新型コロナウイルスの感染拡大と債務不履行責任に関する諸問題~企業間取引~
新型コロナウイルスの感染拡大の影響、緊急事態宣言、自粛要請等に伴って、企業間取引においては、
①原材料、資材等が調達できず、その結果、約束していた納品が出来なくなってしまった、損害賠償請求された場合に認められるか
②約束していた請負業務は完了した、あるいは約束していた物品についていつでも納品できる状態にあるが、契約先が今は受領できる状態にないので、納品を待って欲しいといっている、約束していた代金の支払いは請求できるか、保管料はもらえるのか
等の質問が寄せられています。
また、③契約書に「不可抗力」の場合に責任を負わない旨記載されているが、感染症がこれにあたるかどうかまで書いておらず、不可抗力にあたる事例であるのかどうか、といった質問も見られます。
本稿では、こういった企業間取引において生じている①②の問題について解説致します。③については、企業間取引の契約書の稿で解説いたします。
なお、2020年4月1日から債権法分野における改正民法が施行されています。2020年4月1日以降の新規取引については、原則として改正民法が施行されます。また、2020年4月1日以降の取引についても、契約書の記載内容次第で、改正民法が適用されるのかどうかが決まる取引もありますので、ご留意下さい。
本稿でも、差異が生じる場合には、その点に留意して解説致します。
Contents
1 ①について
Q:当社は工業用製品製造機械について、オーダーメイドでその製造を受注しています。しかし、この度の新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、原材料・資材の仕入が出来ない状態が続いています。発注者には、来月末までに納品を約束していますが、とても間に合いません。約束どおり納品出来なかった場合、当社は、損害賠償責任を負うのでしょうか。
(解説)
貴社は、製造を請け負った機械について、納期どおりに完成できず、納品出来ない見込みとのことで、実際、納期どおりに納品出来ない場合(遅れて納品は可能)には、「履行遅滞」の状態となります。
この場合、貴社の責めに帰すべき事由がある場合には、損害賠償責任はあるといわざるを得ません。
問題は、貴社の責め帰すべき事由があるかどうか、ですが、まず貴社が取引先と契約書の取り交わしをしているケースを想定します。
この場合、大抵の契約書では、「不可抗力」による納期遅延については、債務者(この場合貴社)は責任(損害賠償責任)を負わないと規定しています。もっとも、「不可抗力」に、新型コロナウイルスの影響による仕入の遅延、不可等が含まれるかは「不可抗力」の理解の仕方、あるいは契約書の書き方次第となります。この点は別稿で解説致しますが、契約書の記載からも不可抗力に該当すると判断されるケースでは、貴社はお問い合わせのケースでは損害賠償責任を負わないということになります。
契約書の取り交わしがないケースでは、端的に新型コロナウイルスの影響が「不可抗力」に該当するかどうかの判断となりますが、新型コロナウイルスの影響にかかわらず、お問い合わせの原材料等の仕入が滞った場合に製造が遅滞することが常日頃明らかな状況なのであれば、仕入先の依存度等も平時に検討しておくべきとの見解も生じてきますので、注意が必要です。
2 ②について
Q:当社は契約いただいた商品について、納期に納品できる準備が出来たため、契約先に連絡しましたが、契約先からは、新型コロナの影響で検品できる体制になく、また、購入した商品について、客先からキャンセルされたなどとして、当面の間、納品を待って欲しいと言われています。
一方的に納品を行っても良いでしょうか。受領を拒まれた場合には、何らか損害賠償請求は出来ますでしょうか。また、いつまでも受領を拒む債権者には契約を解除することが出来ますでしょうか。
(解説)
一般に、債権者(本件事例では商品を受け取る側)の「受領遅滞」と言われる問題です。
具体的には、帰責事由ある債権者には引取義務があるのか、損害賠償請求出来るのか、契約解除出来るのか、といった問題が実際の訴訟でも争われていました。判例上は、引取義務や損害賠償請求まで認めるケースは極めて例外的です。
