従業員が横領行為をした際の対応について

 

1 はじめに

会社運営には当然金銭管理が必要であるところ、残念ながら金銭管理を任された従業員が横領行為を行うことも散見されます。従業員の報道される場合は数千万円から数億円もの被害が生じることもあります。昨今では近畿圏で有名な寺社にて永代供養料7700万円が担当者に横領されたとの報道もありました。

本コラムでは、従業員が横領行為を行った場合に会社としてどのような対応が可能であるか解説いたします。

 

2 懲戒処分(懲戒解雇)

従業員の横領行為が発覚した場合に、当該従業員について懲戒解雇を行うことが考えられます。懲戒解雇に限らず会社が懲戒処分を行うには就業規則等に会社が懲戒処分を行うことができる旨の規定があり、かつ、事前に規定された懲戒処分事由に該当することが必須です。

従って、従業員が横領行為を行った場合に懲戒解雇を行うには、就業規則等にあらかじめ懲戒処分を行うことができる旨が規定され、かつ横領行為が規定された懲戒事由に該当することが必要です。なお、懲戒事由については「横領行為」までは特定されていなくとも、「会社の金品を盗むなど不正行為に及んだとき」や「故意または過失により会社に重大な損害を与えたとき」「刑罰法規に違反し犯罪事実が明白なとき」などの規定で足ります。

会社に対し重大な不正行為(犯罪行為)を行っても懲戒に関する規定がなければ懲戒解雇を行うことはできないため、就業規則作成義務がない事業所(労働者が10名未満の事業所)においても就業規則を定めて懲戒に関する規定を定めておくことが重要です。

 

3 退職金の扱い

懲戒解雇を行った者に対し、退職金を不支給又は減額するには就業規則(退職金規程)にてその旨をあらかじめ規定しておく必要があります。ただし、当該規定がある場合でも退職金を全額不支給とできるのは「労働者のそれまでの勤続の功を抹消してしまうほどの著しく信義に反する行為があった場合」に限られるとされています。

横領行為における退職金不支給については、横領の態様、金額、被害回復の有無などにより個別に判断されることになります。

 

4 損害賠償

従業員に対して横領した金額について損害賠償が可能かという問題があります。従業員が業務上、「過失」により会社に損害を与えた場合、その一部または全部の損害を賠償させることについては制限される場合があります(業務を行うにあたってのミスから生じる損害は、従業員を指揮命令する立場にあり、従業員を使用することから利益を得ている会社が負担すべきであるという考え方による。報償責任。)しかし、横領行為は従業員が「故意」に行った不正行為でありこの場合は全額賠償請求することは可能でしょう。

 

以上、従業員が横領行為を行った場合において、会社が様々な処分・請求を行うにあたっても検討しなければならない事由が多くあります。グロース法律事務所は労働事件における使用者側専門事務所として、従業員の不正行為に対する対応も取り扱っておりますので、いつでもご相談ください。

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徳田 聖也

徳田 聖也

德田聖也 京都府出身・立命館大学法科大学院修了。弁護士登録以来、相続、労務、倒産処理、企業間交渉など個人・企業に関する幅広い案件を経験。「真の解決」のためには、困難な事案であっても「法的には無理です。」とあきらめてしまうのではなく、何か方法はないか最後まで尽力する姿勢を貫く。

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