固定残業代制度が無効であったとして、未払賃金の労働審判の申立を受けた事案

(相談)

固定残業代を支払ってきた会社が、元従業員から固定残業代制度が無効であったとして未払賃金請求の労働審判の申立を受けたということで相談がありました。

(対応)

労働契約、就業規則の有無と有る場合には周知されているかどうか、手当型であったことから、どのような名称の手当で、どのような金額設定、制度設計がされているか等詳細のヒアリングを行いました。

固定残業代制度の有効性については、最高裁昭和63714日第一小法廷判決(労判5236頁)以降、直近の最高裁判例(最高裁令和2330日第一小法廷判決・民集743549頁、最高裁令和5310日第二小法廷判決・労判12845頁、最高裁平成30719日第一小法廷判決・集民25977頁、最高裁平成2977日第二小法廷判決・集民25631頁、最高裁平成29228日第三小法廷判決・集民2551頁、最高裁平成2438日第一小法廷判決・集民240121頁、最高裁平成6613日第二小法廷判決・集民172673頁)を考察する必要があり、有効性の要件については、ほぼ整理されたと言えます。

答弁書についても、対価性要件・判別性要件の点について、丁寧に証拠等から説明しました。

必ずしも有利な文言ではない就業規則の規定もありましたし、また他の未払残業代に関する論点もありましたが、第1回の労働審判期日において、予想していた範囲内での応諾可能な金額で和解が成立しました。

固定残業代制度については、議論が成熟しつつあります。雇用契約書の記載、就業規則の記載、運用等今一度見直しいただければと思います。

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谷川安德

谷川安德

谷川安德 大阪府出身。立命館大学大学院法学研究科博士前期課程(民事法専攻)修了。契約審査、労務管理、各種取引の法的リスクの審査等予防法務としての企業法務を中心に業務を行う。分野としては、使用者側の労使案件や、ディベロッパー・工務店側の建築事件、下請取引、事業再生・M&A案件等を多く取り扱う。明確な理由をもって経営者の背中を押すアドバイスを行うことを心掛けるとともに、紛争解決にあたっては、感情的な面も含めた紛争の根源を共有すること、そこにたどり着く過程の努力を惜しまないことをモットーとする。
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