労働条件明示義務違反の報道について弁護士が解説

 

准教授と労働契約を結ぶ際に労働条件を書面で明示せず、労働時間の管理も怠ったのは労働基準法に違反するなどとして、某大学が令和53月に労働基準監督署から是正勧告を受けていたことが明らかになったとの報道がありました。

 

労働基準法第15条第1項には、「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。」と規定されています。

具体的には、労働基準法施行規則第5条第1項に規定されている以下の事項を明示する必要があります。

また、(1)から(6)((5)のうち、昇給に関する事項を除く。)については、口頭だけではなく、書面の交付により明示しなければなりません。

(1)労働契約の期間に関する事項
(2)期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項
(3)就業の場所及び従業すべき業務に関する事項
(4)始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時点転換に関する事項
(5)賃金(退職手当及び臨時に支払われる賃金等を除く。)の決定、計算及び支払いの方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
(6)退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
(7)退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払いの方法並びに退職手当の支払いの時期に関する事項
(8)臨時に支払われる賃金(退職手当を除く。)、賞与及びこれらに準ずる賃金並びに最低賃金額に関する事項
(9)労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項
(10)安全及び衛生に関する事項
(11)職業訓練に関する事項
(12)災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
(13)表彰及び制裁に関する事項
(14)休職に関する事項

 

但し、(2)については期間の定めのある労働契約であって当該労働契約の期間の満了後に当該労働契約を更新する場合がある者の締結に限り、明示する必要があり、(7)から(14)については、使用者がこれらに関する定めをしない場合においては、明示する必要はありません。

 

書面での交付義務がある内容については、労働者が希望した場合は、FAXやメール等の方法で明示することもできますが、書面として出力できるものに限られるとされています。

 

法学部を含む学術機関においての報道であることからも意外性を感じた方もいらっしゃるかも知れませんが、企業においても大小問わず、書面での明示義務を怠っている例を目にすることがあります。

労働契約書と労働条件通知書の意義の違いも十分に浸透しているとはいえない状況もありますので、この機会に自社の運用を確認いただければと思います。

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谷川安德

谷川安德

谷川安德 大阪府出身。立命館大学大学院法学研究科博士前期課程(民事法専攻)修了。契約審査、労務管理、各種取引の法的リスクの審査等予防法務としての企業法務を中心に業務を行う。分野としては、使用者側の労使案件や、ディベロッパー・工務店側の建築事件、下請取引、事業再生・M&A案件等を多く取り扱う。明確な理由をもって経営者の背中を押すアドバイスを行うことを心掛けるとともに、紛争解決にあたっては、感情的な面も含めた紛争の根源を共有すること、そこにたどり着く過程の努力を惜しまないことをモットーとする。
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