株式会社の設立(発起設立)について
弊所では、法人の経営者をサポートすべく各種ご相談をお受けしておりますが、中には、今後法人を設立し、事業拡大をはかろうとされている個人事業主の方からご相談を受けることもございます。
近時は、会社設立にあたりまして定款認証費用が減額変更される等の改正などもございました。そこで、本稿では少し視点を変えて、司法書士の目線から解説を加えていただくこととし、羽根亨(はね とおる)司法書士に原稿を執筆いただきましたので、ご紹介させていただきます。
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各種会社設立手続きの中で、実務上最も件数が多い株式会社の発起設立について、司法書士目線からご説明させていただきます。
Contents
Ⅰ.株式会社設立手続の流れ(発起設立)
手続きの大まかな流れは下記の通りです。
①会社・定款の内容(基本事項)を決定
↓
②定款作成
↓
③公証役場にて定款の認証
↓
④資本金の払い込み
※実務上、③④は前後するケースもございます。
↓
⑤法務局にて設立登記申請
※この登記を申請した日が会社の成立日となります。
↓
⑥登記完了
※この時点で会社の登記事項証明書や印鑑証明書が取得できるようになります。
↓
⑦設立後に必要な手続き
・会社の口座開設
・税務署、都道府県税事務所、市区町村役場へ法人設立届出書を提出など
ここで重要なのは、①の段階で十分に内容を検討されることです。会社は設立登記をすることで成立します。ただ、登記の怖いところは、法律上問題が無く必要な要件を充足していれば、実際の会社運営上好ましくない内容であったとしても、登記が完了してしまうところです。
例えば、許認可取得のために必要な事業目的の記載が定款に無かったとしても、ビジネスの繫忙期と業務負荷が高い決算期が重なっていても、登記を審査する法務局の審査対象ではありませんので、申請した通りに登記は完了してしまいます。
現に、税務上マズイ、許認可ビジネスを行う上でマズイ、また予防法務上マズイ設立手続きは存在し、費用をかけて登記をやり直すケースもございます。
Ⅱ.決定すべき基本事項(発起設立)
Ⅰ.①で決定すべき会社・定款の内容(基本事項)で、主なものは下記の通りです。
【基本事項】
a. 商号(会社名)
b. 本店(会社の住所)
c. 目的(業務内容)
d. 公告の方法
e. 設立時に発行する株式総数
f. 設立時に発行する株式の発行価額
g. 会社の発行可能な株式総数(発行可能枠)
h. 資本金
i. 決算期
j. 株式譲渡制限規定の有無・その承認機関
k. 役員
l. 取締役会・監査役の設置の有無
m. 取締役(監査役)の任期
Ⅰ.で事前に十分な検討が必要と述べましたが、どのような点に気を付けるべきか、ここでは下記事項を意識して内容を決定されると、失敗を防げるかと存じます。
①税金の観点
②ビジネスを行うにあたり必要な許認可の要件
③取引先、金融機関等からの対外的な信用面
④後日争いにならないよう予防法務の観点
例えば、①については、繫忙期、消費税の免税期間、資金繰りの観点から事業年度を検討することがございます。
また④については、外部から役員を入れる際、将来関係がこじれた場合を想定して、役員任期を短めに設定することもございます。株主総会の決議で、任期途中の取締役を解任することも可能ですが、慎重な対応が必要となるからです。その他に、2名で均等に出資し株式を半分ずつ持ち合いたいとのご依頼もございますが、意見が対立した際、会社の意思決定に支障が出るため、原則お勧めしておりません。
【スタートアップ企業・ベンチャー企業の場合】
株式による資金調達を行い上場を目指すことの多いスタートアップ企業やベンチャー企業と呼ばれる会社の場合、設立手続きは同じですが、気を付ける部分が一般的なスモールビジネスや個人事業の法人成りとは異なります。一株当たりの発行価額を1円や100円等低めに設定し、設立時に発行する株式数や発行可能株式総数を多めに設定する傾向があることが一例です。
Ⅲ.近時の会社設立周りの主なトピック
会社設立手続きについて、近時の主な改正等をまとめました。
1.実質的支配者となるべき者の申告制度
定款認証の際、法人成立時に実質的支配者となるべき者について、その氏名、住居及び生年月日等と、その者が暴力団員及び国際テロリストに該当するか否かを公証人に申告する必要があります。この制度は、法人の実質的支配者を把握することにより、暴力団員等による法人の不正使用(マネーロンダリング等)を抑止することを目的としています。
定款認証後、公証人から「申告受理及び認証証明書」が交付されますので、金融機関との取引開始時に行われる反社会的勢力の調査に対する提出資料としてご利用いただけます。
2.定款認証費用の変更
公証人の定款認証手数料がこれまでの一律5万円から下記の通り変更され、資本金が比較的少額な会社については減額されることとなりました。
(1)定款に資本金の額(資本金の記載がないときは「設立に際して出資される財産の価額」)の記載がある場合
ア.100万円未満・・・3万円
イ.100万円以上300万円未満・・・4万円
ウ.300万円以上・・・5万円
(2)定款に上記の記載がない場合は5万円
3.登記申請における押印不要の添付書類
法令上、押印又は印鑑証明書の添付を要する旨の規定がない書面については、原則、その押印の有無について法務局では審査されないこととなりました。つまり、審査されないということは、押印が無くとも登記手続きは完了することとなります。
【押印の有無が審査対象とはならない書面例】
・資本金の額の計上に関する証明書
・払込みがあったことを証する書面
・商業登記規則第61条第7項の書面(本人確認証明書)をコピーで提出する場合のコピー
・その他法令上押印又は印鑑証明書の添付の規定のない書面
4.スーパー・ファストトラック・オプション
株式会社の設立手続に関し、公証人に対する電子定款の認証の嘱託と、法務局に対する株式会社の設立登記の申請がオンラインで同時に行われた場合、一定の条件を満たすものについては、その同時申請の時から24時間以内に電子定款の認証とともに設立登記を完了することとなりました。
ただし、これを実行するには入念な準備が必要です。また、法務局では、平成30年3月頃から、株式会社及び合同会社の設立登記について、既にファストトラック化(優先的に処理し、原則として登記申請から3日以内に完了)を開始しております。
Ⅳ.費用の目安
下記①~④までの合計が株式会社設立手続きの費用の目安となります。
①定款貼付収入印紙 40,000円
※紙で定款を作成した場合です。電子定款の場合は不要。
②公証人の認証手数料 30,000~50,000円
※資本金の額等に応じて異なります。
③設立登記の登録免許税 150,000円
※資本金×7/1000で計算した金額が150,000円より高い場合はその額となります。
④定款の謄本、登記事項証明書や会社の印鑑証明書 数百円~数千円
※司法書士に株式会社設立手続きを依頼した場合は、定款の認証から登記手続きまで全てをお任せ出来ます。報酬は事務所により異なりますが、50,000~100,000円程度が目安です。
羽根亨
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