新型コロナウィルス感染症に関して企業が取るべき対応~株主総会の開催に関する留意点~

はじめに

新型コロナウィルス感染症に関して、感染防止に向けた緊急の対応が求められている状況ですが、本稿では、株主総会の開催に関する留意点を記載いたします。

会社法では、定時株主総会は、毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならず(会社法第296条1項)、定時株主総会の開催の要否会場での対応議決権行使の方法などが問題となります。

定時株主総会の開催について

株式会社の定款で、あらかじめ定めた時期に定時株主総会が開催できない場合の開催日の変更の可否については、法務省から以下のように解釈が示されています(参照:法務省「定時株主総会の開催について」)。この解釈によると、定款で定時株主総会の開催時期について定められている場合に、新型コロナウィルス感染症のために当該開催時期に定時株主総会を開催できない場合でも、違法とはならないことが明らかにされています。

1 定時株主総会の開催時期に関する定款の定めについて

定時株主総会の開催時期に関する定款の定めがある場合でも、通常、天災その他の事由によりその時期に定時株主総会を開催することができない状況が生じたときまで、その時期に定時株主総会を開催することを要求する趣旨ではないと考えられ、新型コロナウィルス感染症に関連し、定款で定めた時期に定時株主総会を開催することができない状況が生じた場合には、その状況が解消された後、合理的な期間内に定時総会を開催すれば足りるものと考えられます。

2 定時株主総会の議決権行使のための基準日に関する定款の定めについて

会社法上、基準日株主が行使することができる権利は、当該基準日から3ヶ月以内に行使するものに限られることから(会社法第124条2項)、定款で議決権行使のための基準日が定められている場合において、新型コロナウィルス感染症に関連し、当該基準日から3ヶ月以内に定時株主総会を開催することができない状況が生じたときは、会社は、新たに議決権行使のための基準日を定め、当該基準日の2週間前までに当該基準日及び基準日株主が行使することができる権利の内容を広告する必要があります(会社法第124条3項)。

3 剰余金の配当の基準日に関する定款の定めについて

特定の日を剰余金の配当の基準日とする定款の定めがある場合でも、新型コロナウィルス感染症に関連し、その特定の日を基準日として剰余金の配当をすることができない状況が生じたときは、定款で定めた剰余金の配当の基準日株主に対する配当はせず、その特定の日と異なる日を剰余金の配当の基準日と定め、当該基準日株主に剰余金の配当をすることができますが、剰余金の配当の基準日を改めて定める場合には、当該基準日の2週間前までに広告する必要があります(会社法第124条3項)。

株主総会における会場での対応について

株主総会を開催する場合は、会場での感染を防止する対策を取ることが必要です。具体的には株主席について隔席の着席など余裕を持たせる、会場の換気を行う、設営者を含めマスクの着用を求める、会場に消毒液を設置する、受付にて検温などの体調確認を行うなどが必要になるでしょう。

また、明らかにコロナウィルス感染症の症状が見られる株主が来場した場合においては、株主総会における議長の秩序維持権限(会社法第315条)により、やむを得ず入場を拒否できると考えられますが、事前に症状が見られる場合には入場をお断りすることがある旨を告示しておくことが求められるでしょう。

株主総会会場外での参加について

株主が株主総会当日に会場に来場することなく、株主総会に参加する方法としては、インターネット等を利用したハイブリッド型バーチャル株主総会(物理的に存在する会場にインターネット等の手段を用いて接続し、遠隔地からこれに参加/出席することを許容する形態の株主総会)を開催することが考えられます。このハイブリッド型バーチャル株主総会については、経済産業省から実施ガイド(「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」)が出されており、実施の参考になります。なお、実施ガイドでは物理的な会場を設けず取締役や株主等がインターネット等の手段を用いて株主総会を開催することは、現時点での法解釈上困難であることも示されています。

また、議決権の行使については、株主総会の招集通知への記載することにより書面又は電磁的方法による事前の議決権行使が可能ですので、そのような方法をとることにより、総会当日の来場者数を減らすことができます。

最後に

グロース法律事務所では、新型コロナウィルス感染症に関連した株主総会対応についても、無料で相談対応しておりますので、遠慮なくお問い合わせください。

 

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コロナ禍における各種対応方針

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徳田 聖也

徳田 聖也

德田聖也 京都府出身・立命館大学法科大学院修了。弁護士登録以来、相続、労務、倒産処理、企業間交渉など個人・企業に関する幅広い案件を経験。「真の解決」のためには、困難な事案であっても「法的には無理です。」とあきらめてしまうのではなく、何か方法はないか最後まで尽力する姿勢を貫く。
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