公益通報者保護法による公益通報者の保護規定の改正について

N社の元契約社員が、残業代未払などがあったとして公益通報をした後、人事評価で不利益を受け退職に追い込まれたとして、N社に損害賠償等を求めて提訴したとの報道がなされました。

 

公益通報者保護法では、公益通報者による公益通報が一定の要件を満たした場合に、公益通報者を公益通報を行ったことを理由とした不利益から保護することが規定されていますが、2025年3月4日にこの保護規定の一部を改正することを含む公益通報者保護法の改正案が閣議決定されました。

 

 

公益通報者保護法では、公益通報者が公益通報を行ったことを理由として事業者が当該公益通報者たる労働者を解雇することや不利益な取り扱い(降格・減給・退職金の不支給など)をすることを禁じ、また、公益通報を行ったことにより損害を被った場合でも損害賠償を行うことができないと定められています(公益通報者保護法3条から7条)。

 

しかし、これらの保護の要件について上述のとおり「公益通報を行ったことを理由として」解雇や不利益な取り扱いをした場合とされているため、公益通報を行ったことを理由ではなく他の事由に基づく解雇や懲戒とされた場合に、公益通報者保護法による保護が受けられないリスクが高く、公益通報を行うことが躊躇われることが懸念されていました。

 

そこで、改正法では、公益通報から1年以内に行われた解雇または懲戒については、公益通報をしたことを理由としてされたものと推定するものとしました(2025年改正法3条3項)。この推定規定により、事業主は公益通報から1年以内に解雇または懲戒を行う場合は、解雇または懲戒が公益通報を理由としたものではないことを積極的に主張立証していく必要が生じます。

 

また、労働者の解雇および懲戒が公益通報を理由とする場合、行為者個人には6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金、法人には3,000万円以下の罰金刑が科されることとなりました。

 

 

これらの改正により、公益通報者保護法に違反し通報者に解雇や不利益な取り扱いを行った場合の事業主のリスクは格段に高くなったといえます。よって、公益通報者保護法の趣旨を理解し、たとえ公益通報によって会社に損害が生じたとしても、公益通報者保護法による保護要件を満たしている場合に解雇や不利益な取り扱いを行うことを防止する必要があることを再確認する必要があります。

 

企業としては、改正法に合わせ、社内にて公益通報者保護法の趣旨や制度を周知することが望ましいといえます。

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徳田 聖也

徳田 聖也

京都府出身・立命館大学法科大学院修了。弁護士登録以来、相続、労務、倒産処理、企業間交渉など個人・企業に関する幅広い案件を経験。「真の解決」のためには、困難な事案であっても「法的には無理です。」とあきらめてしまうのではなく、何か方法はないか最後まで尽力する姿勢を貫く。
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