固定残業代制度が無効であったとして、未払賃金の労働審判の申立を受けた事案
(相談)
固定残業代を支払ってきた会社が、元従業員から固定残業代制度が無効であったとして未払賃金請求の労働審判の申立を受けたということで相談がありました。
(対応)
労働契約、就業規則の有無と有る場合には周知されているかどうか、手当型であったことから、どのような名称の手当で、どのような金額設定、制度設計がされているか等詳細のヒアリングを行いました。
固定残業代制度の有効性については、最高裁昭和63年7月14日第一小法廷判決(労判523号6頁)以降、直近の最高裁判例(最高裁令和2年3月30日第一小法廷判決・民集74巻3号549頁、最高裁令和5年3月10日第二小法廷判決・労判1284号5頁、最高裁平成30年7月19日第一小法廷判決・集民259号77頁、最高裁平成29年7月7日第二小法廷判決・集民256号31頁、最高裁平成29年2月28日第三小法廷判決・集民255号1頁、最高裁平成24年3月8日第一小法廷判決・集民240号121頁、最高裁平成6年6月13日第二小法廷判決・集民172号673頁)を考察する必要があり、有効性の要件については、ほぼ整理されたと言えます。
答弁書についても、対価性要件・判別性要件の点について、丁寧に証拠等から説明しました。
必ずしも有利な文言ではない就業規則の規定もありましたし、また他の未払残業代に関する論点もありましたが、第1回の労働審判期日において、予想していた範囲内での応諾可能な金額で和解が成立しました。
固定残業代制度については、議論が成熟しつつあります。雇用契約書の記載、就業規則の記載、運用等今一度見直しいただければと思います。
谷川安德
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