付加金とは
1 はじめに
労働紛争において最も多く争われる紛争類型の一つとして、未払賃金(残業代)請求が挙げられます。これらが裁判上で争われる場合は付加金が付加金の支払いが命じられることがあります。付加金の支払い命令は企業にとって大きな経済的ダメージなることがあり、訴訟や労働審判における和解の検討時においても重要な考慮要素となることが多いため、付加金制度を理解しておくことは重要です。
2 付加金の概要
使用者が解雇予告手当(労基法20条)、休業手当(労基法26条)、時間外・休日・深夜労働の割増賃金(労基法37条)、有給休暇に対する賃金(労基法39条9項)を支払わなかった場合は、労働者の請求により、裁判所はその未払額の他、これと同一額の付加金の支払いを命ずることができるとされています(労基法114条)。
すなわち、これらの未払があれば裁判所の命令により2倍の金額を支払わなければならないこととなり、使用者にとっては大きなリスクとなります。
付加金は裁判所の命令により初めて生じることから、労働者は裁判上の請求を行う必要がありますが、その請求期限は労基法114条ただし書きにより「違反のあったときから5年以内」とされています。ただし、この請求期間は労働債権における消滅時効期間と同様に、現時点においては暫定的に3年とされています。
なお、付加金の請求期間については消滅時効ではなく除斥期間とされていることから、時効の中断規定の適用はなく、除斥期間内に訴えを提起する必要があります。
3 支払い義務について
付加金は判決が確定することによって初めて支払い義務が発生します。従って、第一審にて未払賃金の支払いを命じる判決がなされた場合でも、控訴された場合にはその時点では支払義務は発生していないことになります。控訴審にて改めて未払賃金があると判断された場合(及び付加金の支払い命令が出された場合)は、その判決の確定をもって当該金額と同額の付加金の支払い義務が発生します。
4 企業側ができる付加金の支払い対策
以上のとおり、未払賃金等が裁判上認められると当該未払分のみではなく、付加金の支払い命令によりその倍額の支払いが必要となります。使用者として故意に未払賃金を発生することは慎まなければならないことは当然ですが、残業代の計算ミスや退勤時間の管理のミスなどにより知らないうちに未払賃金が発生することも防止しなければなりません。
そのためには普段からの勤怠管理や残業代に関する就業規則等の整備は不可欠です。
グロース法律事務所では労務問題における使用者側専門の法律事務所として使用者の立場から、未払賃金が発生しない労務管理体制の構築アドバイスを行っておりますので、いつでもお問い合わせください。
徳田 聖也
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