では解任決議が否決されてしまいました。株主総会の開催以外には解任の手段はないのでしょうか?
A 要件は厳格ですが、当該取締役の職務執行に不正または重大な法令・定款違反があったにもかかわらず、株主総会での解任決議が否決されたときは、原則として議決権の3%以上を6カ月前から引き続き保有する株主は、その株主総会から30日以内であれば、会社及び当該取締役を被告とする解任の訴えを裁判所に提起することができます(会社法854条)。この場合には、判決まで時間を要するため、確定判決を得るまでの間に、当該取締役の職務執行停止の仮処分(民事保全法23条2項)を申立てることも検討が必要です。
Q 任期途中の解任には成功しましたが、任期満了までに得られる報酬が得られなかったとして解任した元取締役から損害賠償請求を主張されています。応じる義務はあるのでしょうか。
A 解任に正当な理由がなければ,会社は,当該取締役に対し,解任によって生じた損害を賠償しなければなりません(会社法339条2項)。当該取締役が解任されなければ在任中に得られたであろう役員報酬は認められ得る損害の典型例です。
正当な理由はケースバイケースでの判断が必要ですが、職務遂行上の法令・定款違反行為の有無や程度,心身の故障等が例として挙げられます。
正当な理由の有無の認定は最終的には法的手続での判断となりますが、争いが起こりやすい紛争類型でもあるため、解任しようとする取締役との交渉としては、ある程度任期満了に近い時期において、任期満了までの報酬額を支払うことはやむを得ないとの判断はしたうえで、当該取締役との間で、退任の合意を得るための交渉を行っていくということも先ず検討されるべきプロセスの一つです。
グロース法律事務所によくご相談をいただく内容
・ワンマン経営の代表取締役を解職・解任したい
・私利を図っている会社に損害を与えた取締役に対して損害賠償請求をしたい。
・多数派株主によって株主総会の決議が採決されているが、手続に問題があるのではないか。
会社法分野に関するグロース法律事務所の提供サービスのご紹介と費用
〇代表取締役の解職・解任
・相談、スキーム構築(11~22万円)
・シナリオ構築、役会決議までの継続サポート(55万円)
〇善管注意義務違反を理由とする取締役に対する損害賠償請求
・相談(~11万円、又はタイムチャージ)
・損害賠償請求(11万円~訴額に応じて算定)
〇総会決議の瑕疵等を争う紛争
・相談(~11万円、又はタイムチャージ)
・決議取消しの訴え(55万円~110万円)
*詳細はこちらをご覧ください。
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谷川安德
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