個人情報の取扱いを含む場合の業務委託契約書の注意点
Contents
1 はじめに
企業間で業務委託契約を締結する場合において、委託者の有する個人情報を受託者に提供することも多くあります。
個人情報の保護に関する法律(いわゆる個人情報保護法)では、個人情報取扱業者は、個人データの漏えい、滅失又は毀損の防止その他の個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置(安全管理措置) を講じなければなりませんが(法23条)、業務委託契約等に伴い、個人データの取扱いの全部又は一部を受託者に委託する場合は、受託者に対する必要かつ適切な監督を行わなければならないとされています(法25条)。
(個人情報流出と企業の責任についてはこちらのページをご参考ください。)
よって、個人データの取扱いを伴う業務委託契約を締結する際は、受託者が個人情報保護法に則った安全管理措置を講じていることを確認する必要があるとともに、業務委託契約書において、受託者における個人データの取扱状況を委託者が把握することができる規定を盛り込むべきです。
本稿では個人情報の取り扱いを伴う業務委託契約書において記載しておくべき事項について解説いたします。
2 受託者に対し個人情報保護法に基づく安全管理措置を講じることを求める条項
委託者は、受託者の選定にあたり受託者が個人データの取扱いについて個人情報保護法に則った安全管理措置を講じていることを確認する必要があります。そして、その安全管理措置については、少なくとも個人情報保護法が求めている水準をクリアしている必要があります。
従って、
「受託者は、委託者から提供される個人データの取扱いについて、個人情報の保護に関する法律を遵守しなければならず、個人データの漏えい、滅失又は毀損の防止のために必要な安全管理措置を講じなければならない」
との条項を定めておくべきです。
3 個人データの安全管理措置の遵守状況を監督できる旨の条項
上述のとおり、業務委託契約等に伴い、個人データの取扱いの全部又は一部を受託者に委託する場合は、受託者に対する必要かつ適切な監督を行わなければならないとされていることから、受託先に対して具体的に監督ができる旨の条項を置くべきです。
具体的には、
① 委託者は、委託業務の遵守状況、委託業務に係る個人データの安全管理措置等について適宜監査を行うこととし、受託者はこれに応じなければならない。
② 委託者及び受託者は、前項の確認の結果を踏まえ、委託業務に係る個人データの安全管理体制の改善の要否を協議し、改善が必要と判断した場合、受託者は委託者の指示に基づき対応するものとする。
といった条項を定めておくべきです。
4 再委託先にも安全管理措置を求める旨の条項
業務委託契約において、再委託を認める場合には、再委託先が個人データを取り扱うことになりますので、再委託先にも受託者と個人データに関する安全管理措置を講じることを求めると共に、万が一、再委託先にて個人データの漏えい等が発生した場合には、受託者も同等の責任を負う旨を定めておくべきです。
以上、業務委託契約に伴い委託者の有する個人情報を受託者に提供する場合は、委託者自身の安全管理措置の一つとして、上記の条項を契約書内に定める必要があります。また、条項に定めるだけではなく、契約書に定められた措置が講じられているかチェックを行う必要があることは言うまでもありません。
個人情報の漏えい等のトラブルは企業にとって大きなダメージとなりますので、適切に管理を行うためにも、これらが規定されているか、契約書の再チェックが必要です。
徳田 聖也
最新記事 by 徳田 聖也 (全て見る)
- RIZAP株式会社に対する景品表示法に基づく措置命令について - 2024年9月1日
- 匿名掲示板において、インフルエンサーに対する誹謗中傷が複数行われており、投稿者に名誉棄損に基づく損害賠償を行うため、発信者情報開示請求を行った事案 - 2024年8月9日
- 元代表取締役である一人株主から定時株主総会の開催及び計算書類等の閲覧請求を受けた事案 - 2024年8月9日
「個人情報の取扱いを含む場合の業務委託契約書の注意点」の関連記事はこちら
- WEBサイト製作業務委託契約書について
- システム開発委託契約書について
- フリーランス新法が成立しました ~「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」~
- 個人情報の取扱いを含む場合の業務委託契約書の注意点
- 労働契約と業務委託契約の違いと留意点
- 建設工事請負契約締結時の注意点
- 業務委託契約において注意すべき下請法 ~その1 下請法とは何か、下請法違反で契約はどうなる?
- 業務委託契約において注意すべき下請法 ~その2 下請法の規制対象となる事業者、取引内容
- 業務委託契約において注意すべき下請法 ~その3 親事業者の義務
- 業務委託契約において注意すべき下請法 ~その4 親事業者の禁止行為
- 業務委託契約書とは
- 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス新法)対応の業務委託契約について解説
- 雇用契約書・労働条件通知書のポイント
- 顧問契約書/コンサルタント契約書
グロース法律事務所が
取り扱っている業務
新着情報
- 2024.11.12コラム
- 施行されたフリーランス取引適正化法の遵守を
- 2024.10.31コラム
- 労働条件明示義務違反の報道について弁護士が解説
- 2024.10.11セミナー/講演
- 2024年を振り返る社労士勉強会総まとめ 2024.12.12
- 2024.10.02お知らせ
- 滋賀県社会保険労務士会必須研修に登壇いたします(弁護士谷川安德)。
- 2024.09.30コラム
- 副業・兼業解禁と労働時間管理・労災の問題