改正民法でも、契約の解除や損害賠償請求については特に規定が設けられませんでしたので、契約書に債権者の受領遅滞についての規定が特になければ、契約の解除や、損害賠償請求までは原則認められないものと考えられます(先方が代金の支払いまで怠りこれを原因とする場合は別です)。
もっとも、改正民法においては、受領遅滞に関して一部条文が追加され、債権者が受領を拒んだ場合に、保管にあたっての注意義務を軽減する規定や、保管費用の負担についての規定が新設されました。
改正民法を前提とした場合、保管に要する費用の限度では、お問い合わせの事例でも、債権者の受領遅滞(拒絶)を理由として請求することは可能と判断されるケースがあります。
グロース法律事務所によくご相談をいただく内容
・契約書の作成やチェックをしたい
・多数の契約書について契約審査をお願いしたい。アウトソーシングしたい
・AI契約書レビューサービスを使用しているがそのアウトプットに対してこのまま進めて良いかの最終判断に困り相談したい
・AI契約書レビューサービスに対応していない特殊な規約、難度の高い契約書を確認してほしい
契約書に関するグロース法律事務所の提供サービスのご紹介と費用
〇契約書に関する相談
無料(ご来所いただける方に限ります。遠方や新型コロナウイルスの影響でどうしてもご来所いただけない事情がある方についてはオンラインで無料相談を承りますので遠慮はなくご相談下さい)
〇契約書フォーマット
こちらから無料でダウンロードいただけます
〇作成
定型
費用の目安 業務内容の説明 顧問先様以外の対応の可否
5万5000円から11万円 当事務所で取扱い、ある程度書式化されている契約につき、貴社の取引内容に合わせた契約書を作成します。
非定型
費用の目安 業務内容の説明 顧問先様以外の対応の可否
11万円から22万円 汎用性のない、特殊な契約の契約書を作成します。
〇チェック
内容確認と解説のみ
費用の目安 業務内容の説明 顧問先様以外の対応の可否
1回1万5000円 契約書の有利不利の確認と解説をします。
修正案付き
費用の目安 業務内容の説明 顧問先様以外の対応の可否
1回3万3000円~。契約締結までのサポートの場合は、締結までの修正及び確認につき、5万5000円~ 確認結果について修正案を提示します。
タイムチャージは4万1800円
顧問先様は別途割引があります。
詳細は以下をご覧ください。
グロース法律事務所への問い合わせ
お電話(06-4708-6202)もしくはお問い合わせフォームよりお問い合わせください。
お電話の受付時間は平日9:30~17:30です。また、お問い合わせフォームの受付は24時間受け付けております。初回の法律相談については、ご来所いただける方に限り無料でご相談させていただいております。
※遠方の方はオンライン会議での初回面談も承りますので、お申し付けください。また、新型コロナウイルス感染症の影響でどうしても来所ができないという方につきましても、オンライン会議で初回無料で面談を承りますので、お申し付けください。
谷川安德
最新記事 by 谷川安德 (全て見る)
- 施行されたフリーランス取引適正化法の遵守を - 2024年11月12日
- 労働条件明示義務違反の報道について弁護士が解説 - 2024年10月31日
- 副業・兼業解禁と労働時間管理・労災の問題 - 2024年9月30日
「新型コロナウイルスの感染拡大と債務不履行責任に関する諸問題~企業間取引~」の関連記事はこちら
グロース法律事務所が
取り扱っている業務
新着情報
- 2024.11.12コラム
- 施行されたフリーランス取引適正化法の遵守を
- 2024.10.31コラム
- 労働条件明示義務違反の報道について弁護士が解説
- 2024.10.11セミナー/講演
- 2024年を振り返る社労士勉強会総まとめ 2024.12.12
- 2024.10.02お知らせ
- 滋賀県社会保険労務士会必須研修に登壇いたします(弁護士谷川安德)。
- 2024.09.30コラム
- 副業・兼業解禁と労働時間管理・労災の問題