フリーランス新法が成立しました ~「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」~
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1 はじめに
令和5年4月28日、いわゆるフリーランス新法が成立しました。この法律の正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(以下「新法」といいます。)となっていますので、ご留意ください。
新法では、企業などから仕事の発注を受けるフリーランスを「特定受託事業者」と定義し、特定受託事業者を中心に保護の対象にする法律です。公布後、1年6カ月以内に施行されますので、とりわけ発注側企業においては契約書等の整備を進めておく必要がありますし、フリーランス側においても、可能な限り自ら立場を護る契約書等を準備しておき、施行に備えていただきたいと思います。
2 背景
創業の一形態として、従業員を雇わない、フリーランスの形態で事業活動を行なっている方は、既に462 万人以上に増加していると報告されています。
企業側と取引を行なうフリーランスについては、報酬の支払遅延や一方的な仕事内容の変更といったトラブル例が多く、特定の発注者(依頼者)への依存度が高い結果、これに従わざるを得ないという傾向が問題視されてきました。
フリーランスについても、これまで保護を図る法律がなかった訳ではありません。
具体的には、独占禁止法は、取引の発注者が事業者であれば、相手方が個人の場合でも適用されることから、事業者とフリーランス全般との取引に適用されます。
また、下請法は、取引の発注者が資本金 1000 万円超の法人の事業者であれば、相手方が個人の場合でも適用されることから、一定の事業者とフリーランス全般との取引に適用されることなります。
加えて、実質的に発注事業者の指揮命令を受けて仕事に従事していると判断される場合など、現行法上「雇用」に該当する場合には、労働関係法令が適用されますので、事案によっては労働基準法の適用によって解決されるべき事案などもあり得ます。
しかしながら、これら法律の規定のみでは厳密に適用対象になるかどうかが不明確な取引や、そもそも適用対象にならないことが明確な取引もあり、新法の制定が進められてきました。
したがって、この新法では、独占禁止法上の優越的地位の濫用規制や、下請法などにおける禁止規定等を踏まえ、フリーランスが事業者として受託した業務に安定的に従事することができる環境を整備するため、「特定受託事業者」に係る取引の適正化及び「特定受託業務従事者」の就業環境の整備を図ることを目的とした発注者側への義務づけなどが行なわれています。
3 概要
新法の概要は以下のとおりです(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案(フリーランス・事業者間取引適正化等法案)の概要 (新規)/内閣官房HPより抜粋引用)。
1.対象となる当事者・取引の定義
(1)「特定受託事業者」とは、業務委託の相手方である事業者であって従業員を使用しないものをいう。
(2)「特定受託業務従事者」とは、特定受託事業者である個人及び特定受託事業者である法人の代表者をいう。
(3)「業務委託」とは、事業者がその事業のために他の事業者に物品の製造、情報成果物の作成又は役務の提供を委託することをいう。
(4)「特定業務委託事業者」とは、特定受託事業者に業務委託をする事業者であって、従業員を使用するものをいう。
※ 「従業員」には、短時間・短期間等の一時的に雇用される者は含まない。
2.特定受託事業者に係る取引の適正化
(1)特定受託事業者に対し業務委託をした場合は、特定受託事業者の給付の内容、報酬の額等を書面又は電磁的方法により明示しなければならないものとする。
※ 従業員を使用していない事業者が特定受託事業者に対し業務委託を行うときについても同様とする。
(2)特定受託事業者の給付を受領した日から60日以内の報酬支払期日を設定し、支払わなければならないものとする。(再委託の場合には、発注元から支払いを受ける期日から30日以内)
(3)特定受託事業者との業務委託(政令で定める期間以上のもの)に関し、①〜⑤の行為をしてはならないものとし、⑥・⑦の行為によって特定受託事業者の利益を不当に害してはならないものとする。
① 特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく受領を拒否すること
② 特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく報酬を減額すること
③ 特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく返品を行うこと
④ 通常相場に比べ著しく低い報酬の額を不当に定めること
⑤ 正当な理由なく自己の指定する物の購入・役務の利用を強制すること
⑥ 自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること
⑦ 特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく内容を変更させ、又はやり直させること
3.特定受託業務従事者の就業環境の整備
(1)広告等により募集情報を提供するときは、虚偽の表示等をしてはならず、正確かつ最新の内容に保たなければならないものとする。
(2)特定受託事業者が育児介護等と両立して業務委託(政令で定める期間以上のもの。以下「継続的業務委託」)に係る業務を行えるよう、申出に応じて必要な配慮をしなければならないものとする。
(3)特定受託業務従事者に対するハラスメント行為に係る相談対応等必要な体制整備等の措置を講じなければならないものとする。
(4)継続的業務委託を中途解除する場合等には、原則として、中途解除日等の30日前までに特定受託事業者に対し予告しなければならないものとする。
4.違反した場合等の対応
公正取引委員会、中小企業庁長官又は厚生労働大臣は、特定業務委託事業者等に対し、違反行為について助言、指導、報告徴収・立入検査、勧告、公表、命令をすることができるものとする。
※ 命令違反及び検査拒否等に対し、50万円以下の罰金に処する。法人両罰規定あり。
5.国が行う相談対応等の取組
国は、特定受託事業者に係る取引の適正化及び特定受託業務従事者の就業環境の整備に資するよう、相談対応などの必要な体制の整備等の措置を講ずるものとする。
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