裁量労働制を採用する使用者の反論

 

裁量労働制とは、業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務として厚生労働省令及び厚生労働大臣告示によって定められた業務の中から、対象となる業務を労使で定め、労働者を実際にその業務に就かせた場合、労使であらかじめ定めた時間働いたものとみなす制度です。

昨今、割増賃金の支払いを免れるための目的で、裁量労働制とは名ばかりの会社がニュースに上がってくることもありますが、この裁量労働制は、対象業務によって、「専門業務型裁量労働制」と「企画業務型裁量労働制」の2種の制度が設けられているものの、対象業務の範囲等は限定的であることに留意しなければなりません。

残業代請求事件との関係では、予め定められた労働時間は、労働したものとみなされる時間数となりますので、予め定められた労働時間が法定労働時間の範囲内であれば、実際に働いた実労働時間は問われないということになります。

よって、使用者側の反論となるわけです。

 

専門業務型裁量労働制について

現在、「専門業務型裁量労働制」は、下記の19業務に限り、事業場の過半数労働組合又は過半数代表者との労使協定を締結することにより導入することができます。

 

① 新商品若しくは新技術の研究開発又は人文科学若しくは自然科学に関する研究の業務

② 情報処理システム(電子計算機を使用して行う情報処理を目的として複数の要素が組み合わされた体系であつてプログラムの設計の基本となるものをいう。⑦において同じ。)の分析又は設計の業務

③ 新聞若しくは出版の事業における記事の取材若しくは編集の業務又は放送法(昭和25年法律第132号)第2条第4号に規定する放送番組若しくは有線ラジオ放送業務の運用の規正に関する法律(昭和26年法律第135号)第2条に規定する有線ラジオ放送若しくは有線テレビジョン放送法(昭和47年法律第114号)第2条第1項に規定する有線テレビジョン放送の放送番組(以下「放送番組」と総称する。)の制作のための取材若しくは編集の業務

④ 衣服、室内装飾、工業製品、広告等の新たなデザインの考案の業務

⑤ 放送番組、映画等の制作の事業におけるプロデューサー又はディレクターの業務

⑥ 広告、宣伝等における商品等の内容、特長等に係る文章の案の考案の業務(いわゆるコピーライターの業務)

⑦ 事業運営において情報処理システムを活用するための問題点の把握又はそれを活用するための方法に関する考案若しくは助言の業務(いわゆるシステムコンサルタントの業務)

⑧ 建築物内における照明器具、家具等の配置に関する考案、表現又は助言の業務(いわゆるインテリアコーディネーターの業務)

⑨ ゲーム用ソフトウェアの創作の業務

⑩ 有価証券市場における相場等の動向又は有価証券の価値等の分析、評価又はこれに基づく投資に関する助言の業務(いわゆる証券アナリストの業務)

⑪ 金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務

⑫ 学校教育法(昭和22年法律第26号)に規定する大学における教授研究の業務(主として研究に従事するものに限る。)

⑬ 公認会計士の業務

⑭ 弁護士の業務

⑮ 建築士(一級建築士、二級建築士及び木造建築士)の業務

⑯ 不動産鑑定士の業務

⑰ 弁理士の業務

⑱ 税理士の業務

⑲ 中小企業診断士の業務

 

この制度を導入しようとする場合には、原則として次の事項を「労使協定」により定めた上で、所轄労働基準監督署長に届け出ることが必要です。

(1) 制度の対象とする業務

(2) 対象となる業務遂行の手段や方法、時間配分等に関し労働者に具体的な指示をしないこと

(3)  労働時間としてみなす時間

(4) 対象となる労働者の労働時間の状況に応じて実施する健康・福祉を確保するための措置の具体的内容

(5) 対象となる労働者からの苦情の処理のため実施する措置の具体的内容

(6)  協定の有効期間(3年以内とすることが望ましいとされています。)

(7)  (4)及び(5)に関し労働者ごとに講じた措置の記録を協定の有効期間及びその期間満了後3年間保存すること

 

(2)について、補足致しますが、裁量労働制であるからといって、使用者側が全く指示が出来ない等といったことはありません。基本的な業務内容、方針を指示したり、会議への出席を求めることも、それをしたからといって、必ずしも「具体的な指示をしないこと」という要件に反するわけではありません。

 

企画型裁量労働制について

「企画型裁量労働制」とは、事業運営上の重要な決定が行われる企業の本社などにおいて企画、立案、調査及び分析を行う労働者を対象とした裁量労働制を言います。

対象業務は、厳密には、労働基準法第38条の4第1項の規定により同項第1号の業務に従事する労働者の適正な労働条件の確保を図るための指針〔平成11年12月27日労働省告示第149号〕において、

①事業の運営に関する事項についての業務であること

②企画、立案、調査及び分析の業務であること

③当該業務の性質上これを適切に遂行するにはその遂行の方法を大幅に労働者

の裁量にゆだねる必要がある業務であること

④当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示を

しないこととする業務であること

とされており、指針においては、実際の例示で、対象業務となるもの、ならないものが示されています。

例えば、「経営企画を担当する部署における業務のうち、経営状態・経営環境等について調査及び分析を行い、経営に関する計画を策定する業務」は、対象業務となり得るものとされていますが、「経営に関する会議の庶務等の業務」は対象業務になり得ないものとされています。

 

この制度導入にあたっては、他にも労使委員会の設置など、導入の要件が差でめられています。

対象業務に該当するかどうかの分析も含めて、詳細な制度設計が必要ですので、くれぐれもご留意ください。

 

グロース法律事務所によくご相談をいただく内容

・就業規則は会社設立時に作成したが、その後全く変更も行っていないことから実情と合っておらず、見直したい。

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〇就業規則の新規作成

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就業規則を新規作成(又は新規作成と同視できる大幅改定)をいたします。

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就業規則に加え賃金規程を始めとした各種関係規定も新規作成いたします。

周知方法や今後の改訂方法などについてもアドバイスを行います。

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現存の就業規則及び関係規定について、内容の解説と要修正事項の解説を行います(修正案は含みません。)

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現存の就業規則及び関係規定について、修正案を提示し、就業規則の周知や改訂の方法についてもアドバイスを行います。

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谷川安德

谷川安德

谷川安德 大阪府出身。立命館大学大学院法学研究科博士前期課程(民事法専攻)修了。契約審査、労務管理、各種取引の法的リスクの審査等予防法務としての企業法務を中心に業務を行う。分野としては、使用者側の労使案件や、ディベロッパー・工務店側の建築事件、下請取引、事業再生・M&A案件等を多く取り扱う。明確な理由をもって経営者の背中を押すアドバイスを行うことを心掛けるとともに、紛争解決にあたっては、感情的な面も含めた紛争の根源を共有すること、そこにたどり着く過程の努力を惜しまないことをモットーとする。

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