雇用契約書

事業を行うにあたり従業員を雇用する場合、各従業員と使用者は雇用契約を締結することになります。その際、雇用契約書を個別に作成するのではなく、労働条件通知書の交付と就業規則の提示を雇用契約書の作成に代えている場合も少なくありません。しかし、多くの場合労働条件通知書と就業規則では、各従業員の個別の事情を反映させることが困難です。

取引先との対外的な契約については契約書を作成し、リーガルチェックを行っているにも関わらず、使用者が行う契約として同等に重要な従業員との雇用契約について契約書を作成しない理由はありません。

以下では一般的な就業規則が作成されている場合の雇用契約書作成時のポイントについてお話いたします(なお、労基法上必要とされている労働条件の通知事項についてはこちらをご覧ください。)。

 

 

1 就業規則との関係

就業規則が作成されている場合、個別の労働者との労働契約は就業規則にて定められた内容を下回ることは認められません。個別の労働契約が就業規則を下回る場合はその部分について無効となり、就業規則の基準まで引き上げられます(労契法12条)。

従って、各労働者と合意した個別の条件が就業規則の条件を下回っていないかの確認は必要です。

 

2 就業場所・業務内容

就業場所及び従事すべき業務内容は労働者に対し必ず通知しなければならない事項に含まれていますので、必ず明示するようにしてください。

そして、当該労働者の就業場所について転勤の可能性がある場合は、その旨を雇用契約書で明らかにしておく必要があります。業務の必要がある場合に就業場所が変更できる旨の記載は就業規則に記載されていることも多いですが、事業所内で転勤の可能性が有る労働者と無い労働者がいる場合は、当該労働者に転勤を命じることができることを明らかにするためにも、個別の労働契約書に転勤を命じることができる旨を記載しておくべきでしょう。

また、業務内容の変更である配置転換は様々な将来的な理由(会社の業務内容・業績の変化、当該従業員の適性など)によってどの従業員にも起こりうるため、個別の労働契約書に、業務内容の変更を命じることができる旨は記載しておくべきでしょう。

また、従事すべき業務内容については、管理監督者に該当すれば労働時間の制約を受けない(深夜割増は必要)ことからこれに該当する場合であれば管理監督者であることを明示することは必須であり、また、定められた業務内容が当該労働者の業務査定や能力不足による懲戒・解雇の判定の基準になることから、個別の業務内容は可能な範囲で具体的に記載することが求められます。

 

3 就業時間・休憩

就業時間(始業時刻、終業時刻、休憩開始・終了時刻)については具体的な時間を明示する必要があります。

なお、一日8時間又は週40時間を超えて労働を命じる場合は(残業命令)、労使間での36条協定の他、労働者との間の契約上の根拠が必要ですので、就業規則がない場合には個別の契約書に業務上の必要がある場合は残業を命じることができる旨を記載するようにしてください。

 

4 休日

休日についても労働条件として必ず労働者に明示しなければならない事項です。休日については振替休日(事前に休日と労働日を入れ替えること)・代休(休日に労働させた後に別の労働日を休日に指定すること)を行うには就業規則に記載のない限り労働者個別の同意が必要になるため、あらかじめ契約書に記載しておくべきでしょう。

 

5 固定残業代に関する規定

固定残業代とは、現実の時間外労働の有無や長短にかかわらず、一定時間の残業を想定したうえで、その時間に対応する残業代を固定して月給に上乗せして支払う方法を指します(詳しくはこちらの記事をご覧ください)。

固定残業代制度を採用している場合に、それが有効であるためには少なくとも

①残業代(割増賃金)部分と基本給部分が明確に区分されていること

②当該月の残業代が固定残業代を上回っている場合は差額を支払う合意と実態があること

が必要になります。また、固定残業部分について法定もしくは就業規則で定められた割増率を下回ることは当然許されません。

これらの要件を満たすためには、固定残業代とされる部分について何時間分の時間外労働として算定されているのかが労働者に把握できるようにしておかなければなりません(例えば30時間分の時間外労働として5万円を支給する。など)。「何時間分」の残業代として「どれだけの額」が支給されているのかが把握できなければ、割増率を下回っていないのかということと、当該月の残業代として未払いがあるか否かの判断ができないからです。

従って、固定残業代を採用する場合は、雇用契約書に当該労働者の固定残業代に関する対象時間と具体的な金額を明記し、当該労働者の同意を得ておく必要があります。

 

以上、就業規則が作成されている場合の雇用契約書のポイントについていくつかお話いたしました。しかし、雇用契約書も取引先等の契約書と同様に個別の労働者との事情により記載すべきポイントは異なります。グロース法律事務所では、雇用契約書に関するご相談も随時受け付けておりますので、いつでもご相談ください。

 

 

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徳田 聖也

徳田 聖也

德田聖也 京都府出身・立命館大学法科大学院修了。弁護士登録以来、相続、労務、倒産処理、企業間交渉など個人・企業に関する幅広い案件を経験。「真の解決」のためには、困難な事案であっても「法的には無理です。」とあきらめてしまうのではなく、何か方法はないか最後まで尽力する姿勢を貫く。

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