業務提携契約書について

 

はじめに

「業務提携契約」は、極めて広い範囲の法律の規定に関係する契約類型です。

一口に「業務提携契約」といっても、研究開発に関する業務提携であるのか、製造販売に関する業務提携であるのか、はたまた競合製品・同種事業に関しての業務提携であるのか、によって契約書の定め方、適用される法律の内容は様々です。具体的には、民法、会社法、独占禁止法に至るまで多くの法律に関係する契約類型です。

ここでは、一例として、甲が製造販売する商品について、乙がこれを乙の独自の販売ルートを利用して、代理して販売するような形態の販売業務に関する提携契約書の留意事項を解説致します。

 

契約書に定めるべき内容のポイント

全体像としては、契約書には、以下の内容を定めておくことが必要です。

① 業務提携の内容

② 「代理」とは?

③ 販売方法や価格

④ 販売の独占・非独占、最低販売数量

⑤ 委託料・手数料

⑥ 宣伝広告方法、費用

⑦ 競業禁止

⑧ 秘密保持

その他、損害賠償に関する取り決め等々です。

 

業務提携の内容と代理について

乙が、甲の商品を販売する場合には、乙が乙の名前で取扱商品として甲の商品の販売をするケース、乙は、あくまで「甲代理乙」として、いわば甲として甲の商品を販売するケースと、大きく二つ考えられます。

それにしたがって契約書の条文の定め方も異なり、前者の場合には、乙は甲から商品を購入し、それを顧客に販売することになりますし、後者の場合には、乙はあくまで甲のために甲を代理して販売契約を結ぶだけ(その手数料をもらう)であり、商品は、甲から直接顧客に売り渡されることとなります。

 

販売の独占・非独占、最低販売数量

乙が、甲の商品を販売する場合、その商品が人気商品であればあるほど、乙としては、独占的に販売したいと考えます。一方、甲としても、乙の販売ルート が甲の想定する売上を確保できる程度のものである限り、乙に販売を委ねて良いと考えますが、逆に、乙に任せたは良いが、実際には乙のルートでは期待したほど売れなかった、でも契約期間はまだ2年も残っている・・・というようなことも起こりえます。

そこで、このような両者の利害を調整するためには、「非独占」の販売を委ねる形態にするか、「独占」販売権を与えながらも、その代わり、必ず1か月あたり最低販売数量を満たすこと、それに満たない場合には、その分の費用を甲に支払うこと、を定める契約を結ぶことが一般的です。

 

販売価格・競合品の取扱

甲としては、販売価格をコントロールし、また契約終了後に乙が競合品を取り扱ったりして、甲の販売に支障を生じさせないようにしたいと考えるのが一般的です。

このような取り決めも行うことが多いですが、これについては甲と乙の関係等々によって、独占禁止法に抵触する場合もありますので、注意が必要です。

 

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谷川安德

谷川安德

谷川安德 大阪府出身。立命館大学大学院法学研究科博士前期課程(民事法専攻)修了。契約審査、労務管理、各種取引の法的リスクの審査等予防法務としての企業法務を中心に業務を行う。分野としては、使用者側の労使案件や、ディベロッパー・工務店側の建築事件、下請取引、事業再生・M&A案件等を多く取り扱う。明確な理由をもって経営者の背中を押すアドバイスを行うことを心掛けるとともに、紛争解決にあたっては、感情的な面も含めた紛争の根源を共有すること、そこにたどり着く過程の努力を惜しまないことをモットーとする。

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