要見直し!身元保証書の取得及び管理上の留意事項~民法改正対応~
Contents
1 身元保証契約とは
身元保証契約とは、入社する被用者が何らかの理由により使用者に何らかの損害を加えた場合に、保証人がその損害賠償義務を負うこと等を内容とする契約です。
一般には、入社時に身元保証書を提出してもらう企業が多いと思いますが、身元保証契約を締結するかどうかは各企業の判断です。
一方、就業規則等において身元保証書の提出を求め、身元保証契約を締結する場合には、身元保証人の保護のために制定されている身元保証に関する法律(昭和8年法第42号)の定めに従わなければなりません。
身元保証に関する法律の中で、意外に管理がなされ切れていない内容は以下の内容です。特に更新(②)や通知(③)について十分な運用管理がなされていない企業が多いと思われます。
① 存続期間
期間の定めのない場合は3年、期間の定めをした場合は最長5年
② 更新
更新は可能。但し、その期間は更新の時より5年を超えることが出来ない。
→自動更新条項は無効
③ 以下の場合には、身元保証人に通知義務があり、身元保証人は将来に向かって契約解除が可能
・被用者に業務上不適任又は不誠実な事実があり、これによって身元保証人の責任が生じるおそれのあることを知ったとき
・被用者の任務又は任地を変更し、これによって身元保証人の責任を加重し又はその監督を困難ならしめるとき
④ 裁判所による損害賠償額の認定
身元保証人の責任は、従業員の監督に関する使用者の過失の有無、身元保証人が保証をするにいたった理由、身元保証人が保証をするときに用いた注意の程度、従業員の担当業務などの変化、その他一切の事情を総合的に勘案して決定されます。
例えば、借金の保証人であれば保証債務額全額について保証責任を負いますが、身元保証人の場合は必ずしも全額について責任が認められるわけではありません。特に使用者にも監督上の問題があったり、事案を放置していたなどの場合、身元保証人の責任は相当額減額ないし免除される場合があります。
2 極度額の定め~民法改正~
この度の民法改正により、個人根保証契約の保証人の責任について、責任の上限が極度額の限度とされることになりました(465条の2)。これは身元保証契約に当てはまるものであり、改正民法施行後(2020年4月1日~)は、身元保証契約を締結する際、身元保証人の賠償責任の上限を定めなければならないこととなりました。
仮に極度額の定めがない場合には、身元保証契約は効力を生じませんので、重要な改正内容です。2020年4月1日以降も従前の書式を使っている企業は早急に見直しのご確認をお願いします。
では、極度額をどのように定めるか、記載するかということですが、これについては解釈に委ねられています。ただ、民法改正で極度額の上限を定めた趣旨は、保証人の予測可能性(賠償義務の範囲等)を担保することにあるため、極度額は保証人の責任が予測することができるものでなければならない一方、予測可能であれば必ずしも具体的な金額(例えば1000万円の範囲という具体的な金額)を定めなければならないものでもありません。
従って、初年度月収の36ヶ月分というような記載であっても、予測可能性は担保されていると考えます。
以上を踏まえた書式については、こちら(身元保証書)を参照下さい。
3 最後に
身元保証書の取得については、各企業においてしっかりと何のために取得するのかを理解しておく必要があります。すなわち、採用時に身元保証書を取得するのは、被用者の行為による損害回避のためという目的もあると思いますが、このような身元保証書を提出してもらってまで入社をした、身元保証人に迷惑を掛けないように責任と自覚をもって働こうというような従業員の責任と自覚を促すような目的もあります。
これらの目的を踏まえ、どのように運用し管理していくかが重要です。入社手続きとして身元保証書提出を求める場合、被用者や身元保証人にその目的をしっかりお伝えいただきたいと思います。
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