労働基準法における労働者とは何か?~フリーランスや劇団員等の事例はどのように考えるべきか~

フリーランス

 

1 はじめに

例え当事者同士で、業務委託契約等、労働契約とは別の名称で契約を結んでいても、判決において、例えば受託者であるフリーランスが従業員であったと認められる場合もあります。

 

多くは未払賃金や、労災の問題として提起される問題となりますが、本稿では、労働基準法上の「労働者」とはいかなる者をいうのかについて解説致します。

 

2 法律の規定

労基法9条は、同法の労働者を「職業の種類を問わず、事業又は事務所  (以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者」と定義してます。このように、労基法上の労働者にあたるか否かは、基本的には、事業に「使用」され、「賃金」を支払われる者であるか否かによって判断される規定となっています (9 条)。

 

また、ここでいう「使用」とは指揮監督を受けて働くことを意味し、「賃金」とは労働の対価として使用者が支払う報酬を指しています。

 

先に、裁判例を見ておきます。例えば、カメラマンであったAが映画撮影に従事中に、宿泊していた旅館で脳梗塞を発症してその後死亡したことについて、その死亡は業務に起因するものであるとして、労災申請がなされた事案がありました。この事案で、東京高裁(H14.7.11)は、撮影方法等については、いずれもB監督の指示の下で行われ、亡Aが撮影したフィルムの中からのカットの採否やフィルムの編集を最終的に決定するのもB監督であったことが認められ、これらを考慮すると、本件映画に関しての最終的な決定権限は B監督にあったというべきであり、亡AとC監督との間には指揮監督関係が認められるというべきであるという判決を下しました。

このように、「従業員」という括りでの契約でなくとも、実態としての指揮監督の程度・態様はさまざまであり、業務委託料という名目で支払われる報酬も実態としては定額給与のような場合もあります。

 

そこで、において、19851219日、厚生労働省の労働基準法研究会報告「労働基準法の『労働者』の判断基準について」において、これまでの学説、裁判例、解釈例規などを踏まえて、労基法上の労働者性について次のような判断基準を提示しました。

 

1 使用従属性に関する判断基準

(1)指揮監督下の労働

 ①仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由の有無、

 ②業務遂行上の指揮監督の有無、

 ③拘束性の有無、

 ④代替性の有無

(2)報酬の労務対償性

2 労働者性の判断を補強する要素

(1)事業者性の有無

 ①機械、器具の負担関係、

 ②報酬の額

(2)専属性の程度

(3)その他

 

この判断基準は、最高裁判決で示されたものではなく、判例でもありません。

 

しかし、従来の裁判例も踏まえて提示された基準であることから、実際上は、裁判実務においても、この基準を前提に主張立証が原告被告問わずなされていると言えます。

 

実際、先ほどの東京高裁の判決においても、監督の指示に従うべき事情を認定し、他にも、報酬が労務提供期間を基準にして算定して支払われていた実態や、個々の仕事についての諾否の自由が制約されていること、時間的・場所的拘束性が高いこと、労務提供の代替性がないこと等を総合して、当該カメラマンは、労基法9条にいう「労働者」に当たり、労災保険法の「労働者」に該当するというべきであるという判決が下されました。

 

3 使用者側の留意点

労働契約という名称を用いないことによって、残業代や労災リスクを減らそうと安易に考えることは禁物です。

 

身近な例でも、美容師やマッサージの施術者、配達員等多くの例において、実態として労働者性を認められても致し方ない例を目にすることが有ります。

 

くれぐれも、名称にとらわれることなく、実態に着目し、然るべき契約を締結いただければと思います。

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谷川安德

谷川安德

谷川安德 大阪府出身。立命館大学大学院法学研究科博士前期課程(民事法専攻)修了。契約審査、労務管理、各種取引の法的リスクの審査等予防法務としての企業法務を中心に業務を行う。分野としては、使用者側の労使案件や、ディベロッパー・工務店側の建築事件、下請取引、事業再生・M&A案件等を多く取り扱う。明確な理由をもって経営者の背中を押すアドバイスを行うことを心掛けるとともに、紛争解決にあたっては、感情的な面も含めた紛争の根源を共有すること、そこにたどり着く過程の努力を惜しまないことをモットーとする。

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