迷惑行為のSNSへの晒し行為は許されるのか?弁護士が解説
1 はじめに
SNSが人々の暮らしに深く根付いた現代では、SNSに日々挙げられる写真や動画について思いもよらぬ影響力を及ぼすこともあります。そのような影響力を利用して、昨今、他人が行った迷惑行為を撮影しSNSへ投稿することが行われることがあります。正義感から行われることもあるようですが、顔画像をはじめとした個人を特定できる状態で晒された個人に重大な悪影響を与えることもあります。
このようないわゆるSNSへの「晒し」行為は許されるのでしょうか。
2 名誉棄損やプライバシーの侵害になりうる
まず、そのような迷惑行為を撮影すること自体は許されるのでしょうか。撮影場所が個人のプライバシーが守られる場所にて行われた無断撮影の場合は、撮影自体がプライバシー権の侵害といえる可能性が高くなります。しかし、誰でも出入りできる公共の場における迷惑行為について、行為者に無断で撮影を行ったとしても、もともと公開の場所において行われた行為であることから、プライバシー権の侵害と評価される可能性は低いと言えます。
しかし、これをSNS等の誰でも目を触れることができる場(公開は友達のみとの一定の限定があっても、よほど範囲が限定されていない限り同様です。)に公開することについては、プライバシー権の侵害や名誉棄損に当たる可能性があります。
名誉棄損は投稿された内容(動画に付したコメントなど)が事実であったとしても、人の社会的評価を下げた場合に成立します。また、例え不適切な行為を行っていたとしても、それをみだりに公開されることはプライバシー権の侵害にあたる可能性があります。
名誉棄損については、公共性があり、公益の目的を持ち、真実であることが証明されれば人の社会的評価を下げても名誉棄損に該当しないことはあります。
しかし、犯罪の処罰権限は国が有しており、私的制裁や自力救済は認められていません。従って、自ら社会的制裁を与えるために迷惑行為を「晒す」という行為も、また正当化される可能性は低いと言えます。
3 晒し行為を行ってしまう前に
SNS投稿時における問題は、いわゆる「バイトテロ」として話題になった店舗従業員の迷惑行為の投稿や、回転寿司顧客による不衛生な行為の投稿などに代表されるように、本当にこのような行為を投稿して良いのか(そもそもこのような行為を行うこと自体が許されない行為であることは当然です。)、少し間をおいて考えれば防ぐことができることが多くあります。
迷惑行為の晒し行為についても、投稿を行う前に少し間を置き、誰かの権利を侵害することにならないかを一度考えてみてもよいかもしれません。
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