特定商取引法に基づく表示について弁護士が解説

 

1 はじめに

昨今、ECサイトによる商品やサービスの販売が当たり前となっていますが、これらは特定商取引法における広告義務の規制を受けます(法11条)。具体的には次にあげる項目について広告上(販売等のサイト上)に表示しなければなりません。いわゆる「特定商取引法に基づく表示」であり、これに対する違反は、主務大臣による是正措置等の指示(法14条)や業務停止命令(法15条)・業務禁止命令(法15条の2)の対象となります。

 

2 表示すべき項目 (消費者庁HP 特定商取引法ガイド参照)

① 販売価格(送料が必要な場合は送料も含む)

商品価格については実際の販売価格を表示する必要があります。送料についても購入者が具体的に金額がわかるように記載する必要があります。「よって、送料は別途実費」のみの記載では、いくら送料を負担しなければならないのか不明であるため不十分な記載となります。

具体的な金額を記載する他、発送元地域と重量・サイズを明確にしたうえで利用する運送会社の料金表のページにリンクを貼ることも認められます。

② 代金(対価)の支払時期及び支払方法

代金の支払い時期とは購入者がいつまでに代金を支払う必要があるかについての具体的な期限を指します。

代金の支払い方法については、銀行振込、クレジット、代金引換などを全て具体的に表示することが必要です。

③ 商品の引渡時期、権利の移転時期、役務の提供時期

注文後商品が届く時期やサービスの提供が現実に受けられる期限のことを指し、具体的に記載する必要があります。

④ 契約に係る申込みの期間に関する定めがあるときは、その旨及びその内容

申込みの期間に関する定めがあるときとは、商品の販売等そのものに係る申込期間を設定する場合(購入期限の制限や期間限定販売など、一定期間を経過すると商品自体を購入できなくなるもの)が該当し、具体的に記載する必要があります。期限ではない条件(個数限定販売など)はこれに該当せず、記載の必要はありません。

⑤ 商品若しくは特定権利の売買契約又は役務提供契約の申込みの撤回又は解除に関する事項

(売買契約に係る特約がある場合はその内容を含む)

契約の申込みの撤回又は解除に関して、その条件、方法、効果等について表示する必要があります。返品特約がある場合には、その際の条件は何か、送料の負担の有無等を広告に明示することが必要です。

 

また、役務提供契約の場合は、1回の役務提供を行う契約であれば申込みの撤回の可否やその方法等を、複数回又は一定期間の役務提供を行う契約であれば契約途中の解約に係る方法等を分かりやすく表示する必要があります。

なお、解約の連絡については確実に連絡ができる電話番号やメールアドレス等を記載する必要があり、電話がつながらない場合などは表示義務に違反するおそれがあります。

⑥ 販売価格、送料等以外に購入者等が負担すべき金銭があるときには、その内容及びその額

消費者が負担するのが当然な負担以外の負担を消費者に求める場合には、それを全て金額で表示することが必要となります。例えば、工事費、組立費、設置費、梱包料、代金引換手数料がこれにあたります。

⑦ 引き渡された商品が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合に、販売業者の責任についての定めがあるときには、その内容

引き渡された商品が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合の販売業者の責任(契約不適合責任)について特約する場合には、そのことを表示する必要があります。すなわち、契約不適合責任について民法の一般規定に従う場合は表示は不要です。

⑧ 事業者の氏名(名称)、住所、電話番号

個人事業者の場合には、氏名又は登記された商号、住所及び電話番号を表示する必要があります。また法人の場合には、名称、住所及び電話番号を表示する必要があります。電話番号については確実に連絡ができる電話番号を記載する必要があり、電話がつながらない場合などは表示義務に違反するおそれがあります。

⑨ 事業者が法人であって、電子情報処理組織を使用する方法により広告をする場合には、当該販売業者等の代表者又は通信販売に関する業務の責任者の氏名

電子情報処理組織を使用する方法とはインターネット上のウェブサイト、電子メール等を利用した広告を意味します。責任者については必ずしも代表権を持つ者でなくとも構わず、実務担当者で足ります。

⑩ ソフトウェアに係る取引である場合には、そのソフトウェアの動作環境

具体的には、プログラム等のソフトウェアを利用するために必要な電子計算機の動作環境(OSの種類、CPUの種類、メモリの容量、ハードディスクの空き容量等)を表示しなければならないとされています。

 

以上ECサイトを運営するには必ず表示すべき事項があり、その違反については厳しい処分がありえます。グロース法律事務所では企業法務専門事務所として特定商取引法に基づく表示に関するアドバイスも行っておりますので、ECサイト開設の際はご相談ください。

 

 

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徳田 聖也

徳田 聖也

德田聖也 京都府出身・立命館大学法科大学院修了。弁護士登録以来、相続、労務、倒産処理、企業間交渉など個人・企業に関する幅広い案件を経験。「真の解決」のためには、困難な事案であっても「法的には無理です。」とあきらめてしまうのではなく、何か方法はないか最後まで尽力する姿勢を貫く。
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