売買契約書とは
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1 「売買契約書」とは
売買契約は、文字通り、商品などの目的物を対価を定めて、有償で売り渡す契約をいいます(これに対し、無償の場合は、贈与です)。
その売買契約にあたり、本質的な内容となるものは、
目的物が何であるか
代金額がいくらであるか
ですが、実際の売買にあたっては、それ以外にも支払い期日や目的物に瑕疵がある場合の責任、損害賠償や解除に関する取り決めを行うのが、通常です。
このような、売買の決まり事を書面にまとめたものが「売買契約書」と呼ばれるものです。
2 売買契約書の種類
売買契約の種類は、目的物の違いによって、いくつかの種類に分かれます。
大きくは以下に分類できます。
① 不動産売買契約書や、動産売買契約書
② 債権や株式の譲渡契約書
③ 知的財産権の譲渡に関する契約書
です。
動産売買契約書においても、企業間の継続的な取引基本契約を前提とし、その取引基本契約の中で個別の売買契約が行われる契約の形態もあります。この場合、契約としては取引基本契約書と個別売買契約書の2種類が存在するということになります。
3 売買契約書の一般的な記載事項
ここでは、動産売買契約書を例に、一般的な記載事項と、その意味や重要な条項について説明いたします。
甲は、乙に対し、下記動産(以下「本件動産」という。)を下記記載の代金で売り渡すことを約し、乙はこれを買い受ける。 |
売買契約においては、目的物が何であるか、そしてその代金がいくらであるかを必ずさだめなければなりません。したがって、この条文は売買契約の本質を規定する重要な条項となります。
甲は、乙に対し、本件動産を平成30年6月末日限り、乙の別途指定する場所にて引き渡す。
乙は、本件動産の売買代金を本件動産の引き渡しを受けた日の翌日から起算して5営業日以内に、甲の指定する口座に振り込む方法で支払う。 |
目的物の引き渡し期限と代金の支払い期限を定める条項です。
売買契約においては、代金の支払いと目的物の引き渡しは、同時に引き換えになされることが民法の原則です。このような原則で契約する場合には、売買契約書に特に引き渡し時期について規定していなくても、引き渡しは代金の支払いと同時ということになります。
一方、上記の条項は、このような原則とは違う取り決めを行うものです。民法と異なる取り決めをしようというものですから、当事者でこのような取り決めを行う場合には、契約書にその旨を明確に規定しておく必要があります。
本件動産の所有権は、乙が甲に本件動産の代金を全額支払ったときに、甲から乙に移転する。 |
本件動産の所有権は、乙が甲から本件動産の引き渡しを受けたときに、甲から乙に移転する。 |
目的物の所有権がいつ移転するかは、取引当事者、特に代金を支払ってもらう側にとってきわめて重要な取り決めです。
上の二つの条項は、一つは代金支払いによって所有権が移転すると規定する条項、一つは、代金が支払われる前であって引き渡しによって所有権が移転すると規定する条項です。
売主からすれば、代金を支払ってもらった後に所有権が移転すると規定されているか、しっかりと確認をしておく必要があります。
本件動産に受け入れ検査において発見できなかった隠れた瑕疵が存し、乙が当該瑕疵を発見できなかったことにつき正当な理由があるときは、乙は甲に対し、当該受入検査後3ヶ月以内に限り、前条第3項第3号の対応を求めることができる。この場合、乙は本条に定める以外の法律上の規定に基づく契約の解除、代金の減額、又は損害賠償の請求を行うことはできない。
4 企業同士の売買契約で特に注意すべき条項
ところで、売買契約では売主に「瑕疵担保責任」がありますが、企業間取引においては特に契約条項のみならず、法律上、どのように定められているかについて、注意しなければなりません。
まず、法律上気を付けなければならない条文は以下の規定です。
○ 民法第570条(売主の瑕疵担保責任)
売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第566条の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない。 ○ 民法第566条(地上権等がある場合等における売主の担保責任) ①② (略) ③第2項の場合において、契約の解除又は損害賠償の請求は、買主が事実を知った 時から1年以内にしなければならない。 ○ 商法第526条(買主による目的物の検査及び通知) ①商人間の売買において、買主は、その売買の目的物を受領したときは、遅滞なく、 その物を検査しなければなららない。 ②前項に規定する場合において、買主は、同項の規定による検査により売買の目的 物に瑕疵があること又はその数量に不足があることを発見したときは、直ちに売主に対してその通知を発しなければ、その瑕疵又は数量の不足を理由として契約の解除又は代金減額若しくは損害賠償の請求をすることができない。売買の目的物に直ちに発見することのできない瑕疵がある場合において、買主が6か月以内にその瑕疵を発見したときも、同様とする。 ③前項の規定は、売主がその瑕疵又は数量の不足につき悪意であった場合には、適 用しない。 |
企業間での取引でなければ、民法の規定にしたがって、「隠れた瑕疵」については、「契約の解除又は損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から1年以内」であれば出来る、という点を主に意識しておけば良い訳です。
しかし、企業間取引の場合は、法律の規定が変わります。
まず、商法は、買主に対して、目的物を受領したときに「遅滞なく」「検査
しなければならない」としています。
これは、民法では規定のないことです。
そして、検査の結果、瑕疵等を発見できた場合には、直ちに売主に「通知」すべきことを求め、通知がない場合には、契約の解除や損害賠償請求などを認めない、とする法律の規定にしています。
つまり、この説明の時点で、遅滞なく検査をしなかった買主は、契約解除などを求めることが出来ないという結論になります。
また、外観検査などをしても、そのときは発見できない隠れた瑕疵に関しては、買主が6か月以内に瑕疵を発見したときに、同様に売主に「通知」を求めるとともに、この通知を怠った場合には、契約の解除などを認めないというのが法律の立場となっています。
ここで契約書との関連で良く問題となるのは、主に以下の点です。
〇「遅滞なく」っていつのこと?
〇「検査」って何?
〇「6か月」は延長出来るの?あるいは短縮できるの?
これがまさに契約書での取り決めで有利にも不利にも出来るポイントとなっています。
乙は、引渡しを受けた後、3日以内に、本件動産に瑕疵等がないか受け入れ検査を行わなければならない |
例えば、上記のような規定は、「遅滞なく」を当事者の合意で「3日」としたものです。これがどちらにとって有利か不利かは取引次第ではありますが、短縮すればするほど、買主にとって不利な契約となります。
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徳田 聖也
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