育児・介護休暇、休業
育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(以下「育児・介護休業法」といいます。)は、育児介護を行う労働者の支援のため、事業主が講じるべき措置と国等による援助をはじめとする支援措置を定め、職業生活と家庭生活の両立を図っています。
この育児・介護休業法で法的義務として事業主に求められるのは以下の事項です。
【育児について】
・育児休業
・子の看護休暇
・所定外労働の制限
・時間外労働の制限
・深夜業の制限
・育児休業等に関する定めの周知や所定労働時間短縮等の措置
【介護について】
・介護休業
・介護休暇
・所定外労働の制限
・法定時間外労働の制限
・深夜業の制限
・介護休業等に関する定めの周知や所定労働時間短縮等の措置
そして、事業主は育児・介護休業法に基づく事項を事業所ごとに就業規則で定めておく必要があります。以下に主な規定に関する事項について記載します。
Contents
育児休業の対象者
育児休業とは、原則として子が1歳になるまでの期間に労働者に対し、育児のための休業を認める制度です。ノーワークノーペイの原則により休業期間は無給とすることは可能ですが、育児休業を申し出たことにより解雇やその他の不利益な取り扱いと行うことは許されません。
(1) 子の要件(育児休業期間)
原則として子供が1歳になるまでの期間です。
但し、1歳を超えても休業することが必要と認められる場合(保育園に入所申込を行っているが当面入所できない旨を通知された場合や常態として子の養育を行う予定であったものが死亡・負傷・病気・離婚などにより子を養育することができなくなった場合)には、申出により1歳6ヶ月(その状態が続いていれば2歳まで)育児休業を取得することができます。
また、パパママ育休プラス制度として両親が共に育児休業を取得する場合に下記の要件を満たせば1歳2か月まで(但しそれぞれの育児休業期間は最長1年間まで)延長することも可能です。
・配偶者が子の1歳に達する日以前において育児休業をしていること
・本人の育児休業開始予定日が子の1歳の誕生日以前であること
・本人の育児休業開始予定日が配偶者の育児休業の初日以降であること
(2) 労働者の要件
労働者については以下のいずれかの要件を満たす必要があります。なお、日雇労働者は対象外となります。
・期間の定めのない労働者
・期間を定めて雇用される労働者は以下の要件を満たす場合
①引き続き雇用されている期間が1年以上
【改正によりこの要件は削除されました。詳細は改正内容に関する記事をご覧ください。】
②子が1歳6ヶ月に達する日までに雇用契約が満了することが明らかでないこと
育児休業申出があった場合の事業者の義務
原則として、事業主は育児休業を拒むことができません。但し、労働組合等との書面による協定で
・引き続き雇用されている期間が1年未満である労働者
・育児休業を申し出た日から1年以内に雇用関係が終了することが明らかな労働者
・1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
を育児休業の対象から除外することは可能です。
子の看護休暇
小学校就学までの子供を養育する労働者に対して、子供の怪我や病気の世話や予防接種等のため、その申し出により1年間の間に原則として5日まで休暇を取得することを認める制度です。休暇について無給とすることは可能ですが、不利益な扱いを行ってはいけないことは育児休業と同様です。
(1) 子の要件
小学校就学前の子供を養育する労働者が対象です。
原則として1年間(別途就業規則で定めない限り4月1日から3月31日までの期間)に5日まで取得することができますが、小学校就学前の子供が2人以上いる場合は合計10日まで取得することが可能です。
(2) 労働者の要件
育児休業と同様に日雇労働者には看護休暇は認められません。また、労使協定により
・引き続き雇用されている期間が6ヶ月に満たない労働者
・1週間の所定労働日数が2日以内
について、育児休暇の対象者から除外することは可能です。
(3) 取得単位
看護休暇は半日単位で取得することが可能です。但し、1日の所定労働時間が4時間以下の労働者の場合は1日単位の取得になります。
介護休業
介護休業とは、対象家族に要介護状態がいる労働者について、その介護のために、原則として93日間まで休業することを認める制度です。育児休業と同様に休業期間は無給とすることは可能ですが、介護休業を申し出たことにより解雇やその他の不利益な取り扱いと行うことは許されません。
(1) 要介護状態・対象家族
介護休業と取得することが可能になる要介護状態とは、「負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態」のことをいいます。
また、対象家族とは「配偶者・父母・子、祖父母、兄弟姉妹、孫の他、配偶者の父母が該当します。
(2) 対象労働者
労働者については以下のいずれかの要件を満たす必要があります。なお、日雇労働者は対象外となります。
・期間の定めのない労働者
・期間を定めて雇用される労働者は以下の要件を満たす場合
①引き続き雇用されている期間が1年以上
【改正によりこの要件は削除されました。詳細は改正内容に関する記事をご覧ください。】
②介護休業開始予定日から起算して93日を経過する日から6ヶ月を経過する日までの間に労働契約の期間が満了し、かつ労働契約が更新されないことが明らかでないこと
上記の要件を満たすものからの介護休業の申出を拒むことはできませんが、育児休養と同様に労使協定等により、以下の労働者については介護休業の対象外とすることが可能です。
・引き続き雇用されている期間が1年未満である者
・1週間の所定労働日数が2日以下の者
・介護休業を申し出た日から93日以内に雇用関係が終了することが明らかである者
(3) 介護休業期間
対象家族一人に対し通算93日間の範囲内で、3回まで取得することが可能です。一度に93日間の取得をすると、その対象家族に対する介護休暇は取得することができなくなりますし、通算で93日に満たなくてもすでに3度取得している場合も、その対象家族に対する介護休暇は取得できなくなります。
なお、ある対象家族(例えば父)にて既に93日介護休業を取得している場合でも、他の対象家族(例えば母)については、新たに通算93日までの介護休業を取得することが可能です。
介護休暇
介護休暇とは、要介護状態にある対象家族の介護や世話のために、1年間の間(原則として4月1日から3月31日まで)に休暇を5日(対象家族が2人以上の場合は10日)まで労働者の申出により付与される制度です。
対象の労働者から、労使協定により引き続き雇用されている期間が6ヶ月未満の者及び1週間の所定労働日数が2日以内のものを除外することができるのは育児休暇と同様です。
また、介護休暇は半日単位で取得することも可能ですが、一日の所定労働時間が4時間以下の労働者は1日単位での取得になります。
介護休暇についても、上述の制度と同様に、無給とすることは可能ですが、介護休暇を取得することによる不利益な取り扱いは許されません。
以上のとおり、育児休業・介護休業・育児休暇・介護休暇については、要件を満たしている労働者からの申出があった場合は、事業者はその取得を認める必要がありますので、事業者としては就業規則への記載など対応しておくことが重要になるでしょう。
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徳田 聖也
